晶文社

東京・神保町にある、文学・芸術を中心とした書籍と各種学校案内書を発行する出版社です。犀…

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東京・神保町にある、文学・芸術を中心とした書籍と各種学校案内書を発行する出版社です。犀🦏のマークが目印です。

マガジン

  • 立ち読み・試し読み

    本のまえがき・あとがき・ぬきがき、イベントレポートやインタビュー記事など、ちょっと立ち止まって読んでみてください。

  • 60歳からのしゃる・うぃ・ダンス

    「60歳」は高齢者で、年寄りのイメージがある。けれども実際に60歳になってみると、少なくとも精神的には若い頃とそう変わらない。アメリカでは、60代でフルタイムの仕事から引退しても、仕事そのものは何らかの形で続ける人が多い。そしてみな新しいことを始める。60代を、第二の人生を始める素晴らしいタイミングだと捉えているのだ。「人生の後半に自分を幸せにする発想転換」を伝えるエッセイ!

  • 新刊・既刊・パブ情報

    新刊・既刊をとわず、書評や紹介の情報をアップします。

  • 書店様向け情報

    「この新刊は、こういう棚で平積みされてます」「刊行したのは前だけど、こんなきっかけで再ブームに」などなど。営業担当だからできる、晶文社本の総合案内。

  • ウェブ連載

    注目の書き手たちによるオリジナルのウェブ連載。

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はじめますので、ご挨拶

こんにちは、わたしたちは晶文社という出版社です。 創業から今年で60周年を迎えます。人文・思想や芸術、文学、ライフスタイル、働き方など、さまざまなジャンルで単行本を出版しています。『吉本隆明全集』も継続的に刊行中。学校案内や資格検定の書籍も手がけています。超ロングセラー『考える練習をしよう』(初版1985年)や『数の悪魔』(初版1998年)などでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。 目印は、渋みのある犀(サイ)のマーク。速足ではないけど、しっかりした足取りで。優れた書

    • 4刷決定記念!『ベル・ジャー』第一章全文公開(後編)

       わたしたちは、劇場へ向かう人たちの車の渋滞に身動きが取れなくなっていた。乗っていたタクシーは一台前のベッツィーたちが乗っているタクシーと、一台後ろのほかの女の子四人が乗ったタクシーに挟まれたまま、少しも動けずにいた。  ドリーンは美しかった。ストラップレスの白いレースのドレスをぴったりしたコルセットの上にジッパーを締め上げて着ていて、そのせいで体の真ん中がくびれて、その上も下の部分も見事なくらい膨らみ、薄くパウダーがはたかれた肌はブロンズ色に輝いていた。そして、まるで香水

      • 4刷決定記念!『ベル・ジャー』第一章全文公開(前編)

           奇妙で、蒸し暑い夏だった――その夏、ローゼンバーグ夫妻は電気椅子にかけられ、わたしは自分がニューヨークでなにをしているのかよくわからずにいた。  処刑に関してはなにも知らない。電気椅子にかけられると考えるだけで気分が悪くなるし、どの新聞にもそのことばかり書かれている――目を見張るような見出しが、通りを曲がり、かびやローストピーナッツの臭いが充満する地下鉄の入り口に差し掛かるたびに、じっとこちらを見ていた。  わたしとは関係のないことだけど、考えずにはいられなかった。生き

        • 02 アメリカの社交ダンスは高齢者大歓迎!

          前回でダンスを始めたきっかけを語ったが、私はいったんやると決めたらわりとすぐに行動に移すタイプである。というか、すぐに行動に移さないとやらない言い訳を作ってしまうので、自分にその暇を与えないようにしているのだ。 想像できる言い訳の代表的なものは「高齢者が社交ダンスを始めても、周囲と違い過ぎて浮いてしまうのでは?」とか「せっかく社交ダンスを習っても、踊る相手がいなかったら役立てる機会なんかないのでは?」というものだ。 まず私が子供の頃の「60歳」は立派な高齢者であり、肉体的

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        記事

          【さきよみ】村上寛『さよなら、産後うつ』より「はじめに」を公開!

          はじめに 初めまして。信州大学医学部周産期のこころの医学講座の村上寛と申します。 私は、信州大学医学部附属病院で妊産婦さんのメンタルヘルス専門外来「周産期のこころの外来」、そしてお父さんのメンタルヘルス専門外来「周産期の父親の外来」で、これまで本当にたくさんの妊産婦さんやお父さんとお会いしてきました。 「周産期」という言葉は、本来妊娠22週から出生後7日未満のことを指す用語ですが、妊産婦さんのメンタルヘルスにおける「周産期」は、妊娠前〜妊娠〜出産〜育児、あるいは流産死産

          【さきよみ】村上寛『さよなら、産後うつ』より「はじめに」を公開!

