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本のことを書いたノートをまとめています。
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20冊目―田中泰延『読みたいことを、書けばいい。』

20冊目―田中泰延『読みたいことを、書けばいい。』

台風19号が上陸、いよいよ本格的な台風模様になってきた東京郊外です。

南の島の「台風銀座」といわれるエリアの育ちであるので、台風は子どものころから慣れたところであって、安全確保のための島民の知恵―「外に出ない」は金科玉条として身に染みているところでもあるけれども、気圧950を切るっていうのはなかなかの勢力であるのでなんとなく緊張感もわいてきたところであって。

一方で予定外に仕事が休みになって明

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19冊目-津村記久子『ポトスライムの舟』

19冊目-津村記久子『ポトスライムの舟』

父の実家は造園業をやっていたのだけれど、僕はといえば植物のことにはとんと疎いままこの歳になってしまって。

この本のタイトルになっているポトスライムも実は読むまで「スライム」が語幹なのだと思っていたような具合であって、ああそうかライムか、そりゃそうか、アホなオレ、と思ったりもするのだけれど、「あは、スライムか、それもええなあ」という津村さんのやさしい声が聞こえてきそうな、そんな静かな、小さな、ゆる

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18冊目―『公教育をイチから考えよう』

18冊目―『公教育をイチから考えよう』

週に2日だけ、学習塾で講師の仕事をしています。

5足のわらじのうちの1足なわけですが、これが大手の進学塾であるので思想的には「学歴至上主義」がぎゅっと濃縮されたような空間で、個人的にはまったく相容れないところがあって。

生活の要請から始めた仕事であって週にたった10時間程度のことなのだから割り切ったらよいのだけれど、どうもそのあたりが器用に生きられない悲しい性分。

今回は、そこでオルグされぬ

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17冊目ー『切りとれ、あの祈る手を』

17冊目ー『切りとれ、あの祈る手を』

ハフィントンポストにnoteについての記事が出てましたね。

なぜ「note」には、記事のランキングがないのか? 代表の加藤貞顕さんが目指す“ネットで安心して書き続けられる場所作り”

語られている「心地よい“街づくり”」というマインドは、利用者として安心を感じられる表現で、好感をもちました。

《続けて(発信して)いる人の特徴を見ていると、コンテンツを通じて仲間ができているんですよね。見てもらっ

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16冊目-『とにかくうちに帰ります』

16冊目-『とにかくうちに帰ります』

なんてことだろう。

「3週連続の投稿すごい!」と全然すごくないことをnoteに褒めてもらってから、今度は3週の空白のときが過ぎてしまった。

もう「令和界隈」のことも時機を逸してしまっているでしょう。
干支とか、一世代ということとか、天皇という存在のこととか、考えていたことはあったのだけど。

来月の改元本番のときに持ち越すことにしましょう。
むろん、そんなもったいぶるような立派な内容なわけない

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15冊目-『82年生まれ、キム・ジヨン』

15冊目-『82年生まれ、キム・ジヨン』

めずらしく話題の本。

話題になってるということと、「女性」がテーマであることだけは知っていたものの、実はなぜかノンフィクションかエッセイかだと思い込んでいて、手に取って初めて小説だと知ったりして。

韓国で2016年の秋に発行されてから100万部を超えるベストセラーになっているという本書。訳者あとがきによれば著者のチョ・ナムジュは「フェミニスト作家と呼ばれることを自然に受け止めており、今後もその

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14冊目-『コーチングの教科書』

14冊目-『コーチングの教科書』

普段はほとんど読まないビジネス書の類。

何か特別に理由やトラウマがあるわけでもないのだけれど、タイトルを眺めるだけでもそこに漂うマッチョな「みなぎり」に胸やけを起こしそうになったりするので、本屋に行ってもそのエリアにさえ寄り付かなかったのだけれども、去年の秋ごろから苦手克服に取り組んでいて。

