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北極冒険家が考える「人はなぜ冒険するのか?」

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#北極

冒険のスポンサー企業とどのように出会い、どんな姿勢で資金を集めてきたか

冒険のスポンサー企業とどのように出会い、どんな姿勢で資金を集めてきたか

冒険にはお金がかかる。

私が長年行っている極地冒険も、どんな計画を行うかで必要な資金のボリュームもさまざまに変化する。
2000年、22歳から始めた極地冒険であるが、若い頃はなるべくお金がかからないよう、カナダ北極圏やグリーンランドの、イヌイット(エスキモー)の集落を繋いで歩くような冒険を中心に行っていた。

若いころの北極行に必要な費用は、一回の遠征に150万円から200万円ほどだった。

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知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

岩波書店「図書」2023年1月号に寄稿した文章です。
読書との出会い、冒険との出会い。そこに関わる本の思い出。

知的情熱を体で表現する

まだ私が極地冒険と出会う前のこと。自分には何かできるはずだという根拠のない自信だけを抱えながら、自分がいる場所から一歩も動けずにいた大学生の私は、本の中に未知の世界を求めていた。

思えば、活字を積極的に読むようになったのは中学生の頃。三年生の時の担任で国語を

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「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!

「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!

2013年に出版した、私の最初の著作「北極男」が、増補版として文庫で復刊します!

発売日は12月14日。単行本の時は講談社からでしたが、文庫は山と渓谷社に版元を移し、ヤマケイ文庫での復刊です。
2000年から2013年までの北極行をまとめていますが、各年の北極行を今の視点で振り返る増補を60ページほど書き足し、追加しています。

これまで「北極男」「考える脚」「PIHOTEK 北極を風と歩く」と

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「PIHOTEK 北極を風と歩く」が 第28回 日本絵本賞「大賞」受賞。 文章に込めた想い

「PIHOTEK 北極を風と歩く」が 第28回 日本絵本賞「大賞」受賞。 文章に込めた想い

昨年の夏に出版した絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」が、このたび第28回日本絵本賞において、最高賞となる「大賞」を受賞することが決まりました。

授賞式は6月22日。

以前のnote投稿記事で、絵本制作に至った経緯などを書いたので、今回は私が書いた文章に込めた想いの部分を書きたいと思います。

今回の絵本のテーマは「風」そして「命」でした。

絵本制作の話が決まり、私が物語の文

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未来は変わらない。変えられるのは過去だけ

未来は変わらない。変えられるのは過去だけ

変わるのは過去?未来?

「過去は変えられない。未来は変えられる」なんて言葉を聞くことがある。

いつも感じるのだが、ものすごい矛盾している言葉だ。だって、未来はまだ来てもいないし、何の現象も起きていないのに「未来を変える」ってどういうことだ?何を変えるというのだろう?変える主体がないものを、どう変えるというのだろうか?

「未来は変わる」という人の心理の大部分を意訳すれば「未来を自分の思い通りに

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行為を言葉でどこまで説明できるか。冒険探検に変わる第三の言葉を探す

行為を言葉でどこまで説明できるか。冒険探検に変わる第三の言葉を探す

冒険と探検

私は「北極冒険家」という肩書きを名乗っている。

昨年から冒険研究所書店という本屋をやっているので、書店主でもある。一般的には、冒険家の方で通っているのだが、私は「探検家」ではない。

時々「北極を探検している、冒険家の荻田さん」と紹介されたりするが、それは仕方ない。多くの人は、冒険と探検をごちゃ混ぜに使っていることが多く、それこそその二つの言葉の語義をいちいち分解して考えるなんてこ

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自然は如何に導くか

自然は如何に導くか

3年前にFacebookに書いていたものを、過去の今日書いていた記事として発見した。ハロルド・ギャティ「自然は導く」を読んだ感想。3年前のものに追記して紹介。

GPSはもちろん、六分儀や地図やコンパスに頼らずに、かつての人たちはどのようなナビゲーションを行なって旅をしてきたか。

単純な話だが、五感をフル活用して、周囲の状況を観察し、理論があれば、それを持たない人からすればまるで第六感の超能力で

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新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」発売しました

