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孤独を知ってるから、しがらみを楽しめる

2〜3年前、僕たちには、とてつもなく孤独な時期があった。

人と話したくても話せない。
会いたくても会えない。
外の空気を吸って、友人とリフレッシュしたくてもできない。

そんなストレスがあった日々を、もう忘れつつある。

「この資料のまとめ、急遽明日のミーティングで使うことになったんだ。部署で協力して、今日中に終わらせてもらえるかな」

上司からそう言われ、分厚い資料を手渡されたのは午後4 時。 
退勤の6時までに残された時間はごくわずか。
おまけに今日は水曜日。
当社のノー残業デーだ。

上司も、無茶振りだってことは分かっているだろう。 
でも、明日の会議までにこの資料のまとめが必要になったのは、抗いようがない現実。

今度は僕がチームメンバーを集めて、無茶振りを再現するしかない。

他人同士が一つの場所に集まり、同じ目標に向けて動いている。
時には理不尽なことが発生してしまう。
ルールに対して矛盾が生じていることは、分かっている。

「申し訳ないんだけど、これを明日までに完成させなくちゃいけないんだ。みんなで協力すれば、18時少し過ぎには終わると思う。手を貸してもらいたい」

三人の部下の反応は三者三様。
動じることなく口角を上げてうなずく者。 
ちらっとカレンダーを見て、今日が水曜日であることを確認する者。
無表情で時計を見つめている者。

それから、僕たちはいつもより多くコミュニケーションを取り合い、お互いの進捗を密に確認し合い、18時前に完成させた。

あえて口にはしないけれど、お互いに協力し合ったからこそ得られた達成感を、みんな得ている空気があった。

上司から軽いノリで直接無理な依頼をされることも、顔を向き合わせて話しながら仕事に取り組むことも、あの頃にはなかった。

決してこれが良いこととは思わないけれど、チャットのみのやり取りで、淡々と物事が進んでいくあの頃よりも、僕は人間味を感じられる"今"のほうが好きだ。

同じ場所で同じ物事に携わっているから、上手くいかないこと、納得いかないことは出てくる。

でも、それも含めて、人対人のしがらみとして丸ごと楽しめるのは、あの孤独な時期を経験した僕らだからできる特権なのではないだろうか。


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