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感傷だけが発達した、通称「おセンチさん」による「書評にかこつけた自分語り」。Insta…

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感傷だけが発達した、通称「おセンチさん」による「書評にかこつけた自分語り」。Instagramの投稿の中から特に人気のあったものを紹介していきます。 Instagramはこちら⏬ https://www.instagram.com/osenti_keizo_lovinson

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司馬遼太郎さんの『最後の伊賀者』を読んで、僕が読書をする一番の理由は、「思ってもみなかった自分の感情」が、本を読むことに…

趣味は何ですか?と聞かれるとき、僕は「読書です」とは決して言わないようにしている。  何故なら、「趣味は読書」と聞いて、たいていの人は僕が味わっている「この…

小川洋子さんの『ホテル・アイリス』を読んで、なんの役にも立たない、誰一人救うこともない、共感も感動も興奮も呼び起こさない…

読み終えてすぐ、また最初のページに戻って読み返そうとして、ふと、この物語は、僕が読み終えると同時に消え去ってしまい、ページを開き直しても、すべてがもう跡形もなく…

早瀬耕さんの『彼女の知らない空』を読んで、僕はあの時この作品を読んでいたら退職願を出さないでよかったのだろうか、と自分に…

読み終えてしばらくした今も「自分の正義に忠実でいる」というのは、どういうことなんだろうと考えている。 生きていく中で、分かりやすく「自分の正義」が試されるのは、…

中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』を読んで、愛する人を悲しませてまで飲んでしまう酒というのは、いったいなんなのかと思…

「なぜそんなに飲むのだ」 「忘れるためさ」 「なにを忘れたいのだ」 「……。忘れたよ、そんなことは」 (古代エジプトの小話) 初めて読んだのが高校3年のときで、読後…

朝倉かすみさんの『たそがれどきに見つけたもの』を読んで、本当のリアルは物語の中にはなく、小説はいつだってフィクションだか…

去年『平場の月』を読んでpostしたときのキャプションを読み返してみる。 いわゆる「30になっても、40になっても、俺、中学生くらいから全然考えてることとか変わらない」…

遠田潤子さんの『廃墟の白墨』を読んで、様々な伏線を回収した末に訪れる哀しくやるせないラストシーンで、この物語の本当の主人…

淫乱で尻軽でだらしない最低の女とその娘、そして、そんな母娘を汚しながらも愛し守ろうとした四人の男たちが共に暮らした「王国」で起こった悲劇を描いた物語だ。 救われ…

山内マリコさんの『選んだ孤独はよい孤独』を読んで、「後悔ばかりの人生に後悔はない」というアイロニーを語るには、このくらい…

 「じゃあ、お父さんは自分の人生に後悔はないの?」  先日、長男を諭している最中に彼が放った言葉が今でも頭の中を駆け巡っている。  横で聞いていた妻が堪ら…

江國香織さんの『ウエハースの椅子』を読んで、恋人との間の「狭い世界」に閉じ込められている、と感じた、過去の恋愛を思い出し…

物語の中で主人公は何度も、恋人との関係を「閉じ込められてしまう」という言葉で表現する。 たとえば、 私は恋人以外の男性に興味がないが、恋人と生きようとすれば、閉…

江國香織さんの『東京タワー』を読んで、本当にめんどくさいのは、「恋愛の真っ只中にいた自分自身」だったじゃないか、と思い出…

嗚呼、そうだった、女の人って、こんな感じにめんどくさい生き物だった。 と思ったそばから、 いや、違うか、めんどくさいのは「恋愛」そのものだったっけな。 と思い直…

岡田利規さんの『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を読んで、夜の街で知り合った男女が渋谷のラブホでセックスしまくる…

Instagramのフォロワーさんのpostで久しぶりにタイトルを目にして、あまりにも特別な多くの感情が沸き起こってきたため、それがなんでなのかを知りたくて再読してみました…

