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恥ずかしいだけのガチポエム

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素敵な写真とセンチなポエム。現実の厳しさに疲れた心を癒やされたいあなたに贈る、こつこつと積み上げていく世界。 心のどこかがほんのりとあたたかくなれば幸いです。 がんばって、だいた… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

晴れた空みたいなきみだから

晴れた空みたいなきみだから

遠く離れた場所にいるきみのことを考える。
同じ空を見てるとか、どうでもいい。
きみの心がこの空のように晴れていたらいいなと思うんだ。
それを確かめる術はない。きみに電話して、「今の気持ちはどうですか?」なんて、聞けないよ。
きみはきっと「元気です。あなたは?」と答えるだろう。きみはどんな時でも、そうやって明るく振る舞うから。
だから、きみの気持ちが本当に晴れていることを願います。

ハイセンスな彼女

ハイセンスな彼女

おしゃれ、洗練、ハイセンス。
ぼくにはとうてい縁のないキーワードだ。
「ここ、ハイセンスなのかな」
そう言ってきみは笑う。

ぼくたちは、スターバックスでコーヒーを飲んでいた。
「そうだと、思う」
ぼくはうつむきかげんで答える。きみは真っ赤な花柄のワンピースをきていて、まわりでマックのノートブックをかちゃかちゃやっている連中が時々ちらちら盗み見る。ぼくは他人の心はよめないけれど、あいつらが考えてい

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オフビートなきみへ

オフビートなきみへ

きみが描く漫画はいつも大げさで現実離れした物語だった。ハリウッド映画だってそこまでやらないよってくらい大げさなんだ。地球はいつも危機に見舞われていたし、主人公は常に大声を張り上げている。敵だって、運動会みたいに張り切っている。
「願望の反映なんだと思う」
きみの自己分析が外れていることを願う。きみが描いている漫画のような世界が現実になったら困るんだ。好きな漫画のことを話したり、素晴らしい芸術品を見

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きみのせいだよ

きみのせいだよ

明治神宮へ行こうと葵を誘ったら、あそこは結婚する場所よ、と言われた。
その言い方がとてもあっさりとしていて、逆に新鮮だった。
ぼくたちは高校2年生で、多くの高校生がそうであるように、結婚は視野に入っていなかった。すくなくとも、そういう話にはなっていなかった。
ぼくは葵との結婚生活を妄想していた。まだセックスもしていなかったというのに。
じゃあ、やめようかとぼくが言うと、葵は大声で笑った。
「そんな

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きみをまっていた

きみをまっていた

中学生の頃、きみとの待ち合わせ場所は、陸橋のたもとだった。自転車に乗ったきみが向こう側からやってくるのをいつも待っていた。
付き合っていたと言っていいのだろうか。ぼくはきみに好きだと伝えていなかった。もちろんキスだってしていない。だけど毎日のように陸橋のたもとで会っていた。この時間がいつまでも続けばいいと思っていた。きみはいつもいい匂いがした。髪の毛が揺れると、その匂いがふわっと広がった。ぼくはき

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バランスのもんだい

バランスのもんだい

まるでカップルだね、ときみが言った。
神社の社と、木のことだ。
なるほど、不思議なバランスが取れている。
きみはふざけてぼくに寄り掛かった。
ぼくは踏ん張ってきみを支える。きみが思いきり体重をかけてきて、ぼくはつんのめってしまった。だけど、きみが地面に倒れないように何とか支えた。
きみの体は華奢で、少し筋張っていた。ぼくは思いっきり抱きしめたくなった。
そんなことをしたら嫌われるかな。
躊躇してい

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微妙な距離が好きなんだ

微妙な距離が好きなんだ

校舎の屋上で、街を見渡す。
しょぼい街なんだ。いつかここを出ていく。お決まりの文句を言いたいところだけど、出ていくあてはなかった。かといってこの街で進学して就職をする自信もない。
どうするのか、自分では決められない。決めなきゃいけないんだけど、何も思い付かない。自分で決めた道は全部間違っている気がする。
クラスで派手な格好している女の子を思い出した。思い出したんじゃなくて、いつもその子のことを考え

