ひきたよしあき

コラムニスト・コミュニケーションコンサルタント。博報堂フェロー。https://smi…

ひきたよしあき

コラムニスト・コミュニケーションコンサルタント。博報堂フェロー。https://smilehikita.com/?fbclid=IwAR3qoLHzmMroN151zaK5W6kEMpFLEPi3rzUirHrUxif951BPGE1Mj5BJLZg

記事一覧

景色のコトダマ Vol.9 風の景色

夏の盛りに、坂道がきつくなりました。 暑さのせい? と思っていたけれど、どうやら違う。太腿を触ると明らかに筋肉が落ちている。長い自粛生活で、運動量が減っていたの…

景色のコトダマ Vol.8 不連続の連続

コロナ禍の第一波が収束に向い、各地域で緊急事態宣言が解除されつつあります。しかし、秋には第二波がくると多くの識者が予測。夏の甲子園をはじめ多くのスポーツ大会、コ…

187

景色のコトダマ VOL.7 花束をもつ男

定年退職には、格別な思いがありました。父が、腎臓がんで死んだのは59歳。定年退職まで、あと17日足りませんでした。以来、私の中で定年退職を迎えることが、父を超え…

234

オフィシャルサイトをつくりました。ぜひ見にきてください。
よろしくお願いいたします。
https://smilehikita.com/?fbclid=IwAR0UJ9R3frWOv5NrW1stiptM4eFpPnc0EmdVVriekcZadfvA2Ibjc381fgw

景色のコトダマ Vol.6 エールをかたちに

【第2志望に落ちてしまった】 お母さんからメッセージが届いたのは、寒い日の晩でした。 「娘が、第2志望の中学に落ちてしまいました。受かると思っていたせいか。すっ…

111

景色のコトダマ Vol.5 言葉は親がつくる

【ひきたはケチ】 小学校3年生のころです。西宮の小学校に通っていた私は、ある時イヤな言葉を聞きました。 「ひきたは、ケチや」 言われる覚えは全くありません。当時…

197

景色のコトダマ Vol.4 Love Letter

【すべてのルポは、ラブレター】 1980年代初頭を賑わせた事件に「三浦和義・ロス疑惑」がありました。保険金目当てに奥さんをロスアンゼルスで殺害した。今では何らニ…

景色のコトダマ Vol.3 ナットウ文学

【4年前の書き置き】 コロナ自粛になって、自炊する機会が増えました。男二人兄弟。「男子厨房の入らず」の昭和の教育で育った私は、料理がほとんどできません。最近にな…

134

景色のコトダマ Vol.2 生命力のひかり

【病室から校庭が見えた】 2016年5月に、腎臓がんの手術のために済生会中央病院に入院しました。手術は5月10日。初夏に向かう季節のときに、私は白い壁と薄いベー…

136

景色のコトダマ V0l.1 見えなかった桜

【色を失った公園】 家から歩いて5分のところに、大きな公園があります。敷地の半分は小高い丘で、子どもたちが勢いよく駆け下りたりしています。私にとっては一番身近…

324
景色のコトダマ Vol.9 風の景色

景色のコトダマ Vol.9 風の景色

夏の盛りに、坂道がきつくなりました。

暑さのせい?

と思っていたけれど、どうやら違う。太腿を触ると明らかに筋肉が落ちている。長い自粛生活で、運動量が減っていたのです。

「自転車に乗ろう」

と思い、買いに行くとめぼしいものは「入荷未定」か「2ヶ月待ち」。誰でも考えることは同じのようです。

その分ゆっくり探すことができました。買い物に便利なタイプ。真っ赤なスポーツタイプ、国産、輸入品などあれ

もっとみる
景色のコトダマ Vol.8 不連続の連続

景色のコトダマ Vol.8 不連続の連続

コロナ禍の第一波が収束に向い、各地域で緊急事態宣言が解除されつつあります。しかし、秋には第二波がくると多くの識者が予測。夏の甲子園をはじめ多くのスポーツ大会、コンサートなどが中止になり、私たちがかつての生活を取り戻すのは、まだまだ先になりそうです。

