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10月の初詣

初詣に行こうと言われて、耳を疑った。
「だってまだ10月だよ」
それでもいいのだと言う。
10月の初詣は混雑しているわけもなく、すんなりと賽銭箱にたどり着いた。
5円玉をほうりこんで、手を合わせる。
神さまにおねがいごとをしながら、気持ちは隣にいる彼女を向いていた。シャンプーの匂い。柔らかい雰囲気。全身から醸しだす空気を味わっていた。
お参りを終えて、彼女に聞いた。
「なにをお願いしたの?」
彼女は笑って、「してないよ」と言った。
「隣にいるあなたのことを考えていた」
ぼくは、嬉しいと同時に、中途半端な気持ちで、お願いごとをした自分が恥ずかしかった。
ずっと彼女と一緒にいられますように。
バチが当たらなければ、いいんだけど。

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