北極冒険家 荻田泰永

2000年よりカナダ北極圏やグリーンランドで徒歩を中心とした冒険を行ない、これまで北極…

北極冒険家 荻田泰永

2000年よりカナダ北極圏やグリーンランドで徒歩を中心とした冒険を行ない、これまで北極と南極を10000km以上を踏破。2019年3月出版した「考える脚」で第9回梅棹忠夫・山と探検文学賞。日本人初の南極点無補給単独徒歩到達に成功。第22回植村直己冒険賞

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冒険家の存在意義とは何か?

冒険の意味?冒険や探検に対して、「意味」「価値」というものを付随させて考えることが多くある。 「そんなことやって何になるの?」 「今さら未知の場所なんてないでしょ。時代遅れ」 冒険や探検をしない人からしてみれば、あえて危険(に見える行為)を望んで行うことが理解できないため、きっとそこには特別な理由があるからに違いない、その理由とは何なんだろう?そこにどんな意味を持っているのだろう?という疑問が出てくるのだが、考えてもよく分からないので「意味ないじゃん」と切り捨てる。

    • 一年前のつぶやき。書店の必要性はわかるが、自分はどうなんだ?

      一年くらい前に、Twitterにこんなことを書いていた。 書店の必要性を考える人がいる一方で、アマゾンあるから書店いらないじゃん、と考える人がいる。書店サイドの人は、いらないという人にその良さを語ろうとするが、書店がいらない人のいらない理由を置いてけぼりにしてないか?必要である理由だけを叫んでも、いらない人はいらないのだ 書店の世界にいる人は、書店についてそれを叫ぶが、そう叫んでいる人は別の業態に対して同じことしていないか?商店街の八百屋さんよりもイオンの野菜の方が安いか

      • 冒険のスポンサー企業とどのように出会い、どんな姿勢で資金を集めてきたか

        冒険にはお金がかかる。 私が長年行っている極地冒険も、どんな計画を行うかで必要な資金のボリュームもさまざまに変化する。 2000年、22歳から始めた極地冒険であるが、若い頃はなるべくお金がかからないよう、カナダ北極圏やグリーンランドの、イヌイット(エスキモー)の集落を繋いで歩くような冒険を中心に行っていた。 若いころの北極行に必要な費用は、一回の遠征に150万円から200万円ほどだった。 内訳としては、日本から現地の村までの渡航費。途中での宿泊、移動費。新しく調達する装

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        • 100マイルアドベンチャ−2024始動。募集開始日不告知かつ先着順である理由

          noteでもこれまで何度も「100マイルアドベンチャー」については書いてきましたが、今年も開催します。 改めて、100マイルアドベンチャーとは、2012年から私が継続して毎年開催している、小学6年生限定の夏休みの冒険旅。 100マイル(160km)を10日ほどかけてキャンプしながら踏破する、冒険の旅です。 毎回、開催ルートを変えながら行っています。これまで過去12年のルートは以下。2018年からは2回開催するようになっています。 2012年 網走〜釧路 2013年 東

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        冒険家の存在意義とは何か?

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        • 冒険研究所書店
          36本
        • 北極冒険家が考える「人はなぜ冒険するのか?」
          67本
        • 北極冒険家の読書、映画、評論
          21本
        • 北極冒険家が教える「準備と実行」
          4本

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          冒険ワークショップをやろうかと思っている

          冒険研究所書店を2021年5月に初めて、そろそろ丸3年になる。 これまでの経験や知見を社会にも広げていくために、冒険ワークショップのようなことを考えてみようかと思っている。 冒険のステップとしては、まず ①主体的に計画 を行い、次に ②計画の潜在的な危険性を予測 して ③自分の能力が計画に対して対応可能か を判断し、ようやく ④準備 を行い ⑤計画を実行 する。そして最後に、その結果を ⑥何かしらの形にまとめて報告する その一連の流れを、私やゲスト講師の話を元に考えて「

          冒険ワークショップをやろうかと思っている

          夜桜の下で、映画上映会

          4月4日の夜は、冒険研究所書店の目の前で「桜の木の下映画会」第2回を開催しました。 小田急線の桜ヶ丘駅。書店はその東口にあります。そこには、小さな駅前のロータリーがあり、中央には立派な桜の木が2本立っています。 桜ヶ丘駅の象徴的な桜で、ちょうど今の時期は桜が満開。非常に美しく咲いています。 その桜の木の下には、小さな広場があり、円型のベンチが置かれ、憩いの場所となっていますが、特に他に活用されることもない。 以前から、この桜の木の下で何かやりたいなぁ、活用したいなぁと

          夜桜の下で、映画上映会

          感情を磨き、人間になれ

          昨日、小学校6年生たちに北極の講演をした。90分間、北極の自然や動物、冒険の様子をクイズを交え話した。 最後に、時代の変化の激しい今を生きる子供たちに「時代に取り残されないために」どうすべきか伝えたことは「時代を追うのではなく、時代が変化しても変わらないものを大事にしてほしい」と話した。 冒険心や挑戦心、人に対する優しさ、素敵な笑顔、仲間を大切にすること、100年前も100年後も、ずっと変わらない「人間の感情」を磨いてほしい。 2024年の最先端は、2025年には古くなる

