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人形師のお話

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真面目な話。
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2020年1月の記事一覧

体験を買うということ。

体験を買うということ。

最近は特に欲しいものが無いということもあるが、体験にお金を払うことが増えたなあと思う。

ワークショップも興味が湧いたら参加するようにしている(人形の絵付け体験もしているため、勉強にもなる)。

最近楽しかったワークショップは、香水作りだ。

大分県別府市にある「香りの博物館」では、2500円で調香体験ができる。

何千種もある香りから、調香士がデザインしたものが香水だ。

調香体験は、その簡易版

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「伝統」になりきれない悩み。

「伝統」になりきれない悩み。

一般的に「伝統工芸」というものに認められると、国からの補助金や融資が制度が活用できます。

しかし、経済産業省から伝統工芸と認定されるには、かなり条件が難しいのです。

条件としては、以下のとおり、

①主として日常生活の用に供されるものであること。
②その製造過程の主要部分が手工業的であること。
③伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
④伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料

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最後の秘境 東京藝大

最後の秘境 東京藝大

天才たちのカオスな日常最近、私の中で空前の「東京芸術大学ブーム」が起きています。

ものづくりを仕事にしていると、意識的にも、無意識的にもアートに触れることが多くなります。

すると、やはり頻繁に東京芸術大学(東京藝大)の名を聞くことになります。
簡単に藝大の説明をすると、

東京美術学校 (旧制)と東京音楽学校 (旧制)が統合して設立された国立大学である。旧制時代も含めると、日本の芸術系大学の中

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教育現場における、伝統工芸や郷土玩具の可能性

教育現場における、伝統工芸や郷土玩具の可能性

当初感じた違和感私は、毎年1回、地元の中学校に出向き、3年生に人形の絵付け体験授業をしている。
最初に絵付けの方法を教えて、後は自由にやってもらうというもの。

ベーシックな塗り方は説明するものの、自由を大前提にしているため、出来上がる作品は様々だ。私も美術の先生も生徒の手助けはしないため、自力で塗ることになる。 

数年前、初めて授業に出た際、すごく違和感を感じた。
ちょっとでも塗りが難しいと感

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「伝統」はご飯になるのか。

「伝統」はご飯になるのか。

私は「伝統」という言葉が嫌いだ。
小さな頃から「伝統があるんだから継げよ」とか「伝統で飯が食えるからいいよな」とか言われてきたからだ。

だから昔から「伝統だけで飯は食えないし、食えないものを継げよって言うなよ」って思ってた。

今もその気持ちは変わらない。

ただ、伝統は武器ではあると思う。道具とも言うべきかな。使うべきときに使えるように磨いておくようなイメージがある。

普段は、伝統とかを意識

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古民家の可能性は測りしれない。

古民家の可能性は測りしれない。

最近は古民家が改築されたカフェやレストランが増えたなぁという印象を受ける。

新品なおしゃれなカフェがたくさんあるのに、なぜ古民家のカフェが流行るのか。

それは古民家カフェがおしゃれと安心感という、相反しそうな2点をうまく両立させているからだ。

個人的にこの2点の両立はすごくいいと思う。

まず、これからの少子高齢化の中で、古民家カフェは、高齢層も若年層も取り込む可能性がある。さらに外国人観光

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そもそも郷土玩具て何なの?な話

そもそも郷土玩具て何なの?な話

こんばんは、今日は郷土玩具についてのお話だ。イメージとしては、こけしやダルマ、招き猫なんかがある。実家に一個はあるイメージだ。

早速、Wikipediaで定義を調べると、以下のようにある。

①稲垣武雄は、行事や祭礼で授与、販売される玩具であり、観賞に耐えうるもので、方尺を逸しない大きさのものを郷土玩具と定義した。

②山田徳兵衛は、地方で考案、生産された、その地方の特色を持つ玩具を郷土玩具と定

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価格は引力だ。宇宙をめざそう。

価格は引力だ。宇宙をめざそう。

価格の種類には2パターンある。

単純に見たら、高価なものと安価なもの。

これを経済学だと、需要の価格弾力性が低いとか高いとかいう。
ざっくり説明すると、

エルメスのバック   
11万円→10万8000円

トイレットペーパーセット 
3000円→1000円

この場合、2000円の値下げで、どちらの需要数の伸びが大きいかというと、当然トイレットペーパーである。
逆にどちらとも1000円値上

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エルメスに学ぶ、価格の考え方#2

エルメスに学ぶ、価格の考え方#2

前回では、私がエルメスの職人に直接質問したことと、いただいた返答について説明した。
ここでは、それを自分の仕事に置き換えて、考えたことをお話しする。

その後、ジワジワと私が考えたことは
「ウチの人形、もう少し値上げすべきかもなぁ」ということだ。

一例として、トップの写真にしている、鳥の笛の人形を見ていだきたい。
モマ笛という、ふくろうの笛で、後ろに吹き口があり、吹くとホーと音がする。
当然しっ

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エルメスに学ぶ、価格の考え方#1

エルメスに学ぶ、価格の考え方#1

平成29年に「エルメスのてしごと」展というイベントが博多駅で行われた。

これはエルメスの様々なジャンルの職人の手仕事を目の前で見学しつつ、職人に質問などもできるというイベントだ。

もちろん私は、超高級エルメス一味など保有したことないし、今後も保有する予定(予算)はない。

しかし、世界有数の高付加価値ブランドのものづくりが直接見れて、質問もできるという機会は、滅多とない。

実際見に行って数年

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君の名は、僕の名は、

君の名は、僕の名は、

私は福岡県に住む29歳のおとこです。240年ほど続く津屋崎人形(つやざきにんぎょう)という人形屋で、長男として生まれました。

この人形は土人形で、見た目は素朴にした博多人形などをイメージしていただければ良いかと思います。

私の小さい頃は、人形屋の仕事はうまくいっておらず、その大変さを目の当たりしてきました
(母が夜中のパートを頑張ってくれて生活していました)。

なので、私は人形師以外の仕事を

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