天満の裏通りにあるエスニック料理店は、昼下がりの穏やかな光に包まれていた。 店内はまだ閑散としていて、スパイスの香りだけが静かに漂っている。ビールを一口飲みなが…
9月の終わりに近づいたある日、職場近くのいつものバーが昼間にカレーを出していると聞いて、僕はその店に足を運んだ。 北区の静かな路地にひっそりと佇むそのバーは、夜に…
9月の昼下がり、僕は北浜のいつものスパイスカレー屋に足を運んでいた。 外の空気にはまだ夏の名残が漂っていて、湿気が肌にまとわりつく。 道を歩くと、緑が色あせ、木々…
京橋の夕方、夏の空はまだ薄明るく、空気には湿り気が残っている。 わたしはいつもの立ち飲み屋に足を運んで、のれんをくぐった。鼻をかすめる。カウンターに肘について、…
9月の昼下がり、大阪の空気はまだどこか夏の残り香を漂わせている。 オフィスを抜け出して、僕はいつものカレー屋に向かって歩いていた。 何も考えずに、ただ身体が勝手に…
店のドアを開けると、いつもと同じ香ばしいスパイスの香りが迎えてくれる。その香りに混ざって、ふっと潮の香りも感じられる。夏の名残がどこかに漂う昼下がり、大阪・北浜…
台風が来る日には、いつも独特の空気が漂う。風が窓を叩きつけ、雨が暴れまわる音が、僕の小さなアパートの壁越しに微かに響いてくる。世界が一時停止したような感じだ。外…
天満の小さな通りにあるその店に、僕はじっとりとした夏の空気をかき分けるようにして向かっていた。遠くで蝉が鳴いている。大阪の夏は、まるでカレーのスパイスのようにじ…
昼下がりのオフィス、外は相変わらずの猛暑だが、建物の中は冷房が効いていて快適だ。夏期休暇が終わり、いつもの仕事が始まったが、思ったよりもスムーズに過ごせている。…
暑い夏の日の正午、僕は職場の近くにある小さなバーに足を運んだ。仕事を忘れるために休暇を取ったはずだったが、結局、オフィスの薄暗い空間に戻ってきてしまった。そして…
真夏の京都、烏丸四条を歩いていた僕は、喧騒と蒸し暑さから逃れるようにして、ふと目に入った小さなカレー屋「Chamber」のドアを押し開けた。店名は、何か閉じられた空間…
灼熱の夏の昼下がり、僕は久しぶりに天満の小さなカレー屋「カルカッタ」へと足を運んでいた。路地裏にひっそりと佇むその店は、東インド・ベンガル地方のカレーを出すこと…
扇風機のゆるやかな回転音が、店内の静けさに溶け込んでいる。大阪市北区大淀中にあるこの小さなカレー屋は、昼下がりの暑さを忘れさせてくれる数少ない場所の一つだ。僕は…
北浜の街角に佇む、こじんまりとしたカレー屋に入ると、店内に広がる香りがまず僕を包み込む。香ばしいスパイスの匂いと、ほのかな甘さが混じり合い、汗ばむ夏の空気に溶け…
猛暑の日の午後、大阪の肥後橋を歩く。空気は重く、蝉の鳴き声が耳にこびりついて離れない。僕は、50代の独身建築設計士。ここ最近は仕事に没頭し、自分の周りのことなど何…
夏の日の午後、突然の夕立が降り始めた。軒先で雨宿りをする二人は、まるで世界から切り離された小さな島に漂着したような気分だった。50代の男性、彼の名は田中。バツイチ…
恋と建築、時々カレー。
2024年9月28日 22:19
天満の裏通りにあるエスニック料理店は、昼下がりの穏やかな光に包まれていた。 店内はまだ閑散としていて、スパイスの香りだけが静かに漂っている。ビールを一口飲みながら、彼女の顔をちらりと見た。「昼間からビールなんて、贅沢だよね。」彼女が笑みを浮かべる。その声には少し疲れが感じられたが、笑顔には以前の柔らかさが残っている。彼女はしばらく会社をお休みしていて、何ヶ月も連絡を取っていなかった。 それが今
2024年9月28日 20:17
