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運動神経が悪いということ

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日々の苦悩や雑感を自己紹介に代えて
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記事一覧

複雑かつ不安定 運動神経が悪いということ Vol.47

複雑かつ不安定 運動神経が悪いということ Vol.47

75歳の母は、近ごろYouTubeをよく視聴するようになった。「テレビや新聞なんか、もう信用できへん」私が異動で忙しくなり、平日はアパート住まいを始めた今年、一人で過ごす時間が長くなったせいだろうか。罪悪感にも似た想いに苛まれる。

同志のご近所さんからは、自宅のすぐ近くを通りかかることを聞きつけたらしい。「握手してもろたよ〜」沿道に詰めかけた県民に応えようと車を止めたその候補者は、ひとりひとりと

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運動神経が悪いと仕事ができない理由 運動神経が悪いということ Vol.46

運動神経が悪いと仕事ができない理由 運動神経が悪いということ Vol.46

今日はスポーツの日。もともと10月10日に固定されてきたこの祝日の呼び名は、体育の日だった。今年から、国体こと国民体育大会も国民スポーツ大会に改称され、国スポなる略称を目にするようになった。数々のトラウマが相まって、体育という言葉に良い印象を抱いてこなかった人間としては喜ばしい反面、なかば諦めていることがある。体育会という言葉や概念、これが"スポーツ会"に改まる日は、たぶん来ないのではないか。

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あと10年以内に辞められたら 運動神経が悪いということ Vol.45

あと10年以内に辞められたら 運動神経が悪いということ Vol.45

今月は、年に一度の健康診断の時期。体重は1年前から7キロ近く減り、それに比例するように腹囲も7センチほど小さくなっていた。ただ、よく眠れるようになったし、食欲もすっかり回復したから、いずれ体型は戻るだろう。

滞らせた仕事を督促されたとき、自分のせいで同僚の顔色が険しくなったとき。一時の苦しみが和らぎ、落ち着きを取り戻したようでも、ちょっとした拍子に容易く落ち込んでしまう。

その昔、2匹の犬を「

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無欲は悪だとしても 運動神経が悪いということ Vol.44

無欲は悪だとしても 運動神経が悪いということ Vol.44

昨日も今朝も、雲一つない青空を拝めた。先週末から盛夏休暇に入り、丸1週間以上になる。この間、予定といえば初日の心療内科と昨日のお寺参りくらいだったが、遊ぶ気力も無い身には、ただ休めるだけでありがたい。異動によって数ヶ月間、かつてないほどの残業時間に苦労した今年は、喜びもひとしおだ。休暇入りの前日は日の入り前に帰宅できて、アパートから数日ぶりに戻ったわが家が助け舟のように見えた。

先日、新しい一万

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鈍く、冷たい世の中で 運動神経が悪いということ Vol.43

鈍く、冷たい世の中で 運動神経が悪いということ Vol.43

先月、毎朝の通勤で利用してきた駅で人身事故が起きた。ホームに入り切らず止まっている車両が見え、ただならぬ様子を察知したら、事故に遭ったのはいつも乗車する1本前の電車だった。「おじいさんが、線路に落ちてん」改札前のベンチに腰をかけた人が、誰かに電話で伝えていた。通話が終わったらすぐさま、「見たんや、目の前やで」と近くの人へ話しかけていた。あの人は、何をそんな得意気に喧伝したかったのだろうか。

「ふ

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職場で寝泊まりした夜 運動神経が悪いということ Vol.42

職場で寝泊まりした夜 運動神経が悪いということ Vol.42

腕を組んで、机の上にうつ伏せる。こんな姿勢で寝るなんて、学生時代の授業中以来だ。若かりし頃のようにそのままでは寝付けず、ロッカーからタオルマフラーを持ち出した。青地に、日の丸。一昨年の日本代表戦を現地観戦した思い出が、枕代わりになる日が来ようとは。

先週の後半、仕事で追い詰められた私は帰宅できず、職場の自席で一夜を明かす羽目になった。翌日の会議資料が、前夜になっても仕上がらない。時刻は23時を回

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「もう無理」と「子持ち様」 運動神経が悪いということ Vol.41

「もう無理」と「子持ち様」 運動神経が悪いということ Vol.41

代休をもらった今朝、5時過ぎに目が醒め、アラームを解除する。先月の残業時間は、50時間を超過した。ここ数年、年間でもそんなに残業していなかった身には、落差の大きな新生活だ。最初のひと月が、あっという間に過ぎたような気もすれば、ようやく経過したような気もする。