桜井鈴茂さんの『冬の旅』を読んで、会社員だってロックンローラーなんだよってことは、会社員にならなければ、分からなかったと…

. .  あんたは変われるのかい?  ·······どうかな。  世の中のほうには期待できないよ  そうだろうな。  だったら折り合いの悪さをそのまんま受…

川上未映子さんの『あこがれ』を読んで、小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリッ…

読み終わって、ふと、小中9年間ずっと片想いしてた、同じ団地に住んでいた幼なじみを思い出した。 あれが本当に「恋」だったのかは、今となってはかなりあやしい。 でも…

桜井鈴茂さんの『女たち』を読んで、これは、女、ではなく、女たち、について書かれた、日本で最も優れた短編小説のひとつだ、と…

そっか。なにせ古い話だもんな。 うん。古い話。そう言うナオの瞳は、しかしながらノスタルジックな光を帯びていた。 (桜井鈴茂『女たち』より) 「ねえ、私たち、付き合…

最果タヒさんの『星か獣になる季節』を読んで、毎日無邪気に笑いかけてくれる雇い主の奥さんに叶わぬ恋心を抱きながら何もできな…

あの頃の君は、「あいつ」のことがずっと忘れられないみたいで、けいぞうと付き合えば忘れられると思ったけど、やっぱり忘れられないの、けいぞう、ごめん、って、何度泣か…

桜井鈴茂さんの『どうしてこんなところに』を読んで、これは、自分はできそこないのこの世界で人生のどん詰まりを生きていると、…

本書は、東京で妻を殺めた主人公が、新潟へ逃亡し、東北、函館、仙台、四国、西成、小倉、沖縄と全国各地をさまよい続けた二年四ヶ月を描いたクライム・ロードノヴェルだ。…

桜井鈴茂さんの『アレルヤ』を読んで、もて余した感傷のやり場に困って、さっきからずっとtetoraというバンドの「知らん顔」とい…

あ、いや、その、だから、あれだ。 バー・アラバマ、というところで、あれ?って思ったわけで。 でも、そのときに気づけば良かった。 これって、あれじゃん、『できそこ…

司馬遼太郎さんの『最後の伊賀者』を読んで、僕が読書をする一番の理由は、「思ってもみなかった自分の感情」が、本を読むことによって喚起されることなんじゃないかなということを考えた。

司馬遼太郎さんの『最後の伊賀者』を読んで、僕が読書をする一番の理由は、「思ってもみなかった自分の感情」が、本を読むことによって喚起されることなんじゃないかなということを考えた。


趣味は何ですか?と聞かれるとき、僕は「読書です」とは決して言わないようにしている。

何故なら、「趣味は読書」と聞いて、たいていの人は僕が味わっている「この胸の高鳴り」を想像できると思わないから。

感動する、とか、泣ける、とか、共感する、とか、ストレス解消とか、癒されました、とか。

そんな言葉では表現しきれない、様々な感情が読中読後、沸き上がってくることを、多分、理解してもらえな

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小川洋子さんの『ホテル・アイリス』を読んで、なんの役にも立たない、誰一人救うこともない、共感も感動も興奮も呼び起こさない、忌まわしく汚らわしいこの物語を「美しい」と感じた。

小川洋子さんの『ホテル・アイリス』を読んで、なんの役にも立たない、誰一人救うこともない、共感も感動も興奮も呼び起こさない、忌まわしく汚らわしいこの物語を「美しい」と感じた。

読み終えてすぐ、また最初のページに戻って読み返そうとして、ふと、この物語は、僕が読み終えると同時に消え去ってしまい、ページを開き直しても、すべてがもう跡形もなくなっているような気がして、だから、それを確かめるのが恐くて、そのまま書棚の奥に簡単には取り出せないようにしまいこんだ。

旅先であれば、そのままホテルの一室に置き去りにしたまま、立ち去りたかった。
そんな気分。

あの物語とは、もう二度と再

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早瀬耕さんの『彼女の知らない空』を読んで、僕はあの時この作品を読んでいたら退職願を出さないでよかったのだろうか、と自分に問いかけた。

