「dreaming or Movie」

素肌を掠めた柔い髪の感触で目を覚ました。

重たい瞼をゆっくり開けると、寒かったのだろう向かい合って眠っていたはずの彼は毛布にくるまって背中を向けていた。

目覚めるたびに必ずと言っていいほど同じ場所についている寝癖が、私を眠りから呼び戻した犯人かと思うと少しだけ憎たらしくなってその寝癖にカメラを向けると無音で一枚写真を撮った。

少し気だるい体を無理やり起こして、カーテンを少しだけ開けると差し込んだ朝日が目に痛くてうっすらと涙が滲んだ。

細く溢れた光芒が寝息を立てる彼の首筋に差し込んで昨日の私の足跡を照らすのが無性に愛おしくて。嬉しくて。胸が詰まった。

私はよく夢を見る。

どちらかというとリアルで、たまに不安になるくらい現実的な夢。

だからこそ不安になるんだ。

昨日見たものもなんならこの一ヶ月さえ全て

長い長い長い夢でいつか突然プツリと目覚めてしまうのではないかと。

その度に

「冷めない夢だよ」

といつだったか彼が言った言葉を思い出す。

おはようとその名を呼んで短いキスをする度この夢はまだ続くと確認できるのだ。

人生は一本の映画である。

どこかで誰かがそう言った。

その映画は主演しか決まってない状態で始まって、あとはみんな役名もないエキストラ。

そこから何十年かけてほんのわずかな数人にだけ友人A、Bと役名がついていく。

そして

最後に埋まるのが

もう一人の主演

ヒーローだと。

非現実なくらいに満たされた日々は、まるで長編映画のヒロインになったかのようで

毎日の些細な出来事を文字にするたび

エンドロールの最後共に名前を並べるのは彼かもしれないと

確証もないけれど思うのだ。

夢は覚めない映画はまだ始まったばかり。

視界の端の時計はもう昼を回ろうとしている。

隣にある普段より少し高い体温に寄り添って、私は欲に従順に再び目を閉じた。


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