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運動神経が悪いということ

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日々の苦悩や雑感を自己紹介に代えて
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記事一覧

見かけと第一印象 運動神経が悪いということ Vol.40

見かけと第一印象 運動神経が悪いということ Vol.40

40年も生きて、ようやくわかってきたことがある。慣用表現にも、真実と偽りが入り混じっているらしい。後者の例は、「人は見かけによらない」だ。実際、人はたいてい見かけによるだろう。たまには見かけによらないこともあるから、あの言葉の意味するところは人のことを決めつけてはいけないという「戒め」であって、見かけによらない人が多いという「傾向」ではないということか。

対象的に、おおむね信じてよいと思っている

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勉強は役に立つ? 運動神経が悪いということ Vol.39

勉強は役に立つ? 運動神経が悪いということ Vol.39

「ぜんぜん勉強しよらへんねん、うちの子」入試の季節になると、受験生のお子さんを持つ同僚から嘆き節を聞くことがある。口下手ゆえ誤解を招きそうで発言は控えてきたが、内心、「大丈夫でしょ、勉強なんかせんでも」と思わないでもない。高校と大学、生涯で2度の受験を経験した。浪人時代をダブルカウントすれば3度だが、こなしてきた中途半端な勉強が、社会人になり、仕事のうえで何かの役に立った手応えはまるで無い。部活や

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15年後を想う 運動神経が悪いということ Vol.38

15年後を想う 運動神経が悪いということ Vol.38

あぁこのCM、あのシンディ・ローパーの歌が15年前か。最長でも満55歳の年を想定している退職まで、あと15年あまり。同じくらいの歳月を振り返り、どんな時代だったか思い出すため、私はよくYouTubeで過去のCM集を検索してみる。資生堂マキアージュのCMにシンディ・ローパーのリミックス曲が使用されていたのは、2009年の1月だったらしい。そうか、このCMが流れていたころとほぼ同じ時間が経過すれば、退

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重たい鞄 運動神経が悪いということ Vol.37

重たい鞄 運動神経が悪いということ Vol.37

昨年末の仕事納めの日は、重たい鞄で帰る羽目になった。仕事を積み残し、さばき切れなかった自覚があって、連休中に少しでも進めておこうと上司に断りを入れて職場のモバイルPCを持ち帰ることにしたのだ。いかに嫌いな仕事でも、連休中の心の余裕があれば案外、平素より捗るかもしれない。radikoでも聴きながら、のんびり取り組もう。そんな希望的な観測を抱いていた。

数えで42歳となる今年、私は本厄に当たるらしい

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あれから20年(下) 運動神経が悪いということ Vol.36

あれから20年(下) 運動神経が悪いということ Vol.36

生涯最初のスーツは、父と並んであつらえてもらった。定年退職を翌年に控え、私の1年遅れの大学進学に安心してくれたのか、自分のスーツも新調したくなったらしい。詰め襟の制服しか着たことがなかった私はネクタイも初めてで、父に結び方を教えてもらった。反対側からだと説明が難しい、そう言ってときに自らの胸元へネクタイを近づけながら微笑む表情は、いつになく柔和だった。

生真面目な教員だった父は、わが子より勤め先

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あれから20年(上) 運動神経が悪いということ Vol.35

あれから20年(上) 運動神経が悪いということ Vol.35

木の葉が色付いて、ショッピングモールにはクリスマスツリーが設営される季節になった。11月の声を聞くと、20年前に負った傷が疼き始める。「手術が必要だそうです」気落ちした父の留守電メッセージを聞いたのは、2003年の11月19日。健康診断の結果、甲状腺の異常が認められたのだった。入院は、12月22日。翌23日の見舞いが、よもや最期の時間になろうとは。人間は、ひと月もあれば死へ至るまでに心を病んでしま

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ジャニーズ性加害問題について 運動神経が悪いということ Vol.34

ジャニーズ性加害問題について 運動神経が悪いということ Vol.34

歳上の女性の同僚から、こんなことを言われた記憶がある。「あら、パンツ見えちゃった」高い所に手を伸ばし、シャツがズボンからはみ出た瞬間だった。その人はマイカー通勤していて、残業で二人きりになるたび「乗ってちょうだい」と繰り返し誘われた。暑がりの私は真冬でも汗ばむことがあり、「何で汗かいてるの?」と耳元で囁かれたときには、身の毛がよだつ心地だった。思い出すたび、一つの疑問が頭をもたげる。性別が逆なら、