9月の終わりに近づいたある日、職場近くのいつものバーが昼間にカレーを出していると聞いて、僕はその店に足を運んだ。 北区の静かな路地にひっそりと佇むそのバーは、夜にはコメディな音楽とともに客があふれているが、昼間の時間はどこか静寂が漂っていた。 柔らかな陽射しがカウンターに差し込み、木のテーブルや椅子が静かに時を刻んだ。「チキンとキーマのあいがけカレーをお願いします」と僕は注文し、席に着く。 店
2024年9月21日 20:55
9月の昼下がり、僕は北浜のいつものスパイスカレー屋に足を運んでいた。 外の空気にはまだ夏の名残が漂っていて、湿気が肌にまとわりつく。 道を歩くと、緑が色あせ、木々の葉も少しずつその緑色を手放していくのがわかる。 秋の入り口だ。 店の前に立ち、無意識に少し大きく息を吸い込んでから、僕はドアを押した。小さな店内にドアが開く音が響く。「いらっしゃいませ」店主の彼女が僕に気づき、にっこりと笑った。
2024年9月15日 18:24
京橋の夕方、夏の空はまだ薄明るく、空気には湿り気が残っている。 わたしはいつもの立ち飲み屋に足を運んで、のれんをくぐった。鼻をかすめる。カウンターに肘について、ハイボールを頼む。少し前から店の定番になっている「あてカレー」が目の前に置いてある。スパイスカレーではないが、シンプルで旨い。カレーを一口味わうと、ふと思い出。この店には何人の彼女と通ったことがあった。それぞれのタイプが違って、いつもふらり
2024年9月14日 20:58
9月の昼下がり、大阪の空気はまだどこか夏の残り香を漂わせている。 オフィスを抜け出して、僕はいつものカレー屋に向かって歩いていた。 何も考えずに、ただ身体が勝手にカレーを望んでいたような気がした。職場の近くの小さな店で、テーブルが数えるほどしかない。その店のカレーは、スパイスの加減がちょうどよく、昼休みには最適だった。ドアベルがチリンと鳴り、店内に入って、カウンターの奥で店主が黙って仕込みをし
2024年9月8日 22:34
店のドアを開けると、いつもと同じ香ばしいスパイスの香りが迎えてくれる。その香りに混ざって、ふっと潮の香りも感じられる。夏の名残がどこかに漂う昼下がり、大阪・北浜のこの小さなカレー屋で、僕は今日もカウンターの一角に腰を下ろす。外の暑さが少しずつ和らぎ、秋の足音が近づいているのを感じながら、冷えたお冷を一口飲んだ。「いらっしゃい。今日は特別なカレーを用意してますよ。」店主の彼女が、少し得意げな顔
2024年9月7日 19:56
台風が来る日には、いつも独特の空気が漂う。風が窓を叩きつけ、雨が暴れまわる音が、僕の小さなアパートの壁越しに微かに響いてくる。世界が一時停止したような感じだ。外には一歩も出られない。そんなとき、僕はバスマティライスの袋を取り出して、炊飯器にセットする。バスマティライスは細長く、どこか異国の風景を思わせる香りがある。日本米とは違う、その軽やかな食感と風味が、僕には心地よい。世間では米不足が囁かれ
2024年9月6日 23:26
天満の小さな通りにあるその店に、僕はじっとりとした夏の空気をかき分けるようにして向かっていた。遠くで蝉が鳴いている。大阪の夏は、まるでカレーのスパイスのようにじわじわと効いてくる。気温は35度を超えていたが、湿度のせいで体感はさらに高い。僕は額に滲んだ汗を袖で拭いながら、ふと足を止めた。そこに彼女がいた。白いシャツに鮮やかなイエローのエプロンをつけて、店先で僕を待っていた。彼女は僕を見つけると
2024年9月3日 22:23
昼下がりのオフィス、外は相変わらずの猛暑だが、建物の中は冷房が効いていて快適だ。夏期休暇が終わり、いつもの仕事が始まったが、思ったよりもスムーズに過ごせている。今日は久々にランチを外でとろうと決め、エレベータに乗り込んだ。行き先は、ビルの地下にあるインドカレーの店だ。エレベータが静かに地下へ降りていく。会社のビルの中にあるその店には、かつて頻繁に通っていたが、最近は少しご無沙汰だった。あのスパ
