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最近のおすすめ本:猫のお告げは樹の下で

青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』を読みました。

今作は神社の不思議な猫・ミクジのお告げに導かれ、老若男女が日々をちょっぴり変えていく様子が描かれました。

「ニシムキ」「チケット」などミクジのお告げは一見すると意味深ですが、葉っぱに刻まれていた言葉をヒントに行動し、意外なところから、あるいは知らず知らずのうちに悩みを乗り越えていく数々のエピソードに心打たれました。

中でも私は、「スペース」のエピソードが心に残りました。このエピソードでは漫画家になる夢をあきらめかけていた主婦・千咲が主人公でした。

ミクジからもらった「スペース」というお告げの意味を探る中で、千咲は絵が上手い輝也パパのSNSに辿り着きます。輝也パパに絵が上手い秘訣を聞いた時に出てきた「神様が入るスペース」という言葉に私はとても惹かれました。なるほど、幸運というものは自分から招き入れるものかと。

また千咲と宮司さん(この宮司さんも作品全体を通していい役割を放っていて魅力的なキャラでした)の会話も印象的で、リラックスする時間や自分の中にある偏見を取り払うことを大切にしたいと気付かせてくれました。

他にも「マンナカ」のエピソードも心にぐっと刺さるものがありました。主人公は転校生というのもあり、まだまだクラスに馴染めていない和也少年。趣味をバカにされたり、学校中で飛び交う陰口を嫌っていたりと学校生活は彼にとって辛いことしかありませんでしたが、ミクジとの出会いをきっかけに嫌われている先生たちのいい一面を知るなど毎日に少しずつ楽しさを感じるようになった彼の強い成長が読み応えありました。

病弱で学校を辞めてしまう山根先生をクラスメイトが「メンヘラ」と呼んでいたことに対して、和也はこのようなことを考えていました。

心が病んでるって、一生懸命な人のことを笑ったり、誰かが大切にしているものを平気で踏みにじったりするやつのことだと思うんだ。

p207

小学生のうちに学校という狭い世界の残酷さに気付けた和也は、この先きっと立派な大人になっていくんだろうなと予感しました。

他のエピソードも家族や夢に対して新しい一歩を踏み出していくお話が多く、読むたびに明るい気持ちになりました。これまで青山さんのいろいろな作品を読みましたが、作風でも今作のような日常の中にファンタジーを感じるお話が私は1番好きです。

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