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この本いいよ!

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これまで私がnoteに投稿した読書感想記事をまとめたマガジンです。本選びの参考になればいいなと思います。
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#読書

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

いぬじゅんさんの『君の青が、海にとけるまで』(角川文庫)という作品を読みました。

主に高校生たちの恋を描いたお話が多かったいぬじゅんさんの作品ですが、今作は社会人が主人公の居場所をテーマにした物語となっていて、これまでの作品とはひと味違う優しさを感じる内容でした。

念願の看護師になったものの、職場でのトラブルで心が病み、休職することになった胡麦。物語は休職中に胡麦がSESTAというカフェに訪れ

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ことのは文庫5月の新刊2点の話!(ちょっとお知らせ的な)

ことのは文庫5月の新刊2点の話!(ちょっとお知らせ的な)

ライト文芸レーベル・ことのは文庫の5月新刊2点の帯に私がネットギャリーで先読みした際のレビューが採用されています。

まず1冊目は、鞠目さんの『下の階にはツキノワグマが住んでいる』という作品です。

人間と動物が共存する少しファンタジーの入った新感覚な日常のお話でした。小説ではなかなかに珍しいタイプのお話だと思います。

人間の女性・ゆり子さんと人の言葉を話すツキノワグマさんとのほのぼのした会話が

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最近のおすすめ本:猫のお告げは樹の下で

最近のおすすめ本:猫のお告げは樹の下で

青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』を読みました。

今作は神社の不思議な猫・ミクジのお告げに導かれ、老若男女が日々をちょっぴり変えていく様子が描かれました。

「ニシムキ」「チケット」などミクジのお告げは一見すると意味深ですが、葉っぱに刻まれていた言葉をヒントに行動し、意外なところから、あるいは知らず知らずのうちに悩みを乗り越えていく数々のエピソードに心打たれました。

中でも私は、「スペー

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好きな作家さんの最高に心動かされる本を読みました

好きな作家さんの最高に心動かされる本を読みました

阿部暁子さんの『カラフル』という小説を読みました。

私は阿部暁子さんの本が高校生の頃から大好きです。魅力的で嫌いになれないキャラクターたちや丁寧な感情描写、作中でちらりと見せるユーモアも好きなところですが、中でも「いいな」と思うのが、自分と同年代の主人公が世の中の理不尽さに立ち向かう物語が多いところです。とても現実的で、読み終えると私も登場人物たちのように頑張ろう!と思わせてくれます。

今作は

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熟成読書感想文:電話交感

熟成読書感想文:電話交感

こがらし輪音さん『電話交感』(角川文庫)
2024年1月某日読了

こがらし輪音さんの作品はデビュー作から大体読んでいますが、作品を重ねるにつれて物語のクオリティに磨きがかかっているような感じがします。個人的に今作は現時点での最高傑作じゃないかと思っています。

まず、今作は現代の日常に怒りを抱える主人公・紗菜が、亡き祖母(タヱ)との不思議な電話でのやりとりを通して、今を生きるために大切なことを学

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水瀬さらさんの青春小説が好きです

水瀬さらさんの青春小説が好きです

最近、水瀬さらさんという作家さんの青春小説が好きでよく読んでいます。

王道でわかりやすいストーリーが多く安心して楽しめるだけでなく、高校生を中心とした登場人物の温かな性格に惹かれるところも作品の大きな魅力だと思います。

今回は私が読んだ水瀬さらさんの本でも特に好きだった3冊を紹介します。

君が、僕に教えてくれたこと

無気力な少年と幽霊少女の交流を描いたハートフルストーリー。私が水瀬さらさん

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『ひとり旅日和』の4巻だよ

『ひとり旅日和』の4巻だよ

秋川滝美さんの『ひとり旅日和』シリーズの4作目「福招き!」を読みました。前巻を読んでから結構間隔が空いてしまいました(^^;;でも相変わらずの面白さ!