          感情を磨き、人間になれ

          人間40過ぎたら、あとは余生なんですよ

          40歳を過ぎてくると、それまで自分の道をひたすら邁進していた人が「若い世代のために」「自分のことよりも社会に」と言い出す人が多い。 もちろん、そうではない人もいる。 私の周囲にも、登山や冒険の界隈の人で、かつては「冒険に社会性なんてない。社会と関わらない方がより美しい行為ができる」と断言していたような人物が、40歳を過ぎてしばらくした頃から「若い奴らのために」という言葉が出るようになり、ずいぶんと変わってきたもんだ、と思ったこともある。 40歳というのは、あくまでも分か

          人間40過ぎたら、あとは余生なんですよ

          知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

          岩波書店「図書」2023年1月号に寄稿した文章です。 読書との出会い、冒険との出会い。そこに関わる本の思い出。 知的情熱を体で表現する まだ私が極地冒険と出会う前のこと。自分には何かできるはずだという根拠のない自信だけを抱えながら、自分がいる場所から一歩も動けずにいた大学生の私は、本の中に未知の世界を求めていた。 思えば、活字を積極的に読むようになったのは中学生の頃。三年生の時の担任で国語を教える三上先生が、何かの拍子に私に本を貸してくれた。確か、日本人作家の推理小説だ

          知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

          今日は「書店」発想3周年の日

          3年前の今日、2021年1月30日に「そうだ、書店をやろう」と閃いた。 その年の5月24日には開店する。 思いついた時は、書店のことなど何一つ知らず、仕入れ方法もまるで無知だった。 そこから自分で調べ、人に聞きに行き、準備を進めて開店。今日は「書店」に関わり始めて丸3年となる日。 冒険研究所書店の、3周年とも言える日かもしれない。 なぜ冒険家が書店を始めたか?詳しくは「書店と冒険」にて。

          今日は「書店」発想3周年の日

          本屋になるには

          昨年、冒険研究所書店のツイッターで以下のような連続ツイートをしたところ、バズった。 それを受けて、潜在的に「本屋」に憧れを持っている人が多いのだなぁということを実感したのだが、まずはその時のツイートを紹介。 ここでも書いている通りに、本屋は誰でも始められる。 このツイートで私が提案していたのは、いきなり「フルスペック本屋」を始めなくても、たくさんの人が小さな「マイクロ本屋」を始めるというやり方。 それが現実的に稼働していくかどうかは設計が必要だと思われるが、うまく稼働した

          冒険家になるには

          一般的に「◯◯家」というのは、誰でも、いつでもなれる。 私は「冒険家」を対外的な肩書きとして使っている。時々「どうやったら冒険家になれますか?」と聞かれることがあるが、そんな時は「名乗ればいいんです」と答えている。 「◯◯家」は、言ってみれば全て「自称」でしかない。なるための試験があるとか、資格が必要とか、そんなものはない。 「◯◯士」もしくは「師」などの、いわゆる「士業」は資格が必要だ。弁護士、会計士、行政書士、司法書士、弁理士、税理士、薬剤師、医師、教師、などなど。

          冒険家になるには

          ピースボートのポスターを貼りにきた若者との会話

          2年ほど前に書店であった出来事。FBに書いていたものを加筆修正して紹介します。 先程、冒険研究所書店で店番をしているときに、若者がポスターを抱えてやってきた。 「ピースボートのポスターをお店のどこかに貼らせてもらえないですか?」と言う。 ピースボートについては、世間で色々言われているようだが、個人的には特に感情はない。ようは、よく知らないので関心がなかった。 その若者は、うちが「冒険家」のやっている本屋であるとか、私が冒険をしている人物であるとか知らずに、片っ端から飛び

          ピースボートのポスターを貼りにきた若者との会話

          冒険者は城壁の中より逃走し、帰還して語る

          6年前の今日(1月5日)、無補給単独徒歩で南極点に着いた。 もう6年か、早いものだ。 その翌年2019年には若者たちとの北極行を行い、その後に世界はコロナウイルスに沈んだ。 そんなコロナ真っ最中の、2021年5月には事務所としていた神奈川県大和市の「冒険研究所」を書店として改装。 今日からは今年の書店営業を開始した。 そういえば、しばらく極地に行っていない。書店という新たな形の冒険をしているが、やはり心中では物理的な土地での冒険を希求している自分がいる。 社会の規範

          冒険者は城壁の中より逃走し、帰還して語る

          駅徒歩10秒、焚き火と映画とコーヒー、焼き芋も

          あらためて、昨日の夜は書店のある桜ヶ丘駅前のロータリー内で「桜の木の下映画会」を開催しました。 駅徒歩10秒で焚き火と映画、焼き芋とコーヒーと焼きマシュマロ笑 神奈川県大和市。小田急江ノ島線の桜ヶ丘駅は典型的なベッドタウン。昼は閑散としている駅前も、夕方から夜にかけて帰宅の人々がぞろぞろと駅から排出されていき、皆無言で、特にどこに立ち寄ることもなく自宅に直行していく。 駅前の商店街もシャッターばかりで、帰宅の人々が寄って行こうかと思うお店もない。 寄る店がないから桜ヶ

          駅徒歩10秒、焚き火と映画とコーヒー、焼き芋も

          「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!

          2013年に出版した、私の最初の著作「北極男」が、増補版として文庫で復刊します! 発売日は12月14日。単行本の時は講談社からでしたが、文庫は山と渓谷社に版元を移し、ヤマケイ文庫での復刊です。 2000年から2013年までの北極行をまとめていますが、各年の北極行を今の視点で振り返る増補を60ページほど書き足し、追加しています。 これまで「北極男」「考える脚」「PIHOTEK 北極を風と歩く」と、3冊の著書を出しました。 「北極男」は2000年から2013年まで。 「考える

          「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!