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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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#国語

子どもたちの眼差し

子どもたちの眼差し

フェアトレードについての説明文を読む。小学三年生の国語としては、内容が高度である。そもそもそのテキストは塾用であるのは当然としても、かなりレベルが高い。
 
一度本文を私が朗読してから、「さあ解いてみよう」といくことが多いのだが、この内容はそのまま解かせるのは難しいと思った。答えが分からない、という心配ではない。言葉だけを探せば、解答欄に文字を埋めるのは、器用な子ならばかなりできるだろう。しかし、

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理科と国語についての呟き

理科と国語についての呟き

時代考証など徹底している点で、NHKのドラマは結構信頼がおける。もちろん完全であれと迫るつもりはないが、全国からチェックが入るので、かなり念入りにやっている努力は感じる。
 
だがそれでも、先般、引っかかってしまった。それは、月の形である。ようやく子どもが寝入って夜に夫婦で話をしているようなのだが、月の形からして、夜中の3時か4時くらいではないか、という月だった。夫婦で徹夜をしていたような情況では

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『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

教育産業に属するからには、教育の理想や公教育の難点などに、口出しするような立場ではないと自覚している。おまけに国語は、以前担当していなかった。それでも、「大村はま」という人の国語教育についての本には、触れないではおれなかった。わずかなものしか読んだことはないが、その信念というものには、圧倒されるものを感じていた。
 
もしかするとキリスト者ではないか。そう感じつつも、ご本人があまりそうした発言をし

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高校受験のための国語

高校受験のための国語

訳あって、昨2022年の後半から、中三生の国語を担当することとなった。もちろん経験はあるが、受験生にとり、受験間際に担当者が変わるというのは、不安になるのではないかと懸念された。私の配慮は、そこに置かれた。受験生の、メンタルヘルスである。
 
その上で、受験のテクニックを、存分に伝えなければならない。しかしこれもまた、ここまでやってきた彼らのやり方を否定して、このようにしろ、と命ずるわけにはゆかな

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齋藤亜矢『ルビンのツボ 芸術する体と心』より

齋藤亜矢『ルビンのツボ 芸術する体と心』より

何気なく迎えているつもりの朝だが、考えてみれば、目覚めるという保証はどこにもない。たぶん、目覚めるだろう。だが、睡眠中に命を失うケースもあると聞く。分からない。一寸先は闇とは思わないが、人間が決めてしまうことはできないのである。
 
「恐怖」という心的現象をもとに、それが「美」へとつながることを、芸術と感覚というテーマで記した人の文章が、中三生の模試に出題された。レベルの高い生徒たちのクラスのため

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読めていない・聞けていない

読めていない・聞けていない

トリセツなどという言い方が通用するようになったのは、いつ頃からだろう。西野カナの歌が広めたのは確かだが、私自身はもっと以前から使われていたような気がする。根拠は見つからないので、話半分に聞いて戴きたい。
 
取扱説明書。製造物責任法にも関係して、どんな商品にも説明書が付くようになった。危険性については特に、警告をしておかなければ、責任が問われることになる。ところでこうしたトリセツ、私たちは、しっか

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読点

読点

文章を書くのが上手でない人の特徴の一つは、読点が打てない点にある。小中学生の作文を見ると、言いたいことが整っており、スムーズに伝わってくるときには、概して自然な読点が打たれている。だが、風呂上がりにジャージを穿くように、足がひっかかりもっかかりとなるような印象で読む文章は、読点の打ち方がおかしいという場合が多い。頻繁に不自然にブレーキランプが点く車の後ろを走るとドキドキすることがあるが、読点は、走

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それはわたしのことだ

それはわたしのことだ

小学生の国語の授業で、ある文章を読み解くことがあった。小学校のクラスで、互いにプレゼント交換をすることになり、それぞれ手作りのものを提出し、皆に配った。先生は、それを心をこめてつくったものを受け取ることを学ぶ機会としたかったのだが、うち一人が、あまりに雑なものに下手な絵が施されているものを、「これはひどすぎます」と皆に見せた。すると、クラスの皆が大笑いをした。それを作った当人が発覚する場面が続くの

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作文は、たのしくかこう

作文は、たのしくかこう

国語の授業の一部で、時折「作文」のカリキュラムがある。いろいろ工夫を凝らした教材があって、それに沿って教えていけばよいシステムにはなっているのだが、通り一遍に教えてそれで終わりなどというふうに考えることは私はしない。
 
相手は小学校中学年以下。学校に入ったばかりの一年生はこれまた特別な技術を必要とするが、ここでは三年生と四年生のときのことを取り上げてみよう。
 
まず大きく板書する。「たのしくか

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『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

共通テストや35人学級というふうに大きく変化を見た昨今の教育界。さらに、2020年春からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校という、前代未聞の事態を経験して、教育の現場はどうなっているのか。一種の雑誌であるから、全体としてまとまりがあるわけではないが、多岐にわたる声が集められる。特別な主張を手を変え品を変え出してくるのではないが、編集の方針というものはあるだろうから、一定の方向性を保ちつつ

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