立ち読み『香川にモスクができるまで──在日ムスリム奮闘記』プロローグ
プロローグ
「香川県にモスクをつくろうとしているインドネシア人がいる。その男は、溶接工で、長渕剛が好きらしい」
その噂を聞いた私は、背後のヘッドライトに煽られながら、車で香川県のX市に向かった。
2019年3月某日の夜7時。私はその男と会うために、瀬戸内海に面した工場地帯を抜け、やがて住宅団地の神社の駐車場にたどり着いた。モスクがイスラム教の集団礼拝所だとは知っていたが、タイル張りの細密画で装飾された宗教施設という印象が強く、あのような建造物が香川県の地方都市にできること