早瀬耕さんの『彼女の知らない空』を読んで、僕はあの時この作品を読んでいたら退職願を出さないでよかったのだろうか、と自分に問いかけた。

読み終えてしばらくした今も「自分の正義に忠実でいる」というのは、どういうことなんだろうと考えている。

生きていく中で、分かりやすく「自分の正義」が試されるのは、間違いなく仕事をしているときだろう。

僕の中にも、それなりに「自分の正義」というものはあるけど、それに反することを求められる機会というものは、今まで経験してきた全ての仕事において存在した。

それらは、いま振り返ってみれば、社会人として

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中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』を読んで、愛する人を悲しませてまで飲んでしまう酒というのは、いったいなんなのかと思いながら、無性に酒が飲みたくなった。

中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』を読んで、愛する人を悲しませてまで飲んでしまう酒というのは、いったいなんなのかと思いながら、無性に酒が飲みたくなった。

「なぜそんなに飲むのだ」
「忘れるためさ」
「なにを忘れたいのだ」
「……。忘れたよ、そんなことは」
(古代エジプトの小話)

初めて読んだのが高校3年のときで、読後、現代社会かなんかのレポートのテーマを「アル中」にしてしまったほど感銘を受けた思い出の一冊です。

先日、フォロワーさんに「人生の中でベスト3に入る作品です」と勧めたものの、最後に読んだの、ずいぶん前だしなと、久しぶりに再読してみまし

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朝倉かすみさんの『たそがれどきに見つけたもの』を読んで、本当のリアルは物語の中にはなく、小説はいつだってフィクションだからこそ、僕はいつまでも小説を読み続けるのだと思った。

朝倉かすみさんの『たそがれどきに見つけたもの』を読んで、本当のリアルは物語の中にはなく、小説はいつだってフィクションだからこそ、僕はいつまでも小説を読み続けるのだと思った。

去年『平場の月』を読んでpostしたときのキャプションを読み返してみる。

いわゆる「30になっても、40になっても、俺、中学生くらいから全然考えてることとか変わらない」問題。

今でも基本的には、同じことを思う。

だけど、同じ著者による、平均年齢五十一歳の男女が織り成す六つの短編を読み終えた今、僕が考えているのは、それとはちょっと別のことだ。

『平場の月』を読んで衝撃的だったのは、五十を過ぎ

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遠田潤子さんの『廃墟の白墨』を読んで、様々な伏線を回収した末に訪れる哀しくやるせないラストシーンで、この物語の本当の主人公を知り、その救われなさに身悶えした。

遠田潤子さんの『廃墟の白墨』を読んで、様々な伏線を回収した末に訪れる哀しくやるせないラストシーンで、この物語の本当の主人公を知り、その救われなさに身悶えした。

淫乱で尻軽でだらしない最低の女とその娘、そして、そんな母娘を汚しながらも愛し守ろうとした四人の男たちが共に暮らした「王国」で起こった悲劇を描いた物語だ。

救われない話を書かせたら日本一の作家、遠田潤子の小説だから、何が起こっても驚きはしないが、何もかもが普通じゃない、異世界のようなビルを舞台に展開する、悪夢としか言い様のない物語の持つ醜悪でありながら耽美な世界観には、終始、圧倒された。

遠田作

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山内マリコさんの『選んだ孤独はよい孤独』を読んで、「後悔ばかりの人生に後悔はない」というアイロニーを語るには、このくらいの技量がないと無理ではないか、と、なかば途方に暮れている。

山内マリコさんの『選んだ孤独はよい孤独』を読んで、「後悔ばかりの人生に後悔はない」というアイロニーを語るには、このくらいの技量がないと無理ではないか、と、なかば途方に暮れている。



