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川上未映子さんの『あこがれ』を読んで、小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリップしてしまった。
読み終わって、ふと、小中9年間ずっと片想いしてた、同じ団地に住んでいた幼なじみを思い出した。
あれが本当に「恋」だったのかは、今となってはかなりあやしい。
でも、あれ以上の「恋」を、はたしてその後したことがあったかと問われれば、それも自信がない。
小学生の男子と女子って、なんだか不思議な関係だよなあと、ちょっとの間、タイムトリップしてしまった。
本書の主人公は、おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽっちの麦くん。
はたから見れば、どう考えても「付き合ってる」としか思えないふたりが、お互いの「あこがれ」のために一緒に泣いて笑って支え合う、ふたつの冒険が描かれた長編小説だ。
ヘガティーも麦くんも、本当にいい子なんだけど、それよりなにより、ふたりの「関係」が言葉にできないくらいの幸福感を読み手にもたらしてくれる。
一番の理解者だけど、恋人ではない。
これは小学生ならではの「男女関係」に違いなく、この関係がこの先(物語が終わった後)長くは続かないであろうことを、知ってしまっている僕のような大人にとっては、眩しすぎるし切なすぎる。
そして、その儚さゆえに輝きを増す魅力的な関係を、作者は見事に描いている。
作者を知らずに読んだら、重松清?と思ってしまうような、直球の少年少女小説だ。
だからといって、予定調和な展開は一切なく、「川上未映子さん、そうきましたか」とニヤリとさせられっぱなし。
巻末に解説がないのも、結果的に正解。
読んだ人が、自分の中の余韻を自由に楽しむための配慮と解釈したい。
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