Midler

小説とエッセイの狭間で文を綴る。拙い女子大生の戯言。

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記事一覧

「戦争」

リグレット。 自販機に吸い込まれるはずだった100円は財布を脱走し用水路に消えた。 ぼやける視界を誤魔化そうと目を擦るがずれたコンタクトの痛みでさらに涙が溢れた。 …

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1年前
4

「Princess」

「雪よりもツリーよりも君が綺麗だ」 使い古されたような臭い謳い文句が私には憧れだった。 昨日見た映画でも似たようなセリフを聞いたような気がしたが、半分以上はホッ…

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1年前
2

「MORE」

『綺麗な指してたんだね、知らなかったよ』 聞き慣れたプレイリストが流れる車内で「渋・・・」と母親が小さくつぶやいた。 世代だろ・・・と胸の中でツッコミを入れて窓…

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1年前

『微睡』

指先からする錆の香り 雨に濡れた自転車で水溜まりを超える 明日が今日になる 部屋の隅で重なるシャツ 湿気と汗が篭もる部屋に柔い煩悶と情痴 黒が青に変わる I love yo…

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1年前
1

「星空を越えて」

静まり返った広い空間に僅かに響く空調の音だけが耳に届く。パタパタと無機質な二人だけの足音はこの空間にどこか異質に思えた。 この場所が海外へ羽ばたくたくさんの人で…

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1年前
1

「夏と呼ぶにはまだ早い」

エアコンの小さな動作音。隣人のベランダの窓の音。閑散とした部屋の中に響くキータイプ音。 風呂上がり、まだ火照りの残る体で心地の良い微睡と戦うだけの週末。 自分の…

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2年前

「dreaming or Movie」

素肌を掠めた柔い髪の感触で目を覚ました。 重たい瞼をゆっくり開けると、寒かったのだろう向かい合って眠っていたはずの彼は毛布にくるまって背中を向けていた。 目覚め…

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2年前
6

「赤い月」

わがこころ いつしか和み あかあかと 冴えたり月の のぼるを見たり・・・ お疲れ様ですの声が右に左に反響する帰り際の校門。 私もまた同じように数人に会釈して門が…

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2年前
3

「じかん」

朝方。 既に耳に馴染んだ踏切の音を聴きながらキミを待つ。 出会ったばかり、4週間ほど前には冷たいと感じていた風が今は涼しいくらいに感じる。少し重たい扉の開く音と後…

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2年前
3

「ぷれいばっく」

早朝。身震いする肌寒さに目を開けて布団を手繰り寄せて包まる。頬に付いた畳の跡を指でなぞって携帯の時刻表示を見る。 4時半。 跡を鏡で確認しようと姿見を覗き込むと…

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2年前
2

「季節の狭間に」

三度目の夏が来る 脱ぎ捨てたシャツは汗で薄く湿っていた。 暦の上ではまだ春だと言うのに、携帯の画面に表示された市内の気温は夏顔負けのものだった。 理となった非常。…

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2年前
2

「季節が終わる時」

桜の季節が終わると涙の季節がやってくる 幼い頃に誰かが言った。 幼いなりにその意味を知りたかった私はどうして?と聞き返したんだった。 桜の季節はお別れの季節なん…

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2年前
1

「嘘」

一日中眠っていたので頭が痛い。 ぐあんぐあんと反響する脳の奥でかけっぱなしにしていた最近にわかに応援しはじめたアイドルの曲がなり続ける。 画面の奥で踊る少女は君…

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2年前
1

「カラタチの白昼夢」

カラタチの花が咲いたよ。白い白い花が咲いたよ。 川沿いの道を自転車で漕ぎながら無意識に口ずさんだのは曲名もどこで聞いたのかも思い出せない歌だった。 まだ見なれぬ…

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2年前
1
「戦争」

「戦争」

リグレット。

自販機に吸い込まれるはずだった100円は財布を脱走し用水路に消えた。

ぼやける視界を誤魔化そうと目を擦るがずれたコンタクトの痛みでさらに涙が溢れた。

こんな日もあるさ、そうやって誤魔化せたら。どれだけ楽だろうか。

一つ一つは小さな、種のような苦しみなのだ。ただ育ちすぎてしまったのだ。

目を背けて放置するうちに芽が出ていることにも気づかずに

その種は育ててはいけない、自らを

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「Princess」

「Princess」

「雪よりもツリーよりも君が綺麗だ」

使い古されたような臭い謳い文句が私には憧れだった。

昨日見た映画でも似たようなセリフを聞いたような気がしたが、半分以上はホットケーキの夢を見ていたので定かではない。

ただあの映画のヒロインは、ヒロインという言葉に相応しいような美少女で。フレアのスカートを翻すたびにすれ違う男性は皆振り返る。そんな女性だった。

幼い頃はずっと大きくなれば私もああなって、王子

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「MORE」

「MORE」

『綺麗な指してたんだね、知らなかったよ』

聞き慣れたプレイリストが流れる車内で「渋・・・」と母親が小さくつぶやいた。

世代だろ・・・と胸の中でツッコミを入れて窓の外を眺めた。

田舎の風景は変わらない、実に淡々と、山と田んぼが流れては現れ流れては現れる。

『私にはスタートだったの君にはゴールでも』

曲は中盤に差し掛かっていた。携帯を開いて少し再生のカーソルを戻す。

「私、ここの歌詞好きな

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『微睡』

『微睡』

指先からする錆の香り
雨に濡れた自転車で水溜まりを超える
明日が今日になる

部屋の隅で重なるシャツ
湿気と汗が篭もる部屋に柔い煩悶と情痴
黒が青に変わる

I love you を陳腐と下手なミュージシャンは笑った
I love you と私は歌った
I love youを笑ったあのミュージシャンは今
I lose youと悲しげに歌っている