それは仕事上の都合に加えて、自意識で凝り固まった食わず嫌いをなくしていくのも、リキまない大人へのステッ

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8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(後編)

8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(後編)

2月の「宗教本強化月間」の記録を綴る三部作の、ラスト3本目。

1本目で『アルケミスト』の始まりの地であるスペイン・アンダルシアから、聖書の舞台である中東世界へ、そして2本目でそこからダライ・ラマの故郷であるチベットを経由して、ブッダの言葉に近づくべくインドまでやってきました。

最後はブッダの語った「無我」の意味を追って、日本への伝来の道を辿ります。

公方俊良『般若心経90の智恵―276文字

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8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(中編)

8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(中編)

神と「罰」2月の「宗教本強化月間」の記録を綴る三部作の、2本目。

1本目、パウロ・コエーリョの『アルケミスト』を読む途中で改めて聖書を勉強してみたっていうことを書いたのだけど、そのなかで気になったのは、聖書の、特に旧約の神の、「罰」についてで。

たとえば有名なところでは「ノアの方舟」。欲情に支配され堕落した人々に失望した神は、ノアの一族を除いて、残りの生き物を滅ぼすことを決める。
さらっと書い

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8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(前編)

8~13冊目-ユーラシア横断宗教本の旅~『アルケミスト』から『親鸞と道元』まで(前編)

なんだか一気に「冊数」の数字を稼ぎにいったみたいなタイトルなのだけど、さにあらず。

2月は思いがけず「宗教本強化月間」となったのでその記録をつけておこうと思ったところが、全部バラバラにするにはもったいない感じの連関性だったので、まとめてみたというわけ。

そして後から気づいたのだけど、この一連の読書がヨーロッパの西端からアジアの東端つまり日本までの「旅」のような軌跡になっていたという発見があり、

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7冊目-『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

7冊目-『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

本を読み終えてから、「ああ、あれにも書いてあったことと関係ある話だ」と思ったりするのはままあることで、今回もそんな話なのだけど。

平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(2012,講談社現代新書)



津村記久子・深澤真紀『ダメをみがく "女子"の呪いを解く方法』(2013,紀伊國屋書店)

について。

『ダメをみがく』についてはこのマガジンの2冊目でも書いたことがあって、今回は

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6冊目-『仕事なんか生きがいにするな』

6冊目-『仕事なんか生きがいにするな』

友人に借りた本。

お互いに「マーカー可」のルールのもと本を貸し借りできる大変ありがたい存在なのだけど、これもビシビシ線を引いたうえ、たぶん保管用に自分でも購入するだろうと思われる。

だったら人のもの汚さなくてもよかったじゃないかという話ではあるのだけれど。

大変ありがたい存在である。。

『仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える』泉谷閑示,2017,幻冬舎新書まず初めに、この本は

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5冊目-『世界が土曜の夜の夢なら』

5冊目-『世界が土曜の夜の夢なら』

年末に引っ越してきた町は、割と「治安の悪さ」や「ヤンキー」のイメージが強いエリアで。

私自身はさほど気にしておらず、町を歩いても家族連れが多かったり、やたらクーポン券を配っていたり、「生活感」という印象のほうが強かったのだけど、フードコートで3分ほど席を外した間に財布から数千円を抜き取られていたことに後から気づいたときは、「この町の洗礼か…」と思ったりもして。

まあ、鞄ごと置きっぱなしにした自

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4冊目ー『ミルクと日本人』

4冊目ー『ミルクと日本人』

このごろ牛乳を飲むことはめっきり少なくなったのだけど、たぶん多くの人と同じように、子どものころは毎日の学校給食で当然のように飲んでいて。

味覚的な食べ合わせは無視されて有無を言わさず毎日でてくる牛乳を、当然のようには飲めない隣の席の子の分までがぶがぶ飲んだり、また隣の友だちとどちらが速く飲めるか競争したり、最中にぶちまけて先生に怒られたり、結果的にお腹がゆるくなって地獄の昼休みを過ごしたり、さま

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