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「コイザドパサード未来へ」 エピローグ

受験生という肩書きから解放された僕らは高校生になった。 高校生になったら、何か特別なことが起きるような気がしていたが、 拍子抜けするような、平凡な高校生活だ。 …

Aoi Akaso
2か月前
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「コイザドパサード未来へ」 第20話

桜が散る頃に、僕たちは中学3年生になった。 義務教育最終学年、受験生だ。 アキラにはもうすぐ弟が生まれる。 学校へ向かう途中、半歩先を行くアキラに聞いてみる。 「…

Aoi Akaso
3か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第19話

顔を上げて、ひとり満開の桜を眺める。 家の近くの桜並木は今まさに見頃のソメイヨシノが、 淡い光を放つように咲き誇っている。 薄ピンクのドレスを着ているみたいだ。 …

Aoi Akaso
3か月前
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「コイザドパサード未来へ」 第18話

横井さんを見送った後、宿に戻って温泉を満喫した。 アキラと一緒にお風呂に入るのは久しぶりで少々照れたけれど。 裸で一緒にお風呂に入るのは小学生以来だから。 互いに…

Aoi Akaso
4か月前
3

「コイザドパサード未来へ」 第17話

アキラに強く体を揺すられてハッとして目覚める。 目の前にはあの時と全く同じ形をした光り輝く扉がある。 隣に目配せをして、手をつないだ。 金色に縁取られた扉の輪郭は…

Aoi Akaso
4か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第16話

父さんを説得するのは、簡単ではなかった。 僕は自分が正しいことをしようと思ったし、父さんは横井さんの気持ちを考えた。あの時の自分の気持ちを思い出しながら、横井さ…

Aoi Akaso
4か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第15話

「いつになったら横井さんを救出するの?」 「急になに?あなたは誰?」 「未来から来たミライだよ」 「えっ?」 「まだいつかは分からないけど、やらなきゃって思ってるよ…

Aoi Akaso
5か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第14話

クリスマスがやって来た。 この時期になると師走特有の慌ただしさを感じるとともに、 街のあちこちでイルミネーションが灯り、クリスマスソングが流れ出す。 クリスマスは…

Aoi Akaso
5か月前
5

「コイザドパサード未来へ」 第13話

「アキラの分も焼く?」 「自分でやるからいいよ」 アキラと僕は、今まさに肉をそれぞれに挟み、食卓の鉄板で焼こうとしている。隣では父さんと母さんがビールを飲みながら…

Aoi Akaso
5か月前
3

「コイザドパサード未来へ」 第12話

穏やかな日々が続いている。 あと数週間で今年が終わるなんて嘘みたいだ。 誰かが以前、「1日は長く、1年は飛ぶように過ぎていく」と言ったが、本当にその通りだと思う。 …

Aoi Akaso
5か月前
5

「コイザドパサード未来へ」 第11話

学校へ向かういつもの朝 少しの寒さに我慢しながら、まだ冬コートを着ないで登校する。 隣を歩くアキラもマフラーこそ巻いているが、いまだに制服のままだ。 外套を纏った…

Aoi Akaso
6か月前
5

「コイザドパサード未来へ」 第10話

あかりちゃんの家でおにぎりを作ることになり、ふたりでキッチンに立っている。 並んで一緒に料理をするのは何年ぶりだろう。 僕が小さい頃はよくあかりちゃんの家に預け…

Aoi Akaso
6か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第9話

久しぶりにあかりちゃんの家に遊びに来た。 父さんがあの世界から戻ってきてから初めての訪問なので、 話したいことがたくさんある。 「本当に兄さんが見つかって良かった…

Aoi Akaso
6か月前
4

「コイザドパサード未来へ」 第8話

「行ってきます」と家を出て、いつものように朝、学校へ向かう。 冬服の制服の下に長袖Tシャツを着ているが、少し肌寒く、いつから冬コートを着始めようか迷う。 今のまま…

Aoi Akaso
6か月前
7

「コイザドパサード未来へ」 第7話

昨夜は眠れなかったので、かなり朝寝坊をしてしまった。 日が昇るまで眠りにつけなかったので、目覚めると時計は昼の12時をとうに過ぎていた。睡眠時間は十分ではないが、…

Aoi Akaso
6か月前
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「コイザドパサード未来へ」 第6話

アキラの告白の後、新学期が始まり、僕たちはいとも簡単に日常にのみ込まれた。 夏休みが終わると平日は学校の時間割で埋まり、非日常な夏休みの出来事のすべてが、今は遥…

Aoi Akaso
7か月前
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「コイザドパサード未来へ」 エピローグ

