マガジンのカバー画像

この本いいよ!

258
これまで私がnoteに投稿した読書感想記事をまとめたマガジンです。本選びの参考になればいいなと思います。
運営しているクリエイター

#感動

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

いぬじゅんさんの『君の青が、海にとけるまで』(角川文庫)という作品を読みました。

主に高校生たちの恋を描いたお話が多かったいぬじゅんさんの作品ですが、今作は社会人が主人公の居場所をテーマにした物語となっていて、これまでの作品とはひと味違う優しさを感じる内容でした。

念願の看護師になったものの、職場でのトラブルで心が病み、休職することになった胡麦。物語は休職中に胡麦がSESTAというカフェに訪れ

もっとみる
熟成読書感想文:電話交感

熟成読書感想文:電話交感

こがらし輪音さん『電話交感』(角川文庫)
2024年1月某日読了

こがらし輪音さんの作品はデビュー作から大体読んでいますが、作品を重ねるにつれて物語のクオリティに磨きがかかっているような感じがします。個人的に今作は現時点での最高傑作じゃないかと思っています。

まず、今作は現代の日常に怒りを抱える主人公・紗菜が、亡き祖母(タヱ)との不思議な電話でのやりとりを通して、今を生きるために大切なことを学

もっとみる
「読んだ人しか出会えない感動」がある小説を読みました。

「読んだ人しか出会えない感動」がある小説を読みました。

fudarakuさんの『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』という小説を読みました!

今作は毎年2月頃からのお楽しみ、電撃小説大賞の受賞作のひとつです。表紙からして私があまり読まなそうなタイプの本ですが、「最大の問題作」「物語は、三度、進化する。」といったキャッチコピーが個性的な作品が多い電撃大賞らしくて興味をそそり、発売後早速読んでみました。

ストーリー感想ここからは感想としておすすめしたい

もっとみる
アート×旅小説『ユリイカの宝箱』がめちゃくちゃ面白い

アート×旅小説『ユリイカの宝箱』がめちゃくちゃ面白い

一色さゆりさんの『ユリイカの宝箱』という作品を読みました!個人的に関心の強いアートと旅をテーマにした作品とのことで、あらすじの時点で絶対に面白いだろうな〜と予感しました。

今作は職を失った主人公・優彩が、どうやら幼少期に面識があるらしい桐子という女性に導かれ、各地の美術館を巡る「アート旅」の魅力に出会うストーリーとなっていました。アートに特化した旅行会社で働く桐子に、優彩は次第に興味を持ちだして

もっとみる
サイレント・ヴォイス(NetGalleyより)

サイレント・ヴォイス(NetGalleyより)

松田詩依さん『サイレント・ヴォイス 想いのこして跡をたどる』という作品を読みました。こちらの作品は発売前の本のゲラが読めるサイト「NetGalley」にて読んだものとなります。

ことのは文庫より来月刊行される作品で、生と死をテーマにした物語が個人的に好きというのと、「遺品整理」というキーワードに惹かれて、この作品を読んでみようと思いました。

今作では残留思念を活かし、遺品整理士として依頼者に故

もっとみる
個人的な「続編」に対する考え方が変わった1冊

個人的な「続編」に対する考え方が変わった1冊

凪良ゆうさんの最新作『星を編む』を読みました!

今回の作品は、前作『汝、星のごとく』の続編という立ち位置となります。というのもあり、この感想には若干前作のエンディングに触れている箇所があります。名脇役の過去を描いたエピソードや、その後の暁海たちの生活を追った後日談が3話収録されていました。

(前作の感想はこちら)

まず私は、感動的にまとまっている作品の続編というものがそれほど好きではないので

もっとみる
本好きが感動する短編集を読みました。

本好きが感動する短編集を読みました。

村山早紀さんの『桜風堂夢ものがたり』を読みました。本屋のリアルとちょっとした奇跡を描いた『桜風堂ものがたり』シリーズの3作目で、今回は本編の既刊2冊とは異なる雰囲気の短編で構成された巻となっていました。

現実的な要素が濃い本編に比べると今作は故人と再会したり、宇宙人が出てきたりと、ファンタジー色強めなエピソードが多く、本来の村山さんらしさを感じられる内容でこれはこれで良きでした。

とはいえ、本

もっとみる
最近読んで印象に残った小説まとめ!

最近読んで印象に残った小説まとめ!

しばらく小説の感想がお休み気味だったので、今回はここ最近読んで「いいな」と思った小説を一挙まとめて紹介します!