2024年8月27日 21:33
暑い夏の日の正午、僕は職場の近くにある小さなバーに足を運んだ。仕事を忘れるために休暇を取ったはずだったが、結局、オフィスの薄暗い空間に戻ってきてしまった。そして気づいたときには、いつものバーの木製ドアを押し開けていた。昼間の営業をしていることを知ったのは、ふとした偶然だった。暑さでアスファルトが揺らめく大阪の街、北区の喧騒から逃れるようにして、そのバーに辿り着いた。店内は薄暗く、涼しい。昼間の
2024年8月25日 09:33
真夏の京都、烏丸四条を歩いていた僕は、喧騒と蒸し暑さから逃れるようにして、ふと目に入った小さなカレー屋「Chamber」のドアを押し開けた。店名は、何か閉じられた空間を連想させた。まるで時間が止まったような空気が店内に漂っている。扉が閉まると同時に、外の蝉の鳴き声や車の騒音が、まるで絵画の中に閉じ込められたかのように消えた。中は薄暗く、木製のカウンターがひとつだけ。飾られているレゲエのポスター
2024年8月24日 14:09
灼熱の夏の昼下がり、僕は久しぶりに天満の小さなカレー屋「カルカッタ」へと足を運んでいた。路地裏にひっそりと佇むその店は、東インド・ベンガル地方のカレーを出すことで有名で、僕の行きつけの場所だった。ここ数年、仕事に追われ、訪れる機会がなかったけれど、今日はどうしてもあのスパイスの香りが恋しくなって足を運んだ。店の扉を開けると、ひんやりとした空気が僕を迎えてくれる。エアコンの効いた店内は、外の暑さ
2024年8月18日 21:42
扇風機のゆるやかな回転音が、店内の静けさに溶け込んでいる。大阪市北区大淀中にあるこの小さなカレー屋は、昼下がりの暑さを忘れさせてくれる数少ない場所の一つだ。僕はスパイスの香りが立ち上るカレー皿にスプーンを差し入れ、一口運ぶたびに過去の記憶が鮮明に蘇ってくる。最初に思い浮かんだのは、大学時代に出会った美咲だ。彼女は好奇心旺盛で、新しい料理や店を見つけると必ず僕を連れて行った。二人で訪れた下町のイ
2024年8月10日 12:48
北浜の街角に佇む、こじんまりとしたカレー屋に入ると、店内に広がる香りがまず僕を包み込む。香ばしいスパイスの匂いと、ほのかな甘さが混じり合い、汗ばむ夏の空気に溶け込んでいる。店内は木目調のテーブルが整然と並び、薄暗い照明が微かに床を照らしていた。静かで落ち着いた空間だ。ここで、僕はいつもカレーを食べる。決して豪華ではないが、心地よい居心地の良さが漂っている。「こんにちは、今日も暑いですね」カ
2024年8月3日 22:55
猛暑の日の午後、大阪の肥後橋を歩く。空気は重く、蝉の鳴き声が耳にこびりついて離れない。僕は、50代の独身建築設計士。ここ最近は仕事に没頭し、自分の周りのことなど何も考えずに過ごしていた。そんな日常が、ある日突然崩れることを、僕はまったく予想していなかった。その日、僕は偶然にも肥後橋の交差点で彼女に再会した。彼女は40代の独身女性、デザイナーだった。僕たちはかつて付き合っていたが、なぜか道が別れ
2024年7月27日 16:17
夏の日の午後、突然の夕立が降り始めた。軒先で雨宿りをする二人は、まるで世界から切り離された小さな島に漂着したような気分だった。50代の男性、彼の名は田中。バツイチで、不器用な性格をそのまま映し出すかのような髭とメガネ。30代の女性、彼女の名は美穂。彼女も小柄でおとなしい性格を象徴するかのような眼鏡をかけている。「雨、結構強いですね」と、美穂がぽつりとつぶやいた。田中は彼女の言葉に応えるように、