「コイザドパサード未来へ」 エピローグ

受験生という肩書きから解放された僕らは高校生になった。

高校生になったら、何か特別なことが起きるような気がしていたが、
拍子抜けするような、平凡な高校生活だ。

新しい学校、新しい友達。
最初は緊張していたが、慣れると案外、普通の生活で、
今は学校と家を行き来する毎日である。

ゴールデンウィークが明けたばかりというのに、お日様が夏のように射している。
いつの間にか、5月は春じゃなくて夏だなあ。

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「コイザドパサード未来へ」 第20話

「コイザドパサード未来へ」 第20話

桜が散る頃に、僕たちは中学3年生になった。
義務教育最終学年、受験生だ。

アキラにはもうすぐ弟が生まれる。

学校へ向かう途中、半歩先を行くアキラに聞いてみる。

「弟が生まれたら会いに行くの?」
「まだ決めてない。どうしたらいいか、分かんないよ」
「そうかあ」

アキラは言わなくても分かっているだろうけど。
自分の気持ちに従って、後悔のないようにね。
僕はアキラの背中に向かって、心の中でそっと

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「コイザドパサード未来へ」 第19話

「コイザドパサード未来へ」 第19話

顔を上げて、ひとり満開の桜を眺める。
家の近くの桜並木は今まさに見頃のソメイヨシノが、
淡い光を放つように咲き誇っている。
薄ピンクのドレスを着ているみたいだ。

綺麗だなあ。
美しい桜並木を見ていると思わず、泣いてしまいそうだ。
なんでだろう。少し感情的なのかな。

先ほどの家族会議のことが頭から離れない。
父さんと母さんがついに、夫婦の関係とこれからについて、話をしてくれた。
しっかり向き合っ

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「コイザドパサード未来へ」 第18話

「コイザドパサード未来へ」 第18話

横井さんを見送った後、宿に戻って温泉を満喫した。
アキラと一緒にお風呂に入るのは久しぶりで少々照れたけれど。
裸で一緒にお風呂に入るのは小学生以来だから。
互いに背中を流しあって、露天風呂に入った。
父さんもアキラも少し疲れた顔をしていて、口数は少ない。
温泉に入ったら、急に疲れが出てきたようで、眠くなってきた。
僕はフーッと安堵したような、眠気を吹き飛ばすようなため息をつき、
空を見上げる。

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「コイザドパサード未来へ」 第17話

「コイザドパサード未来へ」 第17話

アキラに強く体を揺すられてハッとして目覚める。
目の前にはあの時と全く同じ形をした光り輝く扉がある。
隣に目配せをして、手をつないだ。
金色に縁取られた扉の輪郭は点滅しており、扉を見つめながら、僕らはそっと心の中で念じた。
いざ、横井さんのところへ。

体が浮いて、ゆっくりと扉が開いた。
扉を通り抜けると、目の前には黄金に光り輝く草原が広がっていた。

隣のアキラは
「すっげえ」と言いながら、目の

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「コイザドパサード未来へ」 第16話

「コイザドパサード未来へ」 第16話

父さんを説得するのは、簡単ではなかった。

僕は自分が正しいことをしようと思ったし、父さんは横井さんの気持ちを考えた。あの時の自分の気持ちを思い出しながら、横井さんの家族のことを強く想って粘り強く会話を重ねた。
説得というより、この状況でどうすればいいのかをとことん話し合った。

立場が違えば、考え方も想いも当然違ったりする。
まして横井さんに会った事はないし、横井さんの状況や気持ちを組む事は難し

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「コイザドパサード未来へ」 第15話

「コイザドパサード未来へ」 第15話

「いつになったら横井さんを救出するの?」
「急になに?あなたは誰?」
「未来から来たミライだよ」
「えっ?」
「まだいつかは分からないけど、やらなきゃって思ってるよ」

夢の中で、僕は未来から来た自分に横井さんのことで詰め寄られている。
僕の日常は家と学校を往復する日々で、なかなか行動に移すことは難しい。
平凡な日常、単調な毎日。
朝、学校へ行って授業を受けて、夕方に帰宅する。
平日はこの繰り返し

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「コイザドパサード未来へ」 第14話

「コイザドパサード未来へ」 第14話

クリスマスがやって来た。

この時期になると師走特有の慌ただしさを感じるとともに、
街のあちこちでイルミネーションが灯り、クリスマスソングが流れ出す。
クリスマスはたくさんあるイベントの一つだし、特別な意味があるのか分からないけど今年は去年と違い、父さんがいるから特別といえば、特別だ。
最後のクリスマスは僕が小学3年生だったから、実に5年ぶりに家族で過ごすことができるクリスマスになる。

