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私の物語

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今までの記憶へ、ひとつまみの嘘をまぜながら綴った私の物語。
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#日常

金曜日の幻

金曜日の幻

ここ最近しばらく何も書くことができず、気がつけば今年2月でnoteを始めて2年目になっており、そこから更に呆然と日々を過ごしていたらあっという間に桜の季節になっていた。

春はなんとなく悲しい気持ちになる日が多い。
母が突然倒れたのも春だったし、父がいなくなったのも春だった。
卒業式では名前を間違えられたし、思いの外短い前髪に仕上がってしまったあの日も春だった。

私は、春が嫌いかもしれない。

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小さな失敗、大きな成長

小さな失敗、大きな成長

中学生の頃、美術の授業で印鑑を作った。

『自分の作品へサインとしておせる印鑑』

という課題だった。

一生懸命デザインを考えて
印鑑本体も、オシャレに飾り彫りを施した。

完成した時には
先生やクラスメイトにほめられちゃって
まんざらでもなくって
嬉しくって嬉しくって
みんなが見守るなか、試し紙におしてみたら

紙の上には
反転している私の名前。

印鑑だから文字等はデザインを反転させて彫らな

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あなたの後ろにできた道は

あなたの後ろにできた道は

今、目の前にいるその人が
“今”に至るまでにどのような人生を歩んできたのか

そんな話を聞くことが、私は好きだ。

笑顔で微笑んでいる人ほど、たくさんの涙を隠している。

外見だけではみえない物を、それぞれが背負って生きている。

*…*…*

数年前、丁度今のような梅雨の時期
なんの用事だったかな…私はその日ハローワークにいた。

待合室、私の斜め前に座っている男性。
金髪で身体が大きい。
腕や

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家庭菜園の楽しみ方。

家庭菜園の楽しみ方。

毎年我が家の庭から綺麗な大型の蝶々が巣立っていく。

今年も飛んでいくんだね…

と、嬉しいようなさみしいような…複雑な心境でヒラヒラと優雅に舞っていくその姿を見送る。
そんな我々の足下には、なんともみすぼらしい姿のパセリ。

我が家のジンクス(?)
『パセリを頑張って育てても、我々は食べる事ができない。』

*…*…*

「あると便利だよねぇ」

と、ある日母が買ってきた苗はパセリだった。

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甘くて、やさしい、それがカボチャ。

甘くて、やさしい、それがカボチャ。

めっきりと秋めいてきた。

日中はまだほのかに夏の香りがするけれど、朝晩はすっかり秋だ。
タオルケットだけで眠るのが段々と心細くなってきた。

*…*…*

趣味で畑をしている伯父。
祖父が元気だった頃は2人でせっせと野菜を作っていた。

祖父が亡くなったあの日から伯父はずっと畑に没頭していた。
きっと落ち着かなかったのだと思う。

そんな伯父が「カボチャが採れた」と言って届けに来てくれた。
手の

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むかしむかし、冬のとある小さな街で。

むかしむかし、冬のとある小さな街で。

1990年2月26日。

雪がしんしんと降るその日、1人の赤ん坊が今にも消えてしまいそうな産声と共にこの世界へと引っ張り出された。

彼女は自分が思っていたタイミングとは全く異なる瞬間に世界へと出されてしまった為、自分の身に起きたことを理解するまでに時間がかかった。

空気は想像していたよりも少しひんやりとしていたし、世界の全てが霞んで見えるので不安になったりもした。

思いきって声を出してみると

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花紺青色の海に浮かぶ。

花紺青色の海に浮かぶ。

浮かんだり沈んだり、ただそこにいるだけなのに
まるで広い海に放り出されて
プカリプカリと漂っているような気持ちになる。

あまりにもそれは不安定なので
最初は例えようも無いほどに恐ろしかったのだけど
最近はそれほど恐ろしいと感じる事もなくなってきた。

流れていく雲や
時間と共に変わっていく空の色なんかを
ぼんやり眺めながら、ただ、そこにいる。

嵐の日は荒れ狂った海の波にのまれないよう
身体をち

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梅田駅を降りてまっすぐ  ( 1/2 )

梅田駅を降りてまっすぐ ( 1/2 )

汗をかきながら、ビジネスバッグを右肩へ背負い、スーツケーをスゴロゴロと引っ張っていた。

心理職採用試験を受けるため、私は1年ぶりに関西の地を踏み

無事、迷子になった。

*…*…*

横断歩道の信号が赤になった。
小さなため息を1つ、ホッとつき、足を止める。

当時はまだ、ほんの少しスマホが珍しかった時代。
ポチポチとガラケーを操作して地図機能を作動させた。

地図は私の現在地と目的地を表示

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雨音に耽る。

雨音に耽る。

朝が来たはずなのに
部屋の中がうっすら暗くてほんのり肌寒い。
夢と現を行き来しながら、毛布に深く潜り直した。

目を閉じて、耳を澄ますと

しとしと、しとしと…

カーテンの向こうから音が聞こえる。

その心地よい音色に身を任せて
私は再び優しい夢の中へと沈んでいった。

*…*…*

雨が降っている。

優しい音色を奏でていた雨だったけれど
再び目覚めた時には、バケツに入れた水を路面に叩きつけて

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グリーンアスパラの穂先

グリーンアスパラの穂先

猫の額ほどの我が家のお庭。
そこには小さな家庭菜園があって
隅の方にひっそりと
(けれど、ずいぶんと存在感のある)
アスパラがはえている。

一株は、母が植えたアスパラ。
もう一株は、何故だか勝手に生えてきたアスパラ。

たくさん収穫できるわけではないけれど
私たち家族を毎年楽しませてくれる
大切なご飯のおかず。

今年も季節になったので
夕方、収穫して夜ご飯のおかずにしようと思い
ハサミと小さな

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言葉の花火をながめて。

言葉の花火をながめて。

ふとした瞬間
突然、ぼんやりとしてしまうことがある。

だいたいそれは
いろんな事を思い出したり考えたりしている時で
そんな時に話しかけられると
意識はどこか別のところに行ってしまっているため
適当な相づちや返事を返してしまう。

記憶たちが次々と『コトバ』になり
まるで、花火のようにパッと
暗闇の脳内へ広がっては消えていく。

私はいつも
パッと広がっては消えていく
コトバの花火となった記

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「じゃぁ、またね!」

「じゃぁ、またね!」

私は、故郷が嫌いだった。

義務教育の9年間
私はとても息苦しかった。

どうして?

わからない。

思春期特有の『何か』だったのかもしれない。

自分でもよくわからなくて
だから私は、それを全て故郷のせいにした。

遠くのどこかへ、行ってしまいたかった。

念願叶って、私とはこれっぽっちも縁の無い
知り合いも誰もいない遠くの大学へ進学した。

だけど

『20歳の私』は『30歳の私』からしてみ

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