記事一覧
「コイザドパサード未来へ」 第12話
穏やかな日々が続いている。
あと数週間で今年が終わるなんて嘘みたいだ。
誰かが以前、「1日は長く、1年は飛ぶように過ぎていく」と言ったが、本当にその通りだと思う。
日曜日に珍しく家族全員がうちにいる。
朝から雨が降っているので、誰ひとり外出する気はないらしい。
窓を打ちつける雨が激しくなってきた。
空気が乾燥していて、何日も雨が降らなかったので、これは恵みの雨だなと土砂降りの雨を横目に少しだけこ
「コイザドパサード未来へ」 第11話
学校へ向かういつもの朝
少しの寒さに我慢しながら、まだ冬コートを着ないで登校する。
隣を歩くアキラもマフラーこそ巻いているが、いまだに制服のままだ。
外套を纏った数人の中学生が前を歩いているが、僕はもう少しだけ、我慢をしようと思っている。コートは制服の上に身につけることができる、僕たちにとっては、いわば最上の重装備だ。今から着てしまうと、これからやって来る寒い冬を乗り越えられそうな気がするから。
「コイザドパサード未来へ」 第10話
あかりちゃんの家でおにぎりを作ることになり、ふたりでキッチンに立っている。
並んで一緒に料理をするのは何年ぶりだろう。
僕が小さい頃はよくあかりちゃんの家に預けられて、こうしてお手伝いをした。
あかりちゃんがおにぎりの具材を用意してくれたので、それぞれ自分の分を握ることになった。
梅、おかか、昆布。
あかりちゃんは小さめのおにぎりを握って、3種類の具材をそれぞれ入れている。僕はひとつの巨大お
「コイザドパサード未来へ」 第9話
久しぶりにあかりちゃんの家に遊びに来た。
父さんがあの世界から戻ってきてから初めての訪問なので、
話したいことがたくさんある。
「本当に兄さんが見つかって良かった。ミライに改めてお礼を言うね。
探しに行ってくれて、一緒に戻ってきてくれてありがとう」
あかりちゃんは今にも泣き出しそうな顔でお礼を言った。
僕は少し照れて、頷く。
父さんとあかりちゃんは小さい時から仲が良く、大人になってからも何
「コイザドパサード未来へ」 第8話
「行ってきます」と家を出て、いつものように朝、学校へ向かう。
冬服の制服の下に長袖Tシャツを着ているが、少し肌寒く、いつから冬コートを着始めようか迷う。
今のままの重ね着スタイルだと肌寒いし。
だからといってコートを着ると暑くなり、学校へ着く前に脱ぎたくなってしまいそうだ。
僕はブルっと震えながら、歩き出す。
足元の枯葉が踏まれてクシャっと音を出す。
まるで僕に踏まれて痛いよって声をあげたみたい
「コイザドパサード未来へ」 第7話
昨夜は眠れなかったので、かなり朝寝坊をしてしまった。
日が昇るまで眠りにつけなかったので、目覚めると時計は昼の12時をとうに過ぎていた。睡眠時間は十分ではないが、目が覚めてしまったので起きるしかない。
今日は日曜日なので、寝坊をしても何か支障があるわけではないが、母さんはすでに仕事に出かけている。
ぼさぼさの髪を手で直しながら、リビングへ行くと父さんがちょうどコーヒーを淹れていた。
コーヒーの香
「コイザドパサード未来へ」 第6話
アキラの告白の後、新学期が始まり、僕たちはいとも簡単に日常にのみ込まれた。
夏休みが終わると平日は学校の時間割で埋まり、非日常な夏休みの出来事のすべてが、今は遥か遠い昔のように感じる。
あれから父さんはこの現実世界に徐々に慣れて、笑顔が増えてきた。
秋が深まるにつれて、僕たち家族は穏やかな生活を取り戻している。
父さんのいた黄金に光り輝く草原の世界は一体、なんだったのだろう。
こんなふうに眠れな