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10月の初詣

10月の初詣

初詣に行こうと言われて、耳を疑った。
「だってまだ10月だよ」
それでもいいのだと言う。
10月の初詣は混雑しているわけもなく、すんなりと賽銭箱にたどり着いた。
5円玉をほうりこんで、手を合わせる。
神さまにおねがいごとをしながら、気持ちは隣にいる彼女を向いていた。シャンプーの匂い。柔らかい雰囲気。全身から醸しだす空気を味わっていた。
お参りを終えて、彼女に聞いた。
「なにをお願いしたの?」
彼女

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きみに叫ぶ

きみに叫ぶ

ふたりで空を見上げている時。とてもいい雲が流れていった。
ぼくはふいに叫びたくなった。
きみは、ぼくの気持ちに気づいているだろうか。それ以前に、急に叫んだら、ぼくを嫌いになるかもしれない。そう思ってぼくは心の中で叫んだ。
君が好きだ、今までも、これからもずっと。

幸せな日々

幸せな日々

妻と公園を散歩していた。
いびつな雲が浮いていて、ぼくたちはしばらくそれを見上げていた。
やがて妻が呟いた。
「無理してないと思っていても、知らないうちに体のバランスが崩れたりするんだ」
なんのことを言っているのか気になったけれど、そもそもぼくに言ったのかすらわからない。
そんな気持ちを感じとって、妻は話した。
「ときどき、ふと悲しくなるんだよ」
いびつな雲を見上げて、妻は目元を軽く拭った。
ぼく

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偶然きみに会いたくて

偶然きみに会いたくて

高台にある、しゃれたマンションにきみは住んでいた。ぼくは用もないのに坂の下にいって、川を眺めていた。偶然きみに会いたくて。
川を眺めるのは退屈だったし、同級生が自転車に乗って現れることもあった。
「なにやってるの?」
そう聞かれて、ぼくは困った。
「散歩だよ」
週に3日も散歩して、川を眺めている。自分でも、変なやつだと思う。
きみはいつも現れなかった。それでもぼくはどきどきしながらきみを待った。

わからずや

わからずや

「鉄塔ってかっこいいよね」
踏切待ちをしているとき、きみが言った。線路にかかっているのは、名前はわからないけれど、鉄塔じゃないと思う。
「そんなこと、知ってるよ。ニュアンスを汲んでよ」
つまり、目の前にあるあれも含めて鉄塔ってこと?
ぐちゃぐちゃ言うぼくを見て、きみはふっと笑って、
「ニュアンスを汲んでよ」
そう言って、軽くぼくの手に触れた。目の前を電車が駆け抜ける。

手もつなげない

手もつなげない

好きな子を映画に誘うときは、その子が観たい映画にすべきだと考えて、選んだ映画が、その子はあまり好きじゃなかったことがある。話題の映画だったけれど、あまり面白くなくて、映画が終わったあとで、喫茶店に誘うつもりだったんだが、映画の話で盛り上がりそうになく、かと言って、他の話題を振るのも白々しい。結果、ぼくらはどちらから切り出すわけでもなく、駅で別れた。手をつなぐこともできなかった、中学生の話。

イメージと違う

イメージと違う

きみは私を見ているけれど、本当は自分を見てるだけなんだ。

彼女はそう言って、そっぽを向いた。ぼくは、反論できなかった。彼女を好きだったけれど、自分の好きな彼女のイメージを押しつけてた。髪の毛の色、スカートの長さ。ぼくのイメージにあわないと、すぐにわかると彼女は言った。
「文句を言わなければいい、ってもんじゃないんだよ。ううん、無言で文句を言ってるんだよ。きみは」
これも反論できない。
ぼくは、彼

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