かつての生活。

と、私は、今書きました。書きながら「本当に、それは戻ってくるものなのだろうか」と疑いました。今回ばかりでなく、私はこれまでの人生で

もっとみる
景色のコトダマ VOL.7 花束をもつ男

景色のコトダマ VOL.7 花束をもつ男

定年退職には、格別な思いがありました。父が、腎臓がんで死んだのは59歳。定年退職まで、あと17日足りませんでした。以来、私の中で定年退職を迎えることが、父を超えること、そして恩返しだと思って生きてきました。

ところが、父が発病したよるも2年早く、私も同じ病を患ってしましました。定年退職が、遠のきました。「私も迎えられないかもしれない」そう思うと悔しさがこみあげてくる。謝罪の気持ちも去来しました。

もっとみる
景色のコトダマ Vol.6 エールをかたちに

景色のコトダマ Vol.6 エールをかたちに

【第2志望に落ちてしまった】

お母さんからメッセージが届いたのは、寒い日の晩でした。

「娘が、第2志望の中学に落ちてしまいました。受かると思っていたせいか。すっかり自信をなくしてます。ご飯も食べないし、言葉も少ない。第1志望の受験日も近いのに、親としてどう言葉をかければいいか・・・」

そんな内容でした。「すべり止め」に落ちる。私にも経験があります。なめていたわけではないけれど、落ちるとガタッ

もっとみる
景色のコトダマ Vol.5 言葉は親がつくる

景色のコトダマ Vol.5 言葉は親がつくる

【ひきたはケチ】

小学校3年生のころです。西宮の小学校に通っていた私は、ある時イヤな言葉を聞きました。

「ひきたは、ケチや」

言われる覚えは全くありません。当時は、お金などふだんは使わないし、誰かに「ケチ」と言われるような話をしたこともありません。さぐっていくと、

「ひきたは、電話代がもったいないから自分のうちからは電話しない」

という話でした。自分でも意味がわかりません。しかし、夕方に

もっとみる
景色のコトダマ Vol.4 Love Letter

景色のコトダマ Vol.4 Love Letter

【すべてのルポは、ラブレター】

1980年代初頭を賑わせた事件に「三浦和義・ロス疑惑」がありました。保険金目当てに奥さんをロスアンゼルスで殺害した。今では何らニュース価値のない事件です。しかし当時は、海外での事件は珍しく、ロスアンゼルス、服飾の輸入販売業、持ち物がブランド品、女性遍歴多し!とワイドショーネタを次々を提供していきました。この事件をきっかけに、テレビは「海外ロケ」を頻繁に行うようにな

もっとみる
景色のコトダマ Vol.3 ナットウ文学

景色のコトダマ Vol.3 ナットウ文学

【4年前の書き置き】

コロナ自粛になって、自炊する機会が増えました。男二人兄弟。「男子厨房の入らず」の昭和の教育で育った私は、料理がほとんどできません。最近になってやっと、簡単な料理は作れるようになった。しかし、茹で卵の正しい茹で方をつい最近知ったほどの料理オンチです。

これは4年前、母が私の家から帰るときに残したメモ。

納豆、ネギ、ヨーグルト。鮭二匹、冷凍。フライパン 中火で焼く。玉子、黒

もっとみる
景色のコトダマ Vol.2 生命力のひかり

景色のコトダマ Vol.2 生命力のひかり

【病室から校庭が見えた】

2016年5月に、腎臓がんの手術のために済生会中央病院に入院しました。手術は5月10日。初夏に向かう季節のときに、私は白い壁と薄いベージュのカーテンに囲まれた世界から出られなくなったのです。連休明けの混雑する時期で、個室はいっぱい。6人部屋になりましたが、幸いなことに窓辺のベッドを確保してもらいました。目の前に広がるのは都立三田高校のグランドです。少し寝返りを打てるよう

もっとみる

景色のコトダマ V0l.1 見えなかった桜



【色を失った公園】

家から歩いて5分のところに、大きな公園があります。敷地の半分は小高い丘で、子どもたちが勢いよく駆け下りたりしています。私にとっては一番身近な「季節を感じる場所」。駅に行くには遠回りになるけれど、この公園に吹く風を感じながら通勤しています。

10年前はもっと賑やかな公園でした。桜の季節は、バーベQを楽しむ人であふれてました。大人が酒盛りする横で、子どもたちがバドミントンを

もっとみる