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ベンジャミン・クリッツァー著『モヤモヤする正義』まえがき
ネットを眺めたりテレビを見たり雑誌を読んだりしていると、「マイノリティばかり優遇されている」とか「フェミニストの横暴は目に余る」とかいった意見が目に入ってくる。「過剰なポリティカル・コレクトネス」は以前から騒がれていたし、最近ではキャンセル・カルチャーという言葉もすっかり定着した。こういった意見を言っている人たちは、だいたい以下のようなことを問題視しているようだ。
少数派ばかり配慮されて、多数派
とてつもない勇気と知性と愛に溢れた一冊だ|金田淳子——『フェミニスト、ゲームやってる』&『SF作家はこう考える』刊行記念イベントレジュメより
1.ゲームをフェミニズム批評することの困難
日本ではゲームについて、ビジュアルやシステム、ストーリーの良し悪しに関しては、早い時期から専門誌や個人のサイトなどで、頻繁に批評の対象にされてきた。しかしゲームから読み取れる思想的な良し悪し(特にジェンダーやセクシュアリティに関する思想)については、極端に批評が少ない。というよりバックラッシュのせいで批評を公にしづらい現状がある、と言わざるを得ないと
【新刊試し読み】『テヘランのすてきな女』はじめに|金井真紀
自分でもびっくりしている。こんなに早く原稿が書けるなんて。いつものサボり癖はどこへいった? 託された熱が冷めないうちに、急いで本にしなければ。その一心で書いた。ふだんはもっぱら刊行スケジュールを先延ばしする怠惰な著者なのに、今回わたしは担当編集の竹田純さんの胸ぐらをつかむ勢いで言ったのだ。「御社の刊行スケジュールは遅すぎる。もっと早められないのか」って。まったく自分が自分じゃないみたいだった。
【プロローグ】変人で偏屈なガキが、イソギンチャク道を志すまで【全文掲載】
まるで落雷のようだった。俺の頭に突如、インスピレーションの神様が
舞い降りた。
「そうだ、こいつを〝テンプライソギンチャク〟と名付けよう!」
あの日、眼前に流れた海の風景を、潮の香りを、疾走する電車の音を、
俺は生涯忘れねえ──。
世界的に有名なあのテンプライソギンチャク。
その命名は、非常にドラマチックな……
おっと危ねえ、いきなりこの本の核心部、タイトルまで回収しちまうところだった。世の中、
海外文学選書シリーズ「I am I am Iam」リーフレット配布店
晶文社では、新しい海外文学選書シリーズ「I am I am Iam」をスタートいたします。
刊行された年代を問わず質の高いものをピックアップし、広く長く読み継がれるシリーズを目指します。
装丁・ロゴデザインはシリーズを通して脇田あすかさんが担当します。
「手にとりにくい・堅い・難しそう」じゃない、初めて海外文学を手に取る方にもおすすめできる、新たな魅力をアピールします。
シリーズ刊行に先立ち、
「仕事と子育てを上手に回し、すべてを手に入れよう」に注意|5月24日発売『女性はなぜ男性より貧しいのか?』
どういうことがネオリベラル・フェミニズムなのか?
問題は、女性のリーダーやメンターというより、ネオリベラル・フェミニズムの言説がどういうものかを社会全体が認識していないことにある。
ネオリベラル・フェミニズムは、力をもつ者がジェンダー平等や女性のエンパワーメントといった言葉を表面的に捉え、同時に私たちの生活を形づくっている社会経済的、文化的な構造を否定する、巧妙なやり方なのだ。
では、どう
【たちよみ】稲葉振一郎『宇宙・動物・資本主義――稲葉振一郎対話集』より「あとがき」掲載
あとがき2000年代(ゼロ年代)、まだアラフォーの頃、『経済学という教養』(東洋経済新報社、2004年。ちくま文庫版、2008年)のスマッシュヒットで調子に乗っていた私は、対談・座談ベースでいくつかの本を作った(長谷川裕一さんへのインタビューを軸とした『オタクの遺伝子』(太田出版)、吉原直毅、松尾匡両氏との『マルクスの使いみち』(太田出版)、先ごろ物故した立岩真也氏との『所有と国家のゆくえ』(NH
もっとみる【さきよみ】近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』より「#01 かくして私は収奪と救出に失敗する/『ピクミン4』、やってみた」全文掲載!
かくして私は収奪と救出に失敗する
『ピクミン4』、やってみた ピクミンというあの植物みたいな生き物のことを知っている人は多くても、「ピクミン」というゲームをやったことがある、という人は意外に少ないのかもしれない。
実際のところ、「ピクミン」シリーズはピクミンの可愛さに惹かれてプレイするには、恐ろしいゲームだと私は思う。そこでは労働という行為がもたらす快楽と破壊が描かれている。
2023年に発売
【さきよみ】近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』より「はじめに」全文掲載!
なぜフェミニスト、ゲームやってる
ゲームとフェミニズムは相性が悪いのか?
「フェミニストがゲームをやってる」という話をすると、「え? フェミニストとゲーム? すごく取り合わせが悪そう」と言われる。
たしかに、そうかもしれない。ゲームは昔「ゲームボーイ」というゲーム機が発売されたくらい、当たり前のように【男の子】のものだった。2014年には「ゲーマーゲート事件」と呼ばれる、ゲームファンたちが女性