船場センタービルのボン・ジョビ
夜の船場センタービルは、人通りが少なく静かだ。すれ違う人々の足音がエコーのように響き、どこか遠くから流れてくるジャズのメロディが、ビル全体に柔らかなリズムを刻んでいる。スパイスカレーの店「スパイスロード」の看板が、ネオンライトに照らされて、ほのかに揺れていた。
村上健二は、その看板を見つめていた。店の中には、カレーの香りが漂っている。ターメリック、クミン、コリアンダーのスパイスが混ざり合い、彼の記憶を呼び覚ます。その香りは、彼が大学時代に愛した女性、山本美由紀と一緒に訪れた