深夜0時の司書見習い2(読書感想文)
近江泉美さん「深夜0時の司書見習い」の2巻を読みました!児童文学のような世界観と、思わず共感してしまう本の話題に魅了され、続編をずっと待ち望んでいました。前作の良さを残しつつ、読書に対する新たな気付きの要素もプラスされていて、1巻に劣らない面白さでした。
どんなシリーズ?
物語の舞台は、図書館の本を読んだ人の想像力が反映される「図書迷宮」。図書迷宮には古今東西の本の登場人物やその著者が存在しており、主人公のアンは彼らの願いを叶えたり、時には図書迷宮全体の危機を救ったりと大奮闘します。
本がカギを握る物語というのもあり、読書の面白さを実感できるのもシリーズの大きな特徴です。アンが様々な名作を通して本の良さを知る姿は、初めて読書に夢中になったあの頃を思い出すこと間違いなし。有名な作品をベースにしたエピソードばかりで、名作の意外な楽しみ方に出会えるところもポイントです。
1巻に関しては以前私が書いたnote記事もあるので、併せて読むとシリーズの良さがよりわかると思います!
2巻のあらすじ
感想
図書迷宮での試練を乗り超え、たくましく成長したアンの更なる活躍が楽しめました。アンを見守るセージさんやもみじくん、猫のワガハイも元気そうで、彼らに再会できたのも嬉しかったです。
今回登場する物語は、太宰治の「走れメロス」と、シンデレラをはじめとする数々の童話。多くの人が内容を知っている物語ばかりですが、有名だからこそ知られていない逸話も多く描かれ、それぞれの書かれた背景を把握することで、初めて見えてくる物語の魅力と出会えました。
今作のメインイベントはアンと家族とのつながりに直結する2、3話の童話のエピソードですが、私は1話目の「走れメロス」のエピソードを推します。図書迷宮に現れたメロスは、近年SNSなどで「実はメロスは走ってない」など、新しい解釈で読まれてしまうことに複雑な気持ちでいました。
メロスの悩みを解決したいアンは、著者の太宰治のことや元ネタになった古典文学について、図書迷宮の仲間と協力しながら調べていきます。作品への見聞を深めるうちにアンが気付いたのは、ただ本編を読むだけでは出会えない「走れメロス」の面白さでした。
そこでアンは、高見さんという年上の人物にメロスの物語を読んでもらうのですが、その時に語っていた彼の熱い言葉に、私はものすごく感銘を受けました。
高校生のアンが読む「走れメロス」も充分に面白いと思えた小説ですが、アンの何倍も生きている高見さんは今の彼女にはわからない物語の良さもよく知っていて、読者の人生経験が物語をより面白くし、本物の名作に仕立てるのだと思わせてくれました。
私も父に「学生の時に好きだった本も、今は自分には合わないと思った本も、将来読み返してみるといい」とよく言われます。今回の高見さんのメッセージは父によく言われることと重なるものがあり、なんだか感慨深かったです。
また後半で描かれる童話を巡るエピソードでは、アンにとって継母にあたる千冬さんの葛藤を感じたほか、童話というのは長い歴史をかけて、時代や子どもに相応しくない要素を削りに削った「優しい物語」の象徴でもあると思わせてくれる、こちらもなかなかに深い内容でした。
今作を読了して感じたのは、本をもっと純粋な気持ちで読みたいということです。本を読んで「面白い」と思うこと、素敵だと感じた箇所を見つけることは、美しい感性を磨くために必要でもあるという学びがありました。
今回のお話はアンだけでなく、大人の視点から描かれるシーンもあり、作中での高見さんの言葉のように、この本も何年か後に読めば感じ方が変わるところとか、新たな発見もたくさんあるんだろうなと予感しました。
アンの札幌での生活と、図書迷宮での冒険はまだ続きそうな気配なので、3作目も発売されるようなら引き続き読みたいです。
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