          ベンジャミン・クリッツァー著『モヤモヤする正義』まえがき

          ネットを眺めたりテレビを見たり雑誌を読んだりしていると、「マイノリティばかり優遇されている」とか「フェミニストの横暴は目に余る」とかいった意見が目に入ってくる。「過剰なポリティカル・コレクトネス」は以前から騒がれていたし、最近ではキャンセル・カルチャーという言葉もすっかり定着した。こういった意見を言っている人たちは、だいたい以下のようなことを問題視しているようだ。 少数派ばかり配慮されて、多数派の意見や利益が無視されている。 些細なことや昔のことで有名人が炎上し、大量の非

          ベンジャミン・クリッツァー著『モヤモヤする正義』まえがき

          私は「この私」を通じてしか世界を経験できない──柴崎友香さんと横道誠さんの対話

          「文学×当事者研究」の最前線に芥川賞作家が乗り出してきた!?【横道】 まず、私が柴崎さんを初めて認識した時がいつかという話をしたいんですけど。 【柴崎】 はい。 【横道】 2000年代にmixiっていうSNSが流行ったじゃないですか。そこでいろいろと面白い映画の情報を集めていたら、『きょうのできごと』を知って、レンタルショップで借りて観てみたんです。当時、私は京大の院生で、出町柳あたりとかもろに生活圏内でしたから、そのあたりを舞台にしたこの映画に親近感を抱きました。それで、

          私は「この私」を通じてしか世界を経験できない──柴崎友香さんと横道誠さんの対話

          60歳からのしゃる・うい・ ダンス 01「ひとりでムカついているよりも…踊ってしまえ」

          私が社交ダンスを始めたのは1年前の2023年1月13日。63歳の誕生日のちょうど2ヶ月前のことだ。 社交ダンスしていることを誰かに話すと、必ずといっていいほど「なぜ社交ダンスを始めたの?」と尋ねられる。そこには「なぜ社交ダンスを?」と「その歳になってからなぜ?」という2つの質問が含まれている。 動機を最初から説明すると長くなって飽きられるので、まずは「わがままになることを決意したんです」と答えることにしている。 日本で社交ダンス人口を増やしたことで知られる映画『Shal

          60歳からのしゃる・うい・ ダンス 01「ひとりでムカついているよりも…踊ってしまえ」

          とてつもない勇気と知性と愛に溢れた一冊だ|金田淳子——『フェミニスト、ゲームやってる』&『SF作家はこう考える』刊行記念イベントレジュメより

          1.ゲームをフェミニズム批評することの困難  日本ではゲームについて、ビジュアルやシステム、ストーリーの良し悪しに関しては、早い時期から専門誌や個人のサイトなどで、頻繁に批評の対象にされてきた。しかしゲームから読み取れる思想的な良し悪し(特にジェンダーやセクシュアリティに関する思想)については、極端に批評が少ない。というよりバックラッシュのせいで批評を公にしづらい現状がある、と言わざるを得ないと思う(私ごとであり、かつ昔の話ではあるが、現存人類以外の生命体が作り出す社会が描

          とてつもない勇気と知性と愛に溢れた一冊だ|金田淳子——『フェミニスト、ゲームやってる』&『SF作家はこう考える』刊行記念イベントレジュメより

          【新刊試し読み】『テヘランのすてきな女』はじめに|金井真紀

          自分でもびっくりしている。こんなに早く原稿が書けるなんて。いつものサボり癖はどこへいった? 託された熱が冷めないうちに、急いで本にしなければ。その一心で書いた。ふだんはもっぱら刊行スケジュールを先延ばしする怠惰な著者なのに、今回わたしは担当編集の竹田純さんの胸ぐらをつかむ勢いで言ったのだ。「御社の刊行スケジュールは遅すぎる。もっと早められないのか」って。まったく自分が自分じゃないみたいだった。 本書のはじまりは2022年の初夏にさかのぼる。ひさしぶりに会った竹田さんと駄話を

          【新刊試し読み】『テヘランのすてきな女』はじめに|金井真紀

          【プロローグ】変人で偏屈なガキが、イソギンチャク道を志すまで【全文掲載】

          まるで落雷のようだった。俺の頭に突如、インスピレーションの神様が 舞い降りた。 「そうだ、こいつを〝テンプライソギンチャク〟と名付けよう!」 あの日、眼前に流れた海の風景を、潮の香りを、疾走する電車の音を、 俺は生涯忘れねえ──。 世界的に有名なあのテンプライソギンチャク。 その命名は、非常にドラマチックな…… おっと危ねえ、いきなりこの本の核心部、タイトルまで回収しちまうところだった。世の中、美味しいものはしばらくあとで、と相場が決まっている。第一、読者の皆様は、俺のこと

          【プロローグ】変人で偏屈なガキが、イソギンチャク道を志すまで【全文掲載】

          【さきよみ】菊池良『えほん思考』より「はじめに」全文掲載!