「じゃあ、お父さんは自分の人生に後悔はないの?」

先日、長男を諭している最中に彼が放った言葉が今でも頭の中を駆け巡っている。

横で聞いていた妻が堪らず「ちょっと、そんなこと、ゲームやりながら言う言葉じゃないでしょ」と叱ってくれたおかげでいったん冷静になれたけど、それでも顔からも声からも表情を消して「お前が真剣に質問してるなら答えるけど、ゲームしながら聞いてくるような人間に答えるつ

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江國香織さんの『ウエハースの椅子』を読んで、恋人との間の「狭い世界」に閉じ込められている、と感じた、過去の恋愛を思い出した。

江國香織さんの『ウエハースの椅子』を読んで、恋人との間の「狭い世界」に閉じ込められている、と感じた、過去の恋愛を思い出した。

物語の中で主人公は何度も、恋人との関係を「閉じ込められてしまう」という言葉で表現する。

たとえば、

私は恋人以外の男性に興味がないが、恋人と生きようとすれば、閉じ込められてしまう。

というふうに。

それが幸せなことなのか、不幸せなことなのか、分からないままに。

僕自身、恋人との間の「狭い世界」に閉じ込められている、と感じたことが、過去の恋愛で何度もあったし、それがいいことなのか、悪いこと

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江國香織さんの『東京タワー』を読んで、本当にめんどくさいのは、「恋愛の真っ只中にいた自分自身」だったじゃないか、と思い出したくもないことを思い出した。

江國香織さんの『東京タワー』を読んで、本当にめんどくさいのは、「恋愛の真っ只中にいた自分自身」だったじゃないか、と思い出したくもないことを思い出した。

嗚呼、そうだった、女の人って、こんな感じにめんどくさい生き物だった。

と思ったそばから、

いや、違うか、めんどくさいのは「恋愛」そのものだったっけな。

と思い直した。

それでも、まだ若かったあの頃の僕は何度でも何度でも、そんな「恋愛」の真っ只中に飛び込んでいったわけで、あれはなんだったんだろうか、という問いに対する答えが、本書には散りばめられている。

そして、本書を読み終えた僕は、本当に

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岡田利規さんの『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を読んで、夜の街で知り合った男女が渋谷のラブホでセックスしまくるだけの話が、なぜこのようなタイトルになるのか、をひたすら考えた。

岡田利規さんの『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を読んで、夜の街で知り合った男女が渋谷のラブホでセックスしまくるだけの話が、なぜこのようなタイトルになるのか、をひたすら考えた。

Instagramのフォロワーさんのpostで久しぶりにタイトルを目にして、あまりにも特別な多くの感情が沸き起こってきたため、それがなんでなのかを知りたくて再読してみました。

まず、奥付を見て、2007年刊行と今から10年以上前の作品だったということに軽く驚きます。

あれ? そしたらひょっとして、と思い、本屋大賞2008の発表号を見返したら、やっぱり、一次投票で投票してました。

そのときのコ

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桜井鈴茂さんの『冬の旅』を読んで、会社員だってロックンローラーなんだよってことは、会社員にならなければ、分からなかったということを思い出した。

桜井鈴茂さんの『冬の旅』を読んで、会社員だってロックンローラーなんだよってことは、会社員にならなければ、分からなかったということを思い出した。


.
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 あんたは変われるのかい?
 ·······どうかな。
 世の中のほうには期待できないよ
 そうだろうな。
 だったら折り合いの悪さをそのまんま受け入れるしかないだろうね。
.
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桜井鈴茂さんの『冬の旅』を読んだ。

これを読み終えると、桜井鈴茂さんの著作は、すべて読んだことになってしまう。

だから、大切に、じっくり、味わうように読もうと思っていた。

だけ

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川上未映子さんの『あこがれ』を読んで、小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリップしてしまった。

川上未映子さんの『あこがれ』を読んで、小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリップしてしまった。