自他共に「人見知り女王」を認める主人公・日和が全国各地をひとり旅し、旅先での出会いや発見を通して成長する様子が描かれるこのシリーズ。日和が旅先で見た景色や食べた料理をそそるように説明する作風は、もはや小説の形をしたガイドブックです。

前作は制限

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カナシミ水族館(NetGalley より)

カナシミ水族館(NetGalley より)

夕瀬ひすいさんの『カナシミ水族館』という作品をNetGalleyにて読みました。ことのは文庫より来月刊行予定の作品です。

物語は身近な人間関係に悩みを抱えている主人公・律が、「カナシミ水族館」という不思議な空間に誘われるところから始まります。カナシミ水族館には年齢もバラバラで個性的な4人のスタッフがいて、律は彼らから「悲しみ」と向き合うために大切なことを学びます。

律も苦しんでいる人付き合いの

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「読んだ人しか出会えない感動」がある小説を読みました。

「読んだ人しか出会えない感動」がある小説を読みました。

fudarakuさんの『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』という小説を読みました!

今作は毎年2月頃からのお楽しみ、電撃小説大賞の受賞作のひとつです。表紙からして私があまり読まなそうなタイプの本ですが、「最大の問題作」「物語は、三度、進化する。」といったキャッチコピーが個性的な作品が多い電撃大賞らしくて興味をそそり、発売後早速読んでみました。

ストーリー感想ここからは感想としておすすめしたい

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カワイソウ、って言ってあげよっかw(NetGalleyより)

カワイソウ、って言ってあげよっかw(NetGalleyより)

夏原エヰジさん『カワイソウ、って言ってあげよっかw』という小説を読みました。この作品は、発売前の本などのゲラが読めるサイト「NetGalley」にて読んだものとなります。講談社から単行本が11日に発売とのことです。

ここ近年、生きづらさをテーマにした小説にかなり関心があるので、性格の悪そうなタイトルと合わせてどのような物語が展開されるのか、めちゃくちゃ気になりました。

外国の文化への憧れ、働く

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コレクターズ・ハイ(NetGalleyより)

コレクターズ・ハイ(NetGalleyより)

村雲菜月さんの『コレクターズ・ハイ』という小説を読みました。この作品は、発売前の本などのゲラが読めるサイト「NetGalley」にて読んだものとなります。講談社から単行本が今月末に発売予定とのこと。

あらすじを見てキャラクターグッズを集めるのが趣味の登場人物がいるそうだったので、雑貨などを集めるのが好きな私との共通点もありそうな作品だなと思って読んでみました。

まず、今作には何かしらの「好き」

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ひたすら楽しい読書体験に出会えた『ノウイットオール』と著者にありがとう

ひたすら楽しい読書体験に出会えた『ノウイットオール』と著者にありがとう

異色すぎる連作短編!?として凄く気になっていた森バジルさんの『ノウイットオール』を読みました!

まず今作は、下記の5つの物語で構成されていました。(カッコ内は各作品のジャンル)

収録作それぞれのジャンルが異なるので、一見関係性のない話のように思えますが、実はすべての作品の世界観が共通しており、読めば読むほどサプライズが待ち受けるとても楽しい小説でした。「本を読んでひたすら楽しい時間を過ごしたい

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アート×旅小説『ユリイカの宝箱』がめちゃくちゃ面白い

アート×旅小説『ユリイカの宝箱』がめちゃくちゃ面白い

一色さゆりさんの『ユリイカの宝箱』という作品を読みました!個人的に関心の強いアートと旅をテーマにした作品とのことで、あらすじの時点で絶対に面白いだろうな〜と予感しました。

今作は職を失った主人公・優彩が、どうやら幼少期に面識があるらしい桐子という女性に導かれ、各地の美術館を巡る「アート旅」の魅力に出会うストーリーとなっていました。アートに特化した旅行会社で働く桐子に、優彩は次第に興味を持ちだして

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サイレント・ヴォイス(NetGalleyより)

サイレント・ヴォイス(NetGalleyより)

松田詩依さん『サイレント・ヴォイス 想いのこして跡をたどる』という作品を読みました。こちらの作品は発売前の本のゲラが読めるサイト「NetGalley」にて読んだものとなります。

ことのは文庫より来月刊行される作品で、生と死をテーマにした物語が個人的に好きというのと、「遺品整理」というキーワードに惹かれて、この作品を読んでみようと思いました。

今作では残留思念を活かし、遺品整理士として依頼者に故

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