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メインブログ『あふりかくじらの自由時間』の一部記事を転載しています。
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記事一覧

生活の中心にサメがいる

生活の中心にサメがいる

我が家の暮らしには、いつもサメがいる。

朝起きてもそこにいる。
日中も、家に帰って来ても、夜も。
いつもそこにいて、癒してくれる大切な存在だ。

サメとはイケアのシャークである。
品名はブローハイで、日本語で言うヨシキリザメなのだそう。
あまりの人気で、サメに服を着せたり旅行に連れて行っては写真をインスタに載せているひとも大勢いる。

世界的に根強い人気のイケアシャークであるが、今これほどまでに

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ニューヨークの9/11メモリアルとテロのない世界

ニューヨークの9/11メモリアルとテロのない世界

2001年9月11日、スコットランドにいた。

エディンバラ大学のアフリカ研究センターの修士課程に在籍中で、あと一週間で修士論文を提出しなければならない追い込みの時期だった。

わたしは、大学の寮のフラットを二人のアメリカ人とシェアしていた。
その日の午後、大学の寮の部屋にいたわたしたちは、アメリカからの電話で事件を知ることになる。
電話をかけてきたのは、アメリカに住むフラットメイトの親戚。
一機

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重なり合う「プロ」と「アマ」の世界~京都のシェア型書店

重なり合う「プロ」と「アマ」の世界~京都のシェア型書店

今年の祇園祭のころ訪れた京都で、いくつかの書店に足を運んでみた。

旅先でわりと訪れるお決まりの場所といえば図書館だったのだが、ひとり出版レーベルの雨雲出版を始めた昨年からは、あらためて小規模な書店を巡ってみたくなったのだ。

パートナーが関わっている仕事についていく短い滞在だったのもあり、ひとりでの自由時間は限られていたが、その中でチャンスを見つけて電車やバスを乗り継いで気になるお店に行った。

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エディンバラ市庁舎の小さな結婚式

エディンバラ市庁舎の小さな結婚式

二十数年前、ご縁があってとても印象的な結婚式に参列した。
英国はスコットランド、エディンバラ大学のアフリカ研究センターで修士課程に在籍していたときだ。

結婚する二人は台湾のひとで、二人ともわたしの知らないひとだった。
参列することになったのは、知り合いの日本人男性に声をかけてもらったからだ。

欧米では、大切な場や公式のイベントにカップル単位で参加するのが通例だが、彼のパートナーは都合が悪かった

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8月6日に黙祷、思い出すこと行動すること

8月6日に黙祷、思い出すこと行動すること

8月6日の朝8時15分に黙祷するのは、子どものころから当たり前になっていた。

わたしは、引っ越した関係で三つの小学校に通ったのだが、8月のこの時期はいつも1980年代後半の3年生から6年生まで在籍していた大阪の小学校のことを思い出す。

平和教育に熱を入れていたその学校は、普段から戦争や原爆のことを教え、学習発表会では演劇を、音楽の時間では戦争をテーマにした曲を扱い、修学旅行では広島で原爆ドーム

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ベーカリーカフェで声をかけたそのひとは、人生で必要なひとだった

ベーカリーカフェで声をかけたそのひとは、人生で必要なひとだった

もう二年近く前、お気に入りのベーカリーカフェで知らないひとに声をかけた。
その女性は、ステッカーで飾られたマックブックを広げていて、傍らには分厚い学術書らしき本が置かれていた。

アフリカンルーツを思わせる見た目に、ドレッドをきれいにまとめたお洒落なヘアスタイル。その知的なオーラと雰囲気になんだか話しかけたくなってしまい、あなたのバッグかわいいですねと声をかけてしまったのだ。アフリカンプリントのバ

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鎌倉ハイキングでじん帯を損傷したら迷いが消え失せたかもしれない

鎌倉ハイキングでじん帯を損傷したら迷いが消え失せたかもしれない

二週間以上も前なのだが、鎌倉へひとりハイキングに行ったときに足を怪我してしまった。

旅に出たくて仕方がない気持ちが強すぎるのに、現在取り組んでいる小説の翻訳出版に向けた原稿で忙しく家を離れられない。
パスポートをつかんで空港から飛行機に飛び乗らんばかりの勢いだった自分をとりあえず落ち着かせようと、曇り空の平日の朝、鎌倉のハイキングコースを歩くことに決めたのだ。
東京の外に出て、緑の中にいれば気持

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潜在意識の南アフリカ~ソウェト蜂起とサラフィナ!から始まるアフリカ旅