親にクリ

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「コイザドパサード未来へ」 第13話

「コイザドパサード未来へ」 第13話

「アキラの分も焼く?」
「自分でやるからいいよ」
アキラと僕は、今まさに肉をそれぞれに挟み、食卓の鉄板で焼こうとしている。隣では父さんと母さんがビールを飲みながら、笑顔でふたりのやりとりを見ている。

期末試験が終わったので、家で焼肉をしようということになり、アキラがうちに遊びに来ている。
小学生の時はお互いの家をよく行き来していたが、中学生になってからはその頻度が極端に減った。
食卓には母、父、

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「コイザドパサード未来へ」 第12話

「コイザドパサード未来へ」 第12話

穏やかな日々が続いている。
あと数週間で今年が終わるなんて嘘みたいだ。
誰かが以前、「1日は長く、1年は飛ぶように過ぎていく」と言ったが、本当にその通りだと思う。

日曜日に珍しく家族全員がうちにいる。
朝から雨が降っているので、誰ひとり外出する気はないらしい。
窓を打ちつける雨が激しくなってきた。
空気が乾燥していて、何日も雨が降らなかったので、これは恵みの雨だなと土砂降りの雨を横目に少しだけこ

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「コイザドパサード未来へ」 第11話

「コイザドパサード未来へ」 第11話

学校へ向かういつもの朝
少しの寒さに我慢しながら、まだ冬コートを着ないで登校する。

隣を歩くアキラもマフラーこそ巻いているが、いまだに制服のままだ。
外套を纏った数人の中学生が前を歩いているが、僕はもう少しだけ、我慢をしようと思っている。コートは制服の上に身につけることができる、僕たちにとっては、いわば最上の重装備だ。今から着てしまうと、これからやって来る寒い冬を乗り越えられそうな気がするから。

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「コイザドパサード未来へ」 第10話

「コイザドパサード未来へ」 第10話

あかりちゃんの家でおにぎりを作ることになり、ふたりでキッチンに立っている。

並んで一緒に料理をするのは何年ぶりだろう。
僕が小さい頃はよくあかりちゃんの家に預けられて、こうしてお手伝いをした。

あかりちゃんがおにぎりの具材を用意してくれたので、それぞれ自分の分を握ることになった。
梅、おかか、昆布。

あかりちゃんは小さめのおにぎりを握って、3種類の具材をそれぞれ入れている。僕はひとつの巨大お

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「コイザドパサード未来へ」 第9話

「コイザドパサード未来へ」 第9話

久しぶりにあかりちゃんの家に遊びに来た。
父さんがあの世界から戻ってきてから初めての訪問なので、
話したいことがたくさんある。

「本当に兄さんが見つかって良かった。ミライに改めてお礼を言うね。
 探しに行ってくれて、一緒に戻ってきてくれてありがとう」

あかりちゃんは今にも泣き出しそうな顔でお礼を言った。
僕は少し照れて、頷く。

父さんとあかりちゃんは小さい時から仲が良く、大人になってからも何

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「コイザドパサード未来へ」 第8話

「コイザドパサード未来へ」 第8話

「行ってきます」と家を出て、いつものように朝、学校へ向かう。
冬服の制服の下に長袖Tシャツを着ているが、少し肌寒く、いつから冬コートを着始めようか迷う。
今のままの重ね着スタイルだと肌寒いし。
だからといってコートを着ると暑くなり、学校へ着く前に脱ぎたくなってしまいそうだ。

僕はブルっと震えながら、歩き出す。
足元の枯葉が踏まれてクシャっと音を出す。
まるで僕に踏まれて痛いよって声をあげたみたい

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「コイザドパサード未来へ」 第7話

「コイザドパサード未来へ」 第7話

昨夜は眠れなかったので、かなり朝寝坊をしてしまった。
日が昇るまで眠りにつけなかったので、目覚めると時計は昼の12時をとうに過ぎていた。睡眠時間は十分ではないが、目が覚めてしまったので起きるしかない。

今日は日曜日なので、寝坊をしても何か支障があるわけではないが、母さんはすでに仕事に出かけている。
ぼさぼさの髪を手で直しながら、リビングへ行くと父さんがちょうどコーヒーを淹れていた。
コーヒーの香

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「コイザドパサード未来へ」 第6話

「コイザドパサード未来へ」 第6話

アキラの告白の後、新学期が始まり、僕たちはいとも簡単に日常にのみ込まれた。
夏休みが終わると平日は学校の時間割で埋まり、非日常な夏休みの出来事のすべてが、今は遥か遠い昔のように感じる。
あれから父さんはこの現実世界に徐々に慣れて、笑顔が増えてきた。
秋が深まるにつれて、僕たち家族は穏やかな生活を取り戻している。

父さんのいた黄金に光り輝く草原の世界は一体、なんだったのだろう。
こんなふうに眠れな

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