眠る横顔を見た。

眠る横顔を見た。

微睡の中

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「星空を越えて」

「星空を越えて」

静まり返った広い空間に僅かに響く空調の音だけが耳に届く。パタパタと無機質な二人だけの足音はこの空間にどこか異質に思えた。
この場所が海外へ羽ばたくたくさんの人で賑わっていたのは今や昔の話。欠航の文字だけが表示された電光掲示板が変わってしまった毎日を痛々しく映し出す。

「異次元みたい」

思わずそう零した私に彼は確かにと小さく頷いた。

「この前来た時は電気も消えてて本当にここは眠ってた」

私は

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「夏と呼ぶにはまだ早い」

「夏と呼ぶにはまだ早い」

エアコンの小さな動作音。隣人のベランダの窓の音。閑散とした部屋の中に響くキータイプ音。

風呂上がり、まだ火照りの残る体で心地の良い微睡と戦うだけの週末。

自分の髪から香る甘い匂いは自分では絶対に買うことがない少し高めのブランドのもので。寝返りをうって香るたびに自分ではない誰かのお話を見ているような感覚に戸惑う。現実と非現実を行ったり来たり彷徨っては度々その瞼を擦った。

さらさらとトラックパッ

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「dreaming or Movie」

素肌を掠めた柔い髪の感触で目を覚ました。

重たい瞼をゆっくり開けると、寒かったのだろう向かい合って眠っていたはずの彼は毛布にくるまって背中を向けていた。

目覚めるたびに必ずと言っていいほど同じ場所についている寝癖が、私を眠りから呼び戻した犯人かと思うと少しだけ憎たらしくなってその寝癖にカメラを向けると無音で一枚写真を撮った。

少し気だるい体を無理やり起こして、カーテンを少しだけ開けると差し込

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「赤い月」

わがこころ いつしか和み あかあかと 冴えたり月の のぼるを見たり・・・

お疲れ様ですの声が右に左に反響する帰り際の校門。
私もまた同じように数人に会釈して門が閉まる前にとその場を離れる。
隣に並んだ君を横目で見ると心なしかいつもより背中が小さく見えた。
「二度とスカート履いてやんない」
口にしたのは拗ねたような文句言葉。でも心の中ではその反応を期待していた。
背中を小さくして謝る君の姿を見てい

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「じかん」

朝方。
既に耳に馴染んだ踏切の音を聴きながらキミを待つ。
出会ったばかり、4週間ほど前には冷たいと感じていた風が今は涼しいくらいに感じる。少し重たい扉の開く音と後ろから聞こえた「おまたせ」の短い声に、軽く頷いて足を進めた。

うたた寝。
最近増えたような気がする。あまり人前で眠るのは得意ではない私が、キミの横に居れば吸い込まれるように眠りに落ちてしまう。いつもよりほんのり高い体温がキミも眠たいのだ

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「ぷれいばっく」

早朝。身震いする肌寒さに目を開けて布団を手繰り寄せて包まる。頬に付いた畳の跡を指でなぞって携帯の時刻表示を見る。

4時半。

跡を鏡で確認しようと姿見を覗き込むと間抜け面が映った。

心做しか目が腫れている。

泣いていた……?

あまりにも身に覚えがないので、きっと何か夢に魘されていたんだろう。

寒さに耐えかねてカーディガンを椅子からひったくり羽織るとまたもぞもぞと布団に戻った。

先程まで

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「季節の狭間に」

三度目の夏が来る
脱ぎ捨てたシャツは汗で薄く湿っていた。
暦の上ではまだ春だと言うのに、携帯の画面に表示された市内の気温は夏顔負けのものだった。

理となった非常。1年前の夏、そう私は綴った。

「借りていい?」と返すことはまず無いのに尋ねて箱から白い布を取り出して玄関に向かう。
少し遅れて奥から現れた家主の少し慌てた素振りがやけに愛おしくてその髪に触れた。

布1枚を隔てて緩みきった自分の口元が

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「季節が終わる時」

桜の季節が終わると涙の季節がやってくる

幼い頃に誰かが言った。
幼いなりにその意味を知りたかった私はどうして?と聞き返したんだった。

桜の季節はお別れの季節なんだよ。そして、桜の季節が終わってしばらくしたら雨がたくさん降るの。その雨は離れ離れになった誰かの涙なの。

たった1人の顔も名前も思い出せない誰かの言葉が、15年以上もたった今でも頭の中に残っている。

不思議と。この季節が来る度に思い

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「嘘」

一日中眠っていたので頭が痛い。
ぐあんぐあんと反響する脳の奥でかけっぱなしにしていた最近にわかに応援しはじめたアイドルの曲がなり続ける。

画面の奥で踊る少女は君より幾分か小柄だ。
けれど、似ていたんだ。初めて見た時、
目元や笑った時の口元が。

携帯に手を伸ばすと付けっぱなしがたたって、熱くなっていた。

時刻は23時を回っていた。いつから寝ていたのか記憶が曖昧で、とりあえず水だけ飲もうと冷蔵庫

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「カラタチの白昼夢」

カラタチの花が咲いたよ。白い白い花が咲いたよ。

川沿いの道を自転車で漕ぎながら無意識に口ずさんだのは曲名もどこで聞いたのかも思い出せない歌だった。

まだ見なれぬこの街を0時も過ぎた夜中に1人自転車を走らせる。曲がる場所を間違えて1度戻ったりなんかして、ようやく家に辿り着いた時には時刻は1時を回っていた。

帰るなりベッドに埋もれベッドサイドを眺めると、まだ真新しい写真立てが視界に入る。

数少

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