私が新年度から担当するようになったのは、未経験にして他部署を横断する仕事で、各所の担当者との連携が不可欠だ。毎日のように問い合わせや相談が

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見かけと第一印象 運動神経が悪いということ Vol.40

見かけと第一印象 運動神経が悪いということ Vol.40

40年も生きて、ようやくわかってきたことがある。慣用表現にも、真実と偽りが入り混じっているらしい。後者の例は、「人は見かけによらない」だ。実際、人はたいてい見かけによるだろう。たまには見かけによらないこともあるから、あの言葉の意味するところは人のことを決めつけてはいけないという「戒め」であって、見かけによらない人が多いという「傾向」ではないということか。

対象的に、おおむね信じてよいと思っている

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勉強は役に立つ? 運動神経が悪いということ Vol.39

勉強は役に立つ? 運動神経が悪いということ Vol.39

「ぜんぜん勉強しよらへんねん、うちの子」入試の季節になると、受験生のお子さんを持つ同僚から嘆き節を聞くことがある。口下手ゆえ誤解を招きそうで発言は控えてきたが、内心、「大丈夫でしょ、勉強なんかせんでも」と思わないでもない。高校と大学、生涯で2度の受験を経験した。浪人時代をダブルカウントすれば3度だが、こなしてきた中途半端な勉強が、社会人になり、仕事のうえで何かの役に立った手応えはまるで無い。部活や

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15年後を想う 運動神経が悪いということ Vol.38

15年後を想う 運動神経が悪いということ Vol.38

あぁこのCM、あのシンディ・ローパーの歌が15年前か。最長でも満55歳の年を想定している退職まで、あと15年あまり。同じくらいの歳月を振り返り、どんな時代だったか思い出すため、私はよくYouTubeで過去のCM集を検索してみる。資生堂マキアージュのCMにシンディ・ローパーのリミックス曲が使用されていたのは、2009年の1月だったらしい。そうか、このCMが流れていたころとほぼ同じ時間が経過すれば、退

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重たい鞄 運動神経が悪いということ Vol.37

重たい鞄 運動神経が悪いということ Vol.37

昨年末の仕事納めの日は、重たい鞄で帰る羽目になった。仕事を積み残し、さばき切れなかった自覚があって、連休中に少しでも進めておこうと上司に断りを入れて職場のモバイルPCを持ち帰ることにしたのだ。いかに嫌いな仕事でも、連休中の心の余裕があれば案外、平素より捗るかもしれない。radikoでも聴きながら、のんびり取り組もう。そんな希望的な観測を抱いていた。

数えで42歳となる今年、私は本厄に当たるらしい

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あれから20年(下) 運動神経が悪いということ Vol.36

あれから20年(下) 運動神経が悪いということ Vol.36

生涯最初のスーツは、父と並んであつらえてもらった。定年退職を翌年に控え、私の1年遅れの大学進学に安心してくれたのか、自分のスーツも新調したくなったらしい。詰め襟の制服しか着たことがなかった私はネクタイも初めてで、父に結び方を教えてもらった。反対側からだと説明が難しい、そう言ってときに自らの胸元へネクタイを近づけながら微笑む表情は、いつになく柔和だった。

生真面目な教員だった父は、わが子より勤め先

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あれから20年(上) 運動神経が悪いということ Vol.35

あれから20年(上) 運動神経が悪いということ Vol.35

木の葉が色付いて、ショッピングモールにはクリスマスツリーが設営される季節になった。11月の声を聞くと、20年前に負った傷が疼き始める。「手術が必要だそうです」気落ちした父の留守電メッセージを聞いたのは、2003年の11月19日。健康診断の結果、甲状腺の異常が認められたのだった。入院は、12月22日。翌23日の見舞いが、よもや最期の時間になろうとは。人間は、ひと月もあれば死へ至るまでに心を病んでしま

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ジャニーズ性加害問題について 運動神経が悪いということ Vol.34

ジャニーズ性加害問題について 運動神経が悪いということ Vol.34

歳上の女性の同僚から、こんなことを言われた記憶がある。「あら、パンツ見えちゃった」高い所に手を伸ばし、シャツがズボンからはみ出た瞬間だった。その人はマイカー通勤していて、残業で二人きりになるたび「乗ってちょうだい」と繰り返し誘われた。暑がりの私は真冬でも汗ばむことがあり、「何で汗かいてるの?」と耳元で囁かれたときには、身の毛がよだつ心地だった。思い出すたび、一つの疑問が頭をもたげる。性別が逆なら、

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