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等身大エッセイ

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【わたしのエッセイマガジン】 生活の中で思ったことや思い出を、等身大の今、ありのままに書いていきます。喜びも憂いも綴ります。
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記事一覧

手紙 - SSB写真展「静岡と私」メンバーへの想いを綴る

手紙 - SSB写真展「静岡と私」メンバーへの想いを綴る

 Shizuoka ShutterBugs(SSB)は、昨年6月に発足した静岡の写真コミュニティである。わたしは運営として、微力ながら携わっている。

 この度、2024年3月14日から3月19日まで、SSBグループ写真展を開催した。
 場所は、静岡市にあるギャラリー青い麦。テーマは「静岡と私」。コミュニティに所属している12人が、写真展メンバーとして集まった。最初に述べるが、最高のメンバーである

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「月が綺麗ですね」とあなたに言ったから

「月が綺麗ですね」とあなたに言ったから


写真が結ぶふたりの縁

 彼は、わたしの先輩。静かで穏やかなひとだ。どんなひとにも、優しくて丁寧である。わたしは、”いつかこんな先輩になれたらいいな”と、心から思っていた。

 そして、いつしか彼を目で追いかけている自分がいた。
 寡黙な彼と、人見知りのわたし。互いに、業務連絡以外では話さない。憧れの先輩を、そっと眺めていたい。それ以上、望んでいなかった。



 そんなふたりが、雑談話をする

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神経性疼痛記録│忘れゆく生き物として書くエッセイ

神経性疼痛記録│忘れゆく生き物として書くエッセイ

 あの朝、春先に亡くなった愛猫・クロの鳴き声が聞こえた。「アーオ!」それは、何か要求があったり、なんとなくつまらなかったり、わたしたちを呼びつけるときに出す声だった。

 その声が、耳の中ではっきりと聞こえた。
 一説によると、人間は、聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚の順で記憶が薄れていくそうだ。

 ふと、あれだけ愛していたクロの声が、記憶から離れているのに気がついた。だから、またその声が聞こえて嬉

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祈り - ペットロスと向き合う

祈り - ペットロスと向き合う

はじめに現代社会における人間と動物との関係

 現在の日本は、15歳未満の子どもの数よりも、推定犬猫総飼育数の方が多いようです。2022年の統計では、推定犬猫総飼育数は約1589万頭、15歳未満の子どもの数は1450万3000人となっています。
 実際には、犬猫だけではなく、兎・鳥・ハムスター・両生類や爬虫類など、飼育される種は多岐にわたっています。

 元来、犬は狩猟目的で飼育されていました。今

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桜の季節に君を想う - 愛猫クロと我が家の物語

桜の季節に君を想う - 愛猫クロと我が家の物語

 わたしの左腕に首を乗せ、身体をくっつけて眠っている。息をするたびに動く背中を、そっと撫でる。ごつごつした背骨。一方、毛並みは艶やかで、まるでシルクのようだ。
「クロちゃん、大丈夫だよ。姉ちゃんここにいるからね」
 そっと耳元で囁く。しばらくすると、荒い息が寝息に変わった。時折、身体をビクッとさせている。夢でも見ているのかな。最近、あまり眠れていなかったもんね。
「姉ちゃん、ここにいるから、大丈夫

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ナミブ砂漠 72時間観察記

ナミブ砂漠 72時間観察記

 癒しがほしい!!
 1日の終わり、鉛のような身体をひきずり、家に帰る。シャワーを浴びて、夕食を用意し、食卓につく。

「今日も疲れたね」と言葉を交わし、わたしはテレビをつけた。

 流れるバラエティ番組。その煌びやかさは、今はただのノイズだ。録りためたドラマの録画。それさえ見る気力がない。かといって、静寂も物足りない。

 とにかく、頭をからっぽにしたい。

 そんなときに出逢ったのが、YouT

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小さな故郷への思い

小さな故郷への思い

 “電車着いたら教えて。迎えに行くよ”
 わたしは、そのメッセージに、“歩いて帰るから大丈夫”と返した。



 まだ16時前だというのに、陽は西に傾いていた。

 電車は進む。まばらな乗客を乗せて。
 澄んだ茜空。車窓から見える富士山。山頂は赤く染まり、淡いグラデーションに身を包まれている。車内には、冬の淡光が乱反射していた。