          はじめにこの本はとても奇妙な本です。絵本からイノベーションを学ぶことがその主題です。 思考法やアイデア術を紹介した本はさまざまありますが、多くは事例の要素を分解し、そこから導き出せるものを分析します。たいていは複雑な要素が絡まり合い、その「核」は見えづらいです。しかし、この本は「核」そのものから学ぶという趣向になっています。そして、その題材として絵本を取り上げます。なぜ絵本なのか? 実は私たちは思考法のすべてを幼いころに学んでいるのです。そう、絵本というものを通して。 絵

          【さきよみ】菊池良『えほん思考』より「はじめに」全文掲載!

          海外文学選書シリーズ「I am I am Iam」リーフレット配布店

          晶文社では、新しい海外文学選書シリーズ「I am I am Iam」をスタートいたします。 刊行された年代を問わず質の高いものをピックアップし、広く長く読み継がれるシリーズを目指します。 装丁・ロゴデザインはシリーズを通して脇田あすかさんが担当します。 「手にとりにくい・堅い・難しそう」じゃない、初めて海外文学を手に取る方にもおすすめできる、新たな魅力をアピールします。 シリーズ刊行に先立ち、リーフレットを配布しておりますので、ぜひお読みください。配布店は順次更新していき

          海外文学選書シリーズ「I am I am Iam」リーフレット配布店

          「仕事と子育てを上手に回し、すべてを手に入れよう」に注意|5月24日発売『女性はなぜ男性より貧しいのか?』

          どういうことがネオリベラル・フェミニズムなのか?  問題は、女性のリーダーやメンターというより、ネオリベラル・フェミニズムの言説がどういうものかを社会全体が認識していないことにある。  ネオリベラル・フェミニズムは、力をもつ者がジェンダー平等や女性のエンパワーメントといった言葉を表面的に捉え、同時に私たちの生活を形づくっている社会経済的、文化的な構造を否定する、巧妙なやり方なのだ。  では、どういうことがネオリベラル・フェミニズムなのだろう? 以下に、核となっている考え方を

          「仕事と子育てを上手に回し、すべてを手に入れよう」に注意|5月24日発売『女性はなぜ男性より貧しいのか?』

          【たちよみ】稲葉振一郎『宇宙・動物・資本主義――稲葉振一郎対話集』より「あとがき」掲載

          あとがき2000年代(ゼロ年代)、まだアラフォーの頃、『経済学という教養』(東洋経済新報社、2004年。ちくま文庫版、2008年)のスマッシュヒットで調子に乗っていた私は、対談・座談ベースでいくつかの本を作った(長谷川裕一さんへのインタビューを軸とした『オタクの遺伝子』(太田出版)、吉原直毅、松尾匡両氏との『マルクスの使いみち』(太田出版)、先ごろ物故した立岩真也氏との『所有と国家のゆくえ』(NHK出版))が、2010〜11年の勤務先での役職者への就任以降、この手の企画は控え

          【たちよみ】稲葉振一郎『宇宙・動物・資本主義――稲葉振一郎対話集』より「あとがき」掲載

          【さきよみ・あとがき】尾久守侑『倫理的なサイコパス――ある精神科医の思索』より「あとがき」掲載!

          あとがき   いつの間にか精神科医になっていた。もちろん記憶がないわけではない。医学部を受験したことも覚えているし、医師国家試験を受験したことも覚えている。研修医のときは忙しかったからかやや記憶が薄れているが、それでもちゃんと脳内に残っている。私は精神科医になりたいと思って精神科医になった、はずであった。  しかし、こんな仕事だとは正直思っていなかったところはある。現場は怖い。大袈裟な言い方かもしれないが、傷ついた人がやってきて、その人に何らかの施しを身一つでしなければなら

          【さきよみ・あとがき】尾久守侑『倫理的なサイコパス――ある精神科医の思索』より「あとがき」掲載!