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#12 君が僕の名前を呼ぶから
僕の記憶は全て嘘だった。
なにもかもが偽憶だった。
でも、全てが愛に溢れていた。
愛にも哀にも溢れていた。
彼女がユキが遺したものは
あまりにも大き過ぎた。
永くて甘い夢をずっと見ていた。
何で死んだんだ。
死ぬ必要なんてなかった。
どこにもなかった。
でも彼女なりにきっと後悔とか
たくさんしたんだろう。
僕はこの記憶にずっと埋め尽くされて
いたかった。
目を覚ますと思ってた。ギリギリ
#11メルティラヴァー
放り込んだ薬みたいに。
珈琲に溶け込む砂糖みたいに。
掌に触れた雪みたいに。
甘く深くあんなに交わったのに離れていく。
恋も愛も融解していく。
遅かれ早かれこうなる日がくることはわかっていた。
最初は妄想話をしていると勘違いされた。至極当然の反応だ。
「なんかの小説の話?読書なんてするっけ?」
そんな言葉が返ってきた。
確かな傷みが胸に去来する。
私は嘘に嘘を重ね続けた。
物語を演じ続け
#10 One Last Kiss
私が物語の主人公だとしたら
この人生という物語はどう終わるのだろう。
先が見えない。
窓際に飾った花の開いたはずの蕾は閉じるともなく宛を探していているように見えた。
「ユキ、ユキ、聞いてる?」
「あ、ごめん、ぼっーとしてた。どうしたの?」
「いや最近雨続きで頭痛くないかなって。」
「私は毎日なんとなくで風邪薬飲んでるから平気だよ?ライムきつい?」
「風邪引いてないのに飲んでいいものなの?
言わなくちゃ伝わらない時の方がきっと多くて#07
彼の携帯を鳴らす。
いつもの嘘をつく。
またかよーって彼は笑って受け入れてくれる。
誰にも等しい約束された明日はない。
私達にはそれは余計になかった。
発作や発病、もし来れば、近くに
互いが認められないとなると、
事故みたいな形での終わりが来ることが
予想される。
ライムの場合は自殺率なんておかしな言葉を
使ってみると常人の20倍くらいだろう。
私の場合は20-40倍とかになるのかもしれない。
常識と良識と病識と夢の季節#06
統合失調症の疑い。そう記された書類を見てから
気がつけば僕には病名が付けられていた。
統合失調感情障害。
僕は恥ずかしい事にそれまで精神病なる病気の概念も
何もかも知らなかった。
それからネットで調べたり、誰が何年にこの概念を発見し、なんて知らなくてもいいような事まで頭に叩き込んだ。やれと言われていたらここまでやらなかっただろう。
ユキのサポートもなかったら、関連疾患についてまで知れば知るほどに
36.7℃の心が傍にあるから#04
昏睡から目覚めてから
世界を憎んで呪っているそんな自分に初めて出会った。
その時の気分は、ちゃんと黒い自分が
存在したんだな。という、不思議な感想。
雪みたいに融けちゃいそう。
雲みたいに掴めない。
そんなふうに言われることがよくあった。
目を覚ましてから、次第に深まる家族の溝は
思えば僕がどんどん掘っていってしまったものだった。
なのに僕は周囲のせいにしていた。
話を聞いてなかったあいつが悪い、
夜のコンビニとキミとホットサングリア#03
「なーにしてんの?」
突然、声が飛んでくる。
「どなたですか?」
「そんなに畏まらなくても、焼いて食べたりしないよ?」
「それは解りますけど。」
「地球最後の人類です、みたいな難しい顔してコンビニの前で30分以上も煙草吸って、何考えてるの?ブラックホールの在り処について?フェルマーの最終定理について?クオリアの証明について?夜空にホワイトホールでも探してた?私からすると、あなたはそれ以上の
泣きたかった泣きたかったでもそれより、笑いたかった#01
あなたの笑顔がみたい、好きなんだ。
そんなこと言うなら、笑顔にしてくれよ、と思う。
首を縦に振って相槌されてるだけなら、ししおどしにでも頼むよ。
まだそっちに振った方が無駄な飲食費を遣わずに済む。
労働力に見合ってないような対価の一部を捻出してることを
この人はきっと知らない。
同席してる人もこんな会話の流れになるとは思ってなかったかも
知れない。僕もこんな話はするつもりなかった。
でも、悩みとい