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君がいたから、壊れた世界が輝いた(青春小説感想文)

小桜菜々さんの「君がいたから、壊れた世界が輝いた」という青春小説を読みました。この本は図書館で借りて読んだのですが、想像以上に心に響く物語で、私にとって素直に「読んでよかったな」と思えた1冊でした。

主人公の高校生たちだけでなく、彼女たちの周りにいる大人たちもすごく魅力的に描かれているので、主人公と同世代に限らず、幅広い読者に愛されてほしいと願っている1冊です。

どんなお話?

ありのままでいいなんて綺麗事だ。だって自分が変わらなきゃ何も変えられない。学校で親友を刺そうとする事件を起こした高2の茉優。自宅にも居場所がなく、叔母の亜実の家に居候することになった。そんなある日、亜実の行きつけの喫茶店に行くと、〝あの日〟茉優が怪我を負わせてしまった朔がいた。無口で近寄りがたい印象だったのに、責めるどころかどんな時も味方でいてくれる彼に、茉優の心は解きほぐされていく。そして、彼もまた心に深い傷を持っていた。〝あの日〟なぜ茉優は親友を刺そうとしたのか──。見えない傷を抱えた人へ。ラストに明かされる秘密に心が震える感動物語。

版元サイトより

感想

「俺らが思っているより、世界はちょっとだけ優しいよ」

p211

まず上記の言葉は、ヒーロー枠にあたる朔の今作の象徴ともいえる台詞です。この朔の言葉によって、「生きづらい」と勝手に思い込んでいた世の中を生きる勇気がぐっともらえました。

人間関係のトラブルが原因で同級生を傷つけた女子高校生のお話ということで、ピュアな作品が多いスターツの本にしてはなかなかに刺激のある内容でしたが、逆にそういった危うさに青春のリアルを感じさせられました。シンプルな言葉で「高校生」という狭い世界の危うさを描いていたからこそ、共感も感動もあった物語だと思います。

茉優は朔や親戚の亜実ちゃん、そして母の温かな言葉にだんだん救われていき、最終的には自分の将来を考えた行動をしたり、傷つけてしまった友達ともう一度向き合おうと決意したりと、彼女の大きな変化が見られて良かったです。

また、茉優と朔、双方の視点から「普通とは何か」について考えるところも印象に残りました。私も茉優と同じように、他者の偏見によって傷つくこともあれば、逆に自分の偏見で誰かを傷つけてしまっているのかもしれない、と今作を読んで痛感しました。

だからこそ身近な「こうあるべき」を取り除くために、今以上に視野を広げたり、自分が苦手としている柔軟な考えを伸ばしてみたりを心がけていきたい、と思った1冊でした。

今回の本


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