花火みたいな恋だった

(著者:小桜菜々さん)

今作は短編集となっていて、高校生から社会人まで複雑な恋に悩む女性たちの成長が描かれていました。青春小説らしいピュアな恋もあれば、ドロドロしたちょっと大人めの恋もあり、それぞれのエピソードが刺激的でした。

付き合って初めて気付いた「運命

もっとみる
「透きとおる」小説を読んでみたよ

「透きとおる」小説を読んでみたよ

新潮文庫nexから斬新で面白そうなミステリー小説が出たらしい。その作品とは、杉井光さんの『世界でいちばん透きとおった物語』。あらすじからすると一見よくあるミステリー小説っぽいが…?

実はこの小説には「紙の本」でしか楽しめないある仕掛けがあるそう。なぜ電子版の販売をなしにするほど今作は紙の本にこだわるのか。そして「透きとおる」とは一体何を意味しているのか。それらをぜひ自分の目で確かめたくて読んでみ

もっとみる
「ナツイチ」から気になった本を読んでみる!

「ナツイチ」から気になった本を読んでみる!

本好きの夏の楽しみといえば、大手出版社による夏の文庫フェアではないでしょうか?集英社文庫(ナツイチ)とKADOKAWA(カドブン夏推し)のフェアが6月中旬より始まったので、早速本屋へ行ってラインナップをチェックしてきました。

各社1冊ずつラインナップから気になった本を購入してみたのですが、今回はナツイチより三田誠広さんの『いちご同盟』を読んだのでその感想です。青春小説が好きなのもありますが、何よ

もっとみる
「涙」のメリットを感じる物語(森田碧:『余命0日の僕が、死と隣り合わせの君と出会った話』)

「涙」のメリットを感じる物語(森田碧:『余命0日の僕が、死と隣り合わせの君と出会った話』)

今回紹介する本は、森田碧さんの『余命0日の僕が、死と隣り合わせの君と出会った話』(ポプラ文庫ピュアフル)です。今作は「よめぼく」シリーズの4作目になる作品となります。姉妹作が増えると、森田さんの作品世界も広がっていくみたいで楽しいです。

今作は「よめぼく」シリーズらしい王道な要素に加えて、人々が創作物に触れて涙を流す理由や泣くメリットといった興味深い話題も含まれていました。個人的にはシリーズでも

もっとみる
今を生きる私たちへ大切なメッセージがこの本にはある。(汐見夏衛:『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』)

今を生きる私たちへ大切なメッセージがこの本にはある。(汐見夏衛:『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』)

今回は私が好きな作家さんの最近読んだ新しい本を紹介します。
今回紹介するのは、汐見夏衛さんの『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』という作品です。noteで汐見さんの本を紹介するのは9冊目となります。(アンソロジー『卒業』も含めれば10冊)
最近はアンソロジー収録の短編作品が多かったので、汐見さんの長編作品を読むのはとても久しぶりな感じがします。

誰からも愛される男子生徒・鈴白く

もっとみる
暗闇の中に希望を感じる話が好き(町田そのこ:『52ヘルツのクジラたち』)

暗闇の中に希望を感じる話が好き(町田そのこ:『52ヘルツのクジラたち』)

町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』を読みました。
数年前に本屋大賞を受賞した作品というのもあり、いつか読んでみたいと思っていました。

今作は主人公の貴瑚(通称:キナコ)が、親から「ムシ」と呼ばれ、虐待を受けている少年を助けたところから物語が動き出します。

傷ついた少年の姿と自分の過去が重なって見えたキナコは、大半には聴こえないけど、いつか出会う仲間に届くように祈っている「52ヘルツのク

もっとみる
悲しいだけじゃない生と死の物語(塩瀬まき:『さよなら、誰にも愛されなかった者たちへ』)

悲しいだけじゃない生と死の物語(塩瀬まき:『さよなら、誰にも愛されなかった者たちへ』)

とても心に沁みる物語に出会えたので紹介します!
塩瀬まきさんの『さよなら、誰にも愛されなかった者たちへ』(メディアワークス文庫)という作品です。

今作は生と死の世界をつなぐ「賽の河原株式会社」で働くことになった至が、様々な事情を抱えた死者たちと出会い、彼らとの別れを経験して成長していく物語が描かれました。

ファンタジーのような世界観ではありながらも、賽の河原株式会社のお客様ともいえる死者たちと

もっとみる