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個人的な「続編」に対する考え方が変わった1冊

凪良ゆうさんの最新作『星を編む』を読みました!

今回の作品は、前作『汝、星のごとく』の続編という立ち位置となります。というのもあり、この感想には若干前作のエンディングに触れている箇所があります。名脇役の過去を描いたエピソードや、その後の暁海たちの生活を追った後日談が3話収録されていました。

(前作の感想はこちら)

まず私は、感動的にまとまっている作品の続編というものがそれほど好きではないのですが、今作を読んだらその考えが覆されました。

「確かに暁海さんと櫂さんは大恋愛だったんでしょう。彼を失って、物語ならそこで終わって永遠になるんでしょう。でも暁海さんの人生はそのあとも続くんです。彼のいない世界を毎日、毎日、これからもずっと生きていかなくれはいけません。どれだけ時間を止めたくても、嫌でも進まざるを得ない。そして生きている限り人は変わり続けます

『星を編む』p203-204より

『波を渡る』でのこの言葉を読んだ時、今作は単に『汝、星のごとく』という「物語の続き」なのではなく、暁海という人物の、あるいは彼女を支える家族を追いかけた人生の記録であると気付かされました。

「切なさが残るラストでしたが、暁海はこれからも櫂との思い出を胸に、自分が決めた道を歩んでいくのだろうなと思いました。」と私は前作の感想で書きましたが、『波を渡る』はまさにそういったお話でした。

櫂を失ってからも生きづらさへの課題は残るものの、それでもパートナーの北原先生や子どもたちと共に自分らしい幸せを描こうとする暁海の姿には今作でも心打たれました。暁海と北原先生の夫婦の形に「恋」は存在していないけど、温かな「愛」は確かに存在していることを感じる今作全体のエンディングも印象深かったです。

また表題作に関しては、創作者に対する編集者のリスペクトを感じる内容でした。櫂と尚人くんが描いた物語が時を越えてヒットする様子からは、本当に良い作品・創作者はいつの時代も人々の心を掴むのだと実感しました。このシリーズを含む凪良ゆうさんの本も、きっとそのような存在になると思います。それと同時にこの短編は、今まで作品を読んでくれた人、広めてくれた人に向けた著者なりのお礼でもあると私は感じ取れました。

北原先生が主人公のエピソード『春に翔ぶ』に関しては、教師という職を捨ててまで教え子とその子どもを守る彼の選択に心揺さぶられ、今回の収録作では特に凪良ゆうさんらしい内容だったかなと思いました。とはいえ、前作を読んだ時は暁海と櫂の物語に注目していたため、北原先生の周囲の話は申し訳ないことにうろ覚えな箇所もあったので、本編を再読してから改めて読みたい短編でした。

最後に今作のキーワードは「つながり」だったと思います。暁海が海辺の町で自分らしく生活できるのも、櫂の作品が彼が亡き後も愛されているのも、いろんな人がつなげてくれた縁があってからこそだと、物語全体を通して感じさせてくれました。

読む前は正直蛇足のような内容だったら嫌だなと思っていたのですが、物語というよりはむしろドキュメンタリー映画を見ているような感覚の内容で、今まで私の中にあった「続編」に対するイメージがグッと変わった1冊でした。今作を読み終えたことで、『汝、星のごとく』という作品が本当の完成を迎えたような感じがします。

凪良ゆうさんの作品は読むと本当に見ている世界が変わります。

今回の本

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