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新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」発売しました

8月9日に発売した私の新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」

もうすでに、たくさんの人の手元に届いていると思います。いかがですか?感想をもらえるとすごーく嬉しいです。

絵本の特設サイトです。
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今回の絵本は、これまで単著は2冊出してきましたが新しい表現として挑戦してみました。私が文章を書き、絵は絵本作家の井上奈奈さんにお願いしました。

井上奈奈さんは、これまで絵本を何冊も作っていますが、そのどれもが深いテーマを潜ませていたり、シュールなメッセージを内包していたり、もちろん子供も読めるけれども大人にこそ深掘りして楽しめる幅を持った作品を多く発表しています。

絵本を書くのであれば、冒険しました!やったー!成功したー!みたいな、そんな通り一遍の表面的な話ではないものを書きたい。自分の言葉に含まれた意味を汲んで、そして絵にしてくれる人という点で、他に頼める人はいないと思い、井上さんと絵本作りをすることになりました。

今回の絵本のカバーは、リバーシブル仕様。右が通常の表。左が裏面。

今回の絵本のテーマは「風と命」です。「命」をテーマにすると、とかく「生きる、生かされる」とか「殺す、殺される」といった主客分断の話になってしまう。我々は生かされているし、生きているし、生かしている。

我々は冒険をしているし、させられてもいる。

主客分節以前の世界を、自分が冒険の最中に北極でよく体験する、テントの中で眠りに落ちる間際に聴こえてくる(ような気がする)「音楽」と、その意味を深掘りすることで表現しました。

風の奥から聴こえてくる音楽とは何か?聴いている音楽と自分は別であるはずが「あわい」の世界で混淆していく。

一番重要なページが「あわい」の世界に飛んでいく、青い見開きのページ。ここが最も大切な核心となりますが、それを何層にも分かれた青のグラデーションと、銀のインクで絵にしてもらいました。これは凄い。

8月28日に行われた、銀座蔦屋書店でのトークイベントでは、そのページの意味についても喋りました。次は9月21日から10月6日まで大阪の枚方蔦屋書店でも展示と、23日18時から会場でトークをやります。またそこでも、深掘りしたお話ができれば。

通常のCMYK印刷を使わない、PANTONEの特色インク4色を使用した特別な絵本

そしてもう一つ。「冒険」「探検」という日本語の限界に対する一つの提案としてこの絵本を書きました。

「危険を冒す」という言葉の「冒険」そして「探り検べる」行為の「探検」

元々、西洋からやってきた「冒険」「探検」という概念に対して、元の英単語にそのまま適応する日本語はありません。

「貯金を全部、仮想通貨に投資したんだよね!」「そりゃ冒険したね!」と言う時、ここで「探検したね!」とは言わないでしょう。

普段は北極歩くのも山に登るのも、あまり考えずに「冒険」「探検」をごちゃ混ぜに使っている人も、さっきの文章では必ず「冒険したね」と言います。

つまり、実は語彙的にみんなは本質的に分かっています。「冒険」とは「危険を冒す」ことであり、リスクを伴う行動をするときに使っていると。「安全な冒険」は言葉として矛盾しています。安全じゃないから冒険でなのです。

「探検」は「探る」「検べる」行為であり、リスクを語彙的に前提としていない。

西洋からやってきた「冒険」「探検」に相応する「explore」「adventure」「expedition」などは、苦し紛れに「冒険」「探検」としているだけで、明らかに語彙が持つイメージに乖離があります。

冒険とは、リスクの話をしている言葉ですが「explore」「adventure」「expedition」などは特にリスクの話をしているわけではない。であるのに、訳語として「冒険」を充てることに実は無理があるのです。

出世魚の「ブリ」も「ハマチ」もyellowtail。しかし「ブリ」は「ブリ」であって「ハマチ」ではない。

言葉の限界がまずここにあります。語りえぬもの。であれば黙るしかないのか。

言葉の射程が届かぬならば、絵の射程距離を試してみよう。10万字を尽くしても語りえぬものを、1ページの絵で表現できないものか。

1年半以上かけて制作してきた、渾身の一冊です。ぜひ見てください。

風呂敷と手ぬぐいの「かまわぬ」さんとコラボした、絵本の世界を再現したオリジナル風呂敷もありますよ。

絵本特設サイトからどうぞ。

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