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憧れるの、やめませんか 運動神経が悪いということ Vol.33

憧れるの、やめませんか 運動神経が悪いということ Vol.33

今夏の甲子園、兵庫県代表の社高校は残念ながら初戦で敗退した。郷土の代表校にせよ母国のナショナルチームにせよ、応援したチームが敗れたとき、勝利した相手側に向ける心理には大きく二通りあるように思う。「さっさと敗退すればいい」と悔しさを引きずるか、「わがチームのぶんも勝ち進んでほしい」と応援するほうに気持ちを切り替えるか。おそらく、後者には潜在的な目的があるのだろう。「この相手に負けたのなら仕方ない」と

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憎きメイウェザー 運動神経が悪いということ Vol.32

憎きメイウェザー 運動神経が悪いということ Vol.32

もっとも好きなアスリートを聞かれたとしたら、観戦限定のスポーツファンたる私には答えるのが難しい。対象的に、いちばん嫌いなアスリートなら即答できる。フロイド・メイウェザーだ。記録のうえでは無敗を維持し続けるボクシング界のビッグネームではあるが、第一線を離れて以降も潔く引退せず、およそ真っ当な試合をこなすことなく巨万のファイトマネーを稼ぐ「商法」を確立してみせた。

コナー・マクレガーに那須川天心に朝

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書くは易し 運動神経が悪いということ Vol.31

書くは易し 運動神経が悪いということ Vol.31

先日来、勤め先のミーティングで同僚同士の意見が交わされてきた。お題は、業務のスリム化ないしはスクラップ。次長の意向を汲んだ課長から示されたもので、年齢と立場が比例しないばかりに、いまだ雑多な下働きに追われている私からすれば、これぞ「渡りに船」。前段の意見募集の機会では待ってましたとばかり、もっと簡素化させたい、あわよくば畳んでしまいたい仕事への提言を列記してみた。しかしながら案の定、意識が高く意欲

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「まとも」かどうか 運動神経が悪いということ Vol.30

「まとも」かどうか 運動神経が悪いということ Vol.30

昨日、関西でも大雨警報が発表された。正午ごろには自治体からの避難指示のメールで各自のスマホが鳴動したが、社会人の端くれとしては、警報に関わらず勤務が基本。いつも遠路を運んでくれる電車が運休しないか注意しつつ午後からの仕事を段取りしていた昼休み、数名の同僚たちが早退を申し出た。共通項は、まだ小さいお子さんを抱えていること。自分も、同じように子どもがいれば帰らせてもらえるのだろうか。つい、不謹慎な考え

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折り返しの名古屋にて 運動神経が悪いということ Vol.29

折り返しの名古屋にて 運動神経が悪いということ Vol.29

青空のもと、眩しい緑の木々に囲まれた塔が屹立していた。名古屋から地下鉄東山線で20分あまり、16年ぶりに仰ぎ見た東山動植物園のスカイタワー。就職して初めての大型連休で訪れたとき、それは巨大な鉛筆のように見えたものだ。一泊旅行の二日目、社会人一年目の思い出をなぞってみることにした。

16年前も、初日は三河安城へお墓参りだった。前回が17回忌で、今回は33回忌。父方の祖母は、交差点を曲がる車にはねら

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四十路の幕開け 運動神経が悪いということ Vol.28

四十路の幕開け 運動神経が悪いということ Vol.28

曲げ伸ばしの際、鈍い痛みが走る。代謝を良くし、腹筋より効果があると聞いて朝晩の日課にしているバックランジというエクササイズだが、腹のシックスパックはいっこうに出来上がる兆しを見せないのに、膝を痛めたらしい。慢性的に凝り固まるようになった肩を回すのもすっかり癖になっていて、寄る年波というものを実感する。

今年の桜も、すでに葉桜だ。国民にもっとも愛でられてきた花が、自分の誕生日の頃に満開を迎えるのは

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仕事への手紙 運動神経が悪いということ Vol.27

仕事への手紙 運動神経が悪いということ Vol.27

拝啓 お仕事様

いつもお世話になっております。かれこれ16年もの間、私はあなたに苦労してきました。何年経ってみても、あなたに面すると私はひどく緊張してしまい、本音でものが言えなくなります。実のところわかっていないのに「わかりました」、まるでやる気もないのに「頑張ります」、そんな嘘つきを山ほど積み重ねています。あなたのおかげで、眠ることすらままならない日々を過ごした時期もあれば、ときに人格とか生き

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