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#小説
『作品のリアリティについて』真実を知ることではなく、真実にゐようとする素朴な要求
この論文は昭和二十二年に発表された。福田は文学におけるリアリティとは何かを問う。
福田の考察は、ヨーロッパ十九世紀文学に始まり、ヨーロッパ二十世紀文学、日本の近代演劇、日本の私小説へと移っていく。が、この場では、ヨーロッパ十九世紀文学におけるリアリティの問題に話を絞りたい。
冒頭の引用。
文学におけるリアリズムという手法は十九世紀に興隆した。それは実証主義という科学の方法に基づいて誕生した
【閑話】巨大な峰々と案内人F
遠くに巨大な峰々が立ち並んでいる。
「あの右前方に聳えている山の名前はなんですか」
わたしは隣に並んで歩いている案内人に尋ねる。
「はい、あれはソポクレスと言います」
「ではその横に連なる山の名前はなんですか」
「はい、あれは手前から順にソクラテス、プラトン、アリストテレスです」
わたしはそれを聞きながら、顔を左の峰々に向ける。
「ではあちら側に見える、ひときわ大きな山は?」
案内人が答える