 向かいのご婦人が、流れる景色をじっと眺めていた。静かで美しい時

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Answer note│ふたりの想いを写真にのせて

Answer note│ふたりの想いを写真にのせて

 この記事は、わたしの友人・たろちゃんが書いてくれたnoteに対するお返事エッセイになります。ぜひ、たろちゃんのnoteと併せてお読みください!

2021年11月23日

 アラームが鳴り、飛び起きた。目覚めは最高だ。その爽快さは、交感神経が優位になっている証であった。
 カーテンを開けると、青空が広がっていた。昨夜の雨は無事通り過ぎたようだ。

 約束1時間前、わたしの身支度は済んだ。
 機材

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秋、よもすがら

秋、よもすがら

 右手が痺れて、半年が経つ。

 右手の痺れは、2022年の冬に始まり、春先に軽快した。

 しかし今度は、入れ替わりのように、右足、左手の順に痺れた。これほど、あちこちの末梢神経の痺れに見舞われることは初めてで、戸惑いが隠せない。しかし、どうすることもできない日々が続いた。

 季節は春から夏になり、秋へと移ろう。

 結局、この半年間ずっと、どこかしらの痺れに見舞われている。原因はいまだにわか

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金継ぎ

金継ぎ

「今日も、顔が見られて良かったよ。」
 先生は、静かにそう言った。

 放課後の保健室。カーテンから漏れる淡い金色の光。わたしは、ソファに沈みこむ。天井を見上げ、ため息とともに、目を伏せる。

 先生は、言葉を続ける。

「今すごく大変だよね。皆が皆、経験することじゃないと思う。」

 伏せた目を上げることができない。

「だけど、きっと乗り越えられる。そしてね。この経験を糧に、将来誰かのつらい思

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Comodo|あなたの写真への思い、共有しませんか。

Comodo|あなたの写真への思い、共有しませんか。

 
 あなたは、覚えているだろうか。
 写真を趣味にしたいと思ったきっかけを。

 大好きなパートナーの笑顔が撮りたい。子供の成長を記録したい。可愛いペットの写真が撮りたい。旅先での思い出を残したい。絶景を撮ってみたい。
 写真を撮ることで、何気ない日常を大切にしたい。明確に撮りたいものはないけれど、新しい趣味が欲しい。

 「わたしは写真が趣味です!」
 カメラを手にしているひとの数だけ、写真へ

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写ルンです - 今のわたしに、撮れるもの。

写ルンです - 今のわたしに、撮れるもの。

 手にしたのは、”写ルンです”。
 わたしは、写真が撮りたいのだ。

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 右肘が痛み、薬指と小指が痺れ、かれこれ2週間が経った。

 わたしは、生まれつき肘のつくりが良くないらしい。そのおかげで、些細なことが原因で、肘を走行する神経を痛めやすい。5年前に手術し、経過は順調であったが、この度また同じ症状が出てしまった。
 主治医に診てもらうと「手術した場所

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さよなら、イシバシプラザ。

さよなら、イシバシプラザ。

 静岡県沼津市にある"イシバシプラザ”。北側にイトーヨーカドー沼津店、南側には専門店街が広がる大型商業施設だ。1978年7月開業、43年の歴史である。
 食料品、衣料品、雑貨などが多数揃い、地域生活に密着した存在となっている。

 イシバシプラザは、わたしたち家族にとっても、生活の一部であった。

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 日曜日は、父と母とイシバシプラザ。運転手は父。
 店

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