新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」発売しました

8月9日に発売した私の新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」

もうすでに、たくさんの人の手元に届いていると思います。いかがですか?感想をもらえるとすごーく嬉しいです。

絵本の特設サイトです。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

今回の絵本は、これまで単著は2冊出してきましたが新しい表現として挑戦してみました。私が文章を書き、絵は絵本作家の井上奈奈さんにお願いしました。

井上奈奈

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文化の盗用と無自覚な応援

文化の盗用と無自覚な応援

山の世界も、冒険の世界も、知らず知らずのうちに「文化の盗用者」がメジャーな舞台に躍り出る。

冒険や探検にはルールがない。スポーツにはルールがある。

ルール、規則という、外側に立てられた基準に従うのがスポーツ。一方で、外側ではなく己の内面の基準である、倫理やマナーに従うのが冒険の世界。

倫理とは、倫(なかま)の理(ことわり)のこと。人と人との関係性のこと。

冒険はひとりで、自然の中に行くのに

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冒険家はトレーニング必須か? 自爆テロリストが来た日の話

冒険家はトレーニング必須か? 自爆テロリストが来た日の話

これは、人によって異論反論オブジェクション(古い!若い人意味わからん!)あると思うので、私の個人的な意見として聞いてもらえれば良い。

先日、私のやっている冒険研究所に若者がやってきた。その当の本人もこれを読んでいる可能性もあるので、その彼にその時かけた言葉の真意も改めて伝える意味でも書いておく。

高校を卒業したばかりだという若者。だからまだ10代か。
「僕、冒険家になりたいんです!!」
と、キ

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冒険研究所書店は「不自由の牢獄」

冒険研究所書店は「不自由の牢獄」

ミヒャエル・エンデの作品のひとつ「自由の牢獄」は、ある男が無数のドアがあるふしぎな空間に落とされ、どれでもひとつのドアを自由に選ぶことができるが、結局どれを選ぶこともできずに永遠の時間をそこで過ごす、という話。

無限の自由を与えられると人間は不自由になってしまうという、文明批評的な童話だ。

なぜ際限のない自由を与えられると、不自由に陥るのだろうか。その理由の一つは「選んだもの」ではなく「選ばな

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冒険と読書

冒険と読書

昨年5月より「冒険研究所書店」を開設し、おかげさまでたくさんの取材などをしていただいた。

取材となると、インタビューを受ける訳だが、まず100%聞かれるのが「なぜ書店を始めようと思ったんですか?」というものだ。冒険家が書店を始めた、というのが皆さん相当に疑問のようだ。

例えば、私がもともと出版社に勤めていて、会社を辞めて書店を始めました、という人物であれば、おそらくここまで「なぜ書店を始めたん

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「機能と祈り」で書店を考える

「機能と祈り」で書店を考える

2020年の10月から「冒険クロストーク」というゲストを招いての対談シリーズを始めた。

ゲストには、多様な分野の方を招き、たっぷりとお話を伺っている。これまで10回開催しているのだが、私にとって第2回のゲスト澁澤寿一さんの回が、決定的に印象に残っている。そして、私の中で思考の方向性を与えてくれた回でもあった。

澁澤寿一さんは、渋沢栄一の曾孫にあたる方であり、「里山資本主義」として有名になった岡

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世界7大陸最高峰空撮プロジェクトを応援する

世界7大陸最高峰空撮プロジェクトを応援する

早いもので、冒険研究所書店をオープンしてそろそろ半年が経つ。

書店として古本と新刊を揃えているが、ギャラリースペースも併設し、現在は探検家でノンフィクション作家の角幡唯介による「北極の10年展」を開催中だ。

彼と私は、10年前の2011年にカナダ北極圏を1600km歩く遠征を行っている。「アグルーカの行方」という彼の著作にまとめられた旅であるが、ギャラリーではその時に撮影したビデオ映像を編集し

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