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焦らぬ時間とカレーとビール。

天満の裏通りにあるエスニック料理店は、昼下がりの穏やかな光に包まれていた。 店内はまだ閑散としていて、スパイスの香りだけが静かに漂っている。ビールを一口飲みながら、彼女の顔をちらりと見た。

「昼間からビールなんて、贅沢だよね。」彼女が笑みを浮かべる。その声には少し疲れが感じられたが、笑顔には以前の柔らかさが残っている。彼女はしばらく会社をお休みしていて、何ヶ月も連絡を取っていなかった。 それが今日、突然「ランチでもどうですか?」と連絡があった。 僕は驚きつつも、何かに引き寄せられるようにこの店に足を運んだ。

僕はビールのグラスを軽く揺らしながら、彼女の顔を見た。 彼女はひたすら美しいが、その瞳には以前の輝きがない。 彼女は慎重にスパイスカレーを一口食べ、「美味しい」と呟く。

「久しぶりだね、こうやって一緒にご飯食べるの。」そう言いながら、僕はカレーを口に運ぶ。

「うん、でもここはなんだか落ち着く場所だね。」

彼女は窓の外に目を向けた。外には天満の賑やかな通りが広がる、人々のざわめきや車の音、商店の呼び声が、どこか遠くから響いてくる。そのざわめきが、店内の静けさと対照的で不思議な空間を作り出している。

「天満って、こんな感じだったっけ?」彼女がぽつりと呟く。

「変わってないよ。ただ、ちょっと変わったんだけどさ。」

彼女は少し考えるように、

「会社には、もう戻れないかもしれない。」と、外を眺めながら、美しい横顔でゆっくりと言った。

「無理しなくていいよ。」僕はカレーの辛さを感じつつ、僕もまたゆっくりと静かに答えた。彼女の気持ちのをすべて理解できるわけではないが、焦らせたくないと思った。ただ、ここで一緒に過ごすことが今は大切に思えたのだ。

しばらく、僕らは黙ってカレーを食べた。 スパイスの刺激が心地よく、昼間のビールが微かに残っていた緊張感を少しずつ溶かしていく。 言葉は少なくても、その静けさが心に染み入るようだ。

「またここに来ようか。」 僕が提案すると、彼女はとても美しく微笑んだ。

ビールを一口飲み干しながら、僕はその瞬間が少しでも長く続くことを、心の中で願った。

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