読み終わって、ふと、小中9年間ずっと片想いしてた、同じ団地に住んでいた幼なじみを思い出した。

あれが本当に「恋」だったのかは、今となってはかなりあやしい。

でも、あれ以上の「恋」を、はたしてその後したことがあったかと問われれば、それも自信がない。

小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリップしてしまった。

本書の主人公は、おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガテ

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桜井鈴茂さんの『女たち』を読んで、これは、女、ではなく、女たち、について書かれた、日本で最も優れた短編小説のひとつだ、ということを考えた。

桜井鈴茂さんの『女たち』を読んで、これは、女、ではなく、女たち、について書かれた、日本で最も優れた短編小説のひとつだ、ということを考えた。

そっか。なにせ古い話だもんな。
うん。古い話。そう言うナオの瞳は、しかしながらノスタルジックな光を帯びていた。
(桜井鈴茂『女たち』より)

「ねえ、私たち、付き合っちゃいましょうよ。笑」

ふたりきりになったタイミングで、内緒話をするようにそうにじり寄ってきたのは、確かに僕の教え子で、いや、付き合っちゃいましょうよも何も俺はそもそもお前を好きなわけじゃないし、と思いつつ、一方で、付き合っちゃうの

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最果タヒさんの『星か獣になる季節』を読んで、毎日無邪気に笑いかけてくれる雇い主の奥さんに叶わぬ恋心を抱きながら何もできなかった日々を唐突に思い出して、ちょっとだけ切なくなった。

最果タヒさんの『星か獣になる季節』を読んで、毎日無邪気に笑いかけてくれる雇い主の奥さんに叶わぬ恋心を抱きながら何もできなかった日々を唐突に思い出して、ちょっとだけ切なくなった。

あの頃の君は、「あいつ」のことがずっと忘れられないみたいで、けいぞうと付き合えば忘れられると思ったけど、やっぱり忘れられないの、けいぞう、ごめん、って、何度泣かれて、そのたび僕はどれだけ胸が苦しかったことか。

それでも、僕は君に恋焦がれて、もはや僕たちは恋人同士なんかじゃないと、そんな明白な事実から目を背けて、君の手を握り続ければ、きっと、いつか、あいつのことを忘れて、僕だけを見てくれるんじゃな

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桜井鈴茂さんの『どうしてこんなところに』を読んで、これは、自分はできそこないのこの世界で人生のどん詰まりを生きていると、悲嘆に暮れてしまいがちな人たちにそっと寄り添い、静かに鼓舞する稀有な小説だと思った。

桜井鈴茂さんの『どうしてこんなところに』を読んで、これは、自分はできそこないのこの世界で人生のどん詰まりを生きていると、悲嘆に暮れてしまいがちな人たちにそっと寄り添い、静かに鼓舞する稀有な小説だと思った。

本書は、東京で妻を殺めた主人公が、新潟へ逃亡し、東北、函館、仙台、四国、西成、小倉、沖縄と全国各地をさまよい続けた二年四ヶ月を描いたクライム・ロードノヴェルだ。

罪を犯した人間の逃亡生活、と聞いて誰もがイメージする、薄暗くじめじめした息苦しい毎日を描いた小説だ。

物語の後半で主人公が出会う、ある女性が語る言葉があまりにも的確なので、引用してみる。

だって、惨めすぎるでしょ、逃亡生活なんて。偽

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桜井鈴茂さんの『アレルヤ』を読んで、もて余した感傷のやり場に困って、さっきからずっとtetoraというバンドの「知らん顔」という曲を再生しまくっている。

桜井鈴茂さんの『アレルヤ』を読んで、もて余した感傷のやり場に困って、さっきからずっとtetoraというバンドの「知らん顔」という曲を再生しまくっている。

あ、いや、その、だから、あれだ。

バー・アラバマ、というところで、あれ?って思ったわけで。

でも、そのときに気づけば良かった。

これって、あれじゃん、『できそこないの世界でおれたちは』の吉永シロウ物語じゃんって。

そしたら、ちゃんと、最初からビール片手に読み始めてたんだけどなって話。

20年前に行ったロックフェスで、それほど観たいと思わなかった布袋寅泰のステージを観ながら、思わず手を繋い

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