「戦争」
リグレット。
自販機に吸い込まれるはずだった100円は財布を脱走し用水路に消えた。
ぼやける視界を誤魔化そうと目を擦るがずれたコンタクトの痛みでさらに涙が溢れた。
こんな日もあるさ、そうやって誤魔化せたら。どれだけ楽だろうか。
一つ一つは小さな、種のような苦しみなのだ。ただ育ちすぎてしまったのだ。
目を背けて放置するうちに芽が出ていることにも気づかずに
その種は育ててはいけない、自らを蝕む毒草であると知った時にはもう全てが遅かった。
100円を見送った用水路に薄汚く枯れた花がちぎれちぎれに流れている。
ダチュラ。
毒は美しい顔をして忍び寄る。
偽りの魅力で着飾って美しい毒と共存する度
蝕まれていく「己」という存在が。
憎たらしい。
憎たらしい。
花は流れ消え、毒草は枯れた。
ただ残ったのは永遠に解毒されない毒に蝕ばまれた我が芯。
憎たらしい。
憎たらしい。
コンクリートに染み込んだ一滴の雫を誰も知る由もない。
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