![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64515412/rectangle_large_type_2_ef55dbba5f97b1c4d4d189bb676f8137.jpg?width=800)
SS『この世の支配者』
【お題:猫と歯車と宇宙のネックレス】
私の手の中には、猫と歯車と宇宙のネックレスがある。それが何であるか説明が必要だろう。だが先に君の覚悟を聞くべきなのだ。これが何であろうと、君は私の座を受け継ぐ覚悟はあるか?あると言うのなら、私の話を聞け。ないのならば、このまま私を殺して奪い取ればいい。
だけど、それをしたら……、まあそれは自分の目で確認してくれたらいい。
いいか、話を聞く気があるのなら私の前に座ってくれ。
よろしい。
このネックレスは正しく渡されたらある力を持ち主に授けるんだ。三つの円の中には、それぞれ猫、歯車、宇宙の模様が描かれている。この宇宙の模様は二十四時間変化していく。そして、その色と形は実際にこの全宇宙で起きている変化を表し、じっと見れば地球だけでなく他の星のことすら全手を見ることが出来る。
歯車は人間の思考の巡りを表している。これは実に便利で、自分の思考のどこが引っかかっているのかもわかる上に、他者の企みなどによって私に悪い影響が出る場合もここに現れてくれる。
そして、猫。猫は可愛いからほかに理由なんていらないだろう?
さて、このネックレスさえあれば王座にいることなんていとも簡単である。君は今、刀を持って私を殺しに来たね。そして、王になりたいんだろう。
さあ、してみなさい。話は聞いただろう、使い方もわかっただろう。
そのまま、手をかけるんだ。さあ早く。
立てない?そうだろう、この揺れを感じるか。暖かく、ぬるい気持ち、穏やかな感情に包まれ始めただろう。ごらん、このネックレスを。そう目を丸くするな、猫は気まぐれなんだよ、ここにずっとなんて居てくれないさ。そして、猫はボスには意外と従順なんだよ。ほら、ボスの危機には駆けつけてくれるのさ。心地いいもんだねぇ、この柔らかさは。
君、もちろん君がここに来ることなんて全部わかっていたんだよ。このネックレスには全てが現れる。この部屋の外には厳重に兵が取り囲んでる。でも、君はもう私を襲おうなんて思わないだろう。いいんだ、全部水に流す。君のような野心家は私に忠誠を誓って働いてくれればよりいいものとなるだろう。そういう気になってきただろう。
大丈夫。
少しここで寝ていけばいい、この響くような音と温もりとふわふわな毛。この世で一番幸せな時間を過ごしてくれ、君を包むことなんて容易な大きさになってくれている。
ああ、名前はロイさ。
君はこれからもこのロイの家臣として生きていっていいんだよ。私とともにね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?