潜在意識の南アフリカ~ソウェト蜂起とサラフィナ!から始まるアフリカ旅

潜在意識に南アフリカがあった。
そう感じたのは、アフリカ人生を歩み始めてずいぶん経ってからのことだ。

アフリカについてほとんど何も知らなかった自分が、たまたま大した関心もなく選択した大学のアフリカ研究ゼミ。そして南アフリカの作家ベッシー・ヘッドと出会い、それ以降アフリカで国際協力の仕事をするアフリカ人生になった。

ベッシー・ヘッドに衝撃を受けた原点のまた原点をたどってみると、高校時代にあったの

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遠い日の記憶を溜める廃線を歩く~碓氷峠廃線ウォーク

遠い日の記憶を溜める廃線を歩く~碓氷峠廃線ウォーク

鮮やかな緑のなかにひっそりと闇をたたえる古いトンネル。
使われない線路が吸い込まれていく静かな風景。

SNSで流れてきたその写真を偶然目にした瞬間、これだと思った。
この場所に行きたい。空気と静けさに浸りたいと。

それは信越本線新線の横川から軽井沢へ向かう線路上を歩く、廃線ウォークというイベントの風景だった。
1997年に104年の歴史に幕を閉じたその路線は、群馬県と長野県を結ぶ山深い場所を抜

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雨雲出版、文学フリマ東京38へ。商業出版と小出版の混ざり合う狭間で

雨雲出版、文学フリマ東京38へ。商業出版と小出版の混ざり合う狭間で

遅ればせながら、先週5月19日(日)に開催された「文学フリマ東京38」へ雨雲出版として参加した記録と所感について。

雨雲出版としては、昨年11月の「文学フリマ東京37」に次いで2回目の出店となった。
前回のラインナップに加え、新刊のエッセイ本2種類を並べての参加で、出店者数1800越えの巨大イベントの賑わいで、多くの方に手に取っていただける機会だった。

出店者の中には、出版社やプロの書き手の方

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アフリカ差別発言に出くわしたときの対応について考えること

アフリカ差別発言に出くわしたときの対応について考えること

学生時代にアフリカに関わり始めてからいままで、ずいぶん年月が経った。
いつも感じていることだが、アフリカ関係以外の一般のひとと話していて、あからさまにアフリカに対する差別的な発言をされるのは日常茶飯事だ。
アフリカ関係者ならきっと誰しも、そんな場面には数知れず出くわしているだろう。

つい最近も、そういうことがあった。
馴染みの小さなバーのカウンターにいたとき、すぐ横に座った女性が大声で(わたしか

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新刊エッセイの本音『水面をすべるモコロのように:作家ベッシー・ヘッドと出会ってボツワナを旅したわたしは、ひとり出版社をはじめようと思った』雨雲出版

新刊エッセイの本音『水面をすべるモコロのように:作家ベッシー・ヘッドと出会ってボツワナを旅したわたしは、ひとり出版社をはじめようと思った』雨雲出版

雨雲出版の新刊エッセイ
『水面(みなも)をすべるモコロのように:ベッシー・ヘッドと出会ってボツワナを旅したわたしはひとり出版社をはじめようと思った』

昨年のボツワナ/ジンバブエ旅を一冊の本にまとめました。
開発コンサル企業を去り、作家ベッシー・ヘッドのアーカイブ調査を主目的として実に16年ぶりに訪問したボツワナ。わたしにとってとても重要な旅でした。

旅の記録はもちろん、ボツワナでベッシーの暮ら

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【雨雲出版】5/19(日)「文学フリマ東京38」こちらの本をお届けいたします

【雨雲出版】5/19(日)「文学フリマ東京38」こちらの本をお届けいたします

雨雲出版として二回目の文学フリマ東京に出店します。
アイテムは以下の4種類と無料配布の1種類の計5種類。
文学フリマに行ったのも出店したのも去年(手術直前)が初めてでした。

今は1800以上ものブースが出る巨大なイベントのようです。出店者様も個人やサークルの方はもちろん出版社やプロの書き手の方から大学のサークルまで実に幅広く、扱っているものもとても面白くて熱量が半端ないイベントですね。きっと掘り

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開発コンサル+出版レーベル+手術経験当事者だからできたこと

開発コンサル+出版レーベル+手術経験当事者だからできたこと

昨年11月に手術を受けた。
病院のベッドで思いついたのがこの本を書くことだった。

婦人科(現在では、女性科・女性診療科のような呼称に変えている病院も)の治療で悩み、手術を提案され悩み、薬の副作用で翻弄され、辛い思いをしてきた経験を、分かち合うことができたら。

似た経験をしているひとたちの体験談で、せめて少しでも孤独や辛さが癒され、気持ちが楽になるのなら。

もともと自分自身の体験談はエッセイ化

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