北極冒険家 荻田泰永
冒険の意味?冒険や探検に対して、「意味」「価値」というものを付随させて考えることが多くある。 「そんなことやって何になるの?」 「今さら未知の場所なんてないでしょ。時代遅れ」 冒険や探検をしない人からしてみれば、あえて危険(に見える行為)を望んで行うことが理解できないため、きっとそこには特別な理由があるからに違いない、その理由とは何なんだろう?そこにどんな意味を持っているのだろう?という疑問が出てくるのだが、考えてもよく分からないので「意味ないじゃん」と切り捨てる。
昨年の夏に出版した絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」が、このたび第28回日本絵本賞において、最高賞となる「大賞」を受賞することが決まりました。 授賞式は6月22日。 以前のnote投稿記事で、絵本制作に至った経緯などを書いたので、今回は私が書いた文章に込めた想いの部分を書きたいと思います。 今回の絵本のテーマは「風」そして「命」でした。 絵本制作の話が決まり、私が物語の文を書くにあたって頭の中に浮かんだイメージがいくつかありました。 まず一つ目が「命
作家の井上奈奈さんとの共著により、昨夏に出版しました絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」 現在、全国学校図書館協議会が主催する、第28回「日本絵本賞」の最終候補作にノミネートされています。 ※5月17日に追記 最終候補にノミネートされていました「PIHOTEK 北極を風と歩く」が、第28回日本絵本賞において最高賞となる「大賞」の受賞が決定しました。! 今回の絵本は、私も共著者として名を連ねていますが、とにかく素晴らしい作品になりました。北極という、モノト
変わるのは過去?未来? 「過去は変えられない。未来は変えられる」なんて言葉を聞くことがある。 いつも感じるのだが、ものすごい矛盾している言葉だ。だって、未来はまだ来てもいないし、何の現象も起きていないのに「未来を変える」ってどういうことだ?何を変えるというのだろう?変える主体がないものを、どう変えるというのだろうか? 「未来は変わる」という人の心理の大部分を意訳すれば「未来を自分の思い通りに誘導したい」ということだ。その人にとって、自分が望んだ通りの思い描いた未来になれ
冒険研究所書店を開業してから、5月で2年になる。日々、書店として街で営業していると様々なことが起きる。印象的な出来事が今日はあった。 今日店にいらっしゃった年配の上品そうな女性。「本の注文できますか?」と。 女性「いつもは便利でAmazon使っちゃうのよねぇ」 私「ぜひウチも使ってください」 女性「そうねぇ」 私「うちで買ってくれたら、私は向かいの喫茶店でコーヒー飲めるし、喫茶店の人は隣の和菓子屋で団子買えるんです」 女性「私も昔と買い物の仕方が変わってきて、つい
冒険と探検 私は「北極冒険家」という肩書きを名乗っている。 昨年から冒険研究所書店という本屋をやっているので、書店主でもある。一般的には、冒険家の方で通っているのだが、私は「探検家」ではない。 時々「北極を探検している、冒険家の荻田さん」と紹介されたりするが、それは仕方ない。多くの人は、冒険と探検をごちゃ混ぜに使っていることが多く、それこそその二つの言葉の語義をいちいち分解して考えるなんてことは、普通はしない。 これが、ひと昔前の大学探検部とか、現在でも一部の探検部あ
2017年の南極点の遠征から、極地で使うようになったアウタージャケットが、天然素材コットンを使用したウェアです。 2019年春、若者たちとの北極行では赤いコットンジャケットをオリジナルで作成し、600km・1ヶ月間の徒歩遠征を行いました。 このジャケットを、全く同じ仕様で数量限定60着のみ製作することができ、希望者には一般販売することになりました。すでに製作している物も含めると、世界に80着ほどしか存在していないものになります。 https://www.bokenbook
3年前にFacebookに書いていたものを、過去の今日書いていた記事として発見した。ハロルド・ギャティ「自然は導く」を読んだ感想。3年前のものに追記して紹介。 GPSはもちろん、六分儀や地図やコンパスに頼らずに、かつての人たちはどのようなナビゲーションを行なって旅をしてきたか。 単純な話だが、五感をフル活用して、周囲の状況を観察し、理論があれば、それを持たない人からすればまるで第六感の超能力で進路を決めているように思えるが、実はそうではない、ということが延々と実例をもとに
8月9日に発売した私の新刊絵本「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」 もうすでに、たくさんの人の手元に届いていると思います。いかがですか?感想をもらえるとすごーく嬉しいです。 絵本の特設サイトです。 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 今回の絵本は、これまで単著は2冊出してきましたが新しい表現として挑戦してみました。私が文章を書き、絵は絵本作家の井上奈奈さんにお願いしました。 井上奈奈さんは、これまで絵本を何冊も作っていますが、そのどれもが深いテーマを潜ませていた
山の世界も、冒険の世界も、知らず知らずのうちに「文化の盗用者」がメジャーな舞台に躍り出る。 冒険や探検にはルールがない。スポーツにはルールがある。 ルール、規則という、外側に立てられた基準に従うのがスポーツ。一方で、外側ではなく己の内面の基準である、倫理やマナーに従うのが冒険の世界。 倫理とは、倫(なかま)の理(ことわり)のこと。人と人との関係性のこと。 冒険はひとりで、自然の中に行くのに、その「なかま」って誰のこと?と言えば、いまの自分に至るまでの過去の探検家や冒険
一年以上前から制作に取り組んでいた、絵本の出版が8月9日に決定しました。 私が文章、冒険研究所書店のロゴも制作してくれた絵本作家の井上奈奈さんが作画を担当しています。 タイトルは「PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く」 出版は講談社より。本体2800円(税込3080円)です。 私が北極を歩く中で体験したエピソードをもとに物語を組み立て、風と命を巡るお話になっています。 絵本でそもそも英語のタイトルをつけることは稀ですが、あえてアルファベットにしています。それ
これは、人によって異論反論オブジェクション(古い!若い人意味わからん!)あると思うので、私の個人的な意見として聞いてもらえれば良い。 先日、私のやっている冒険研究所に若者がやってきた。その当の本人もこれを読んでいる可能性もあるので、その彼にその時かけた言葉の真意も改めて伝える意味でも書いておく。 高校を卒業したばかりだという若者。だからまだ10代か。 「僕、冒険家になりたいんです!!」 と、キラキラした目とちょっと田舎くさい風貌で、憎めない若者だった。 日本一周などもし
昨年5月24日に冒険研究所書店を開設してから、そろそろ1年になる。 この1年は、書店の経営を手探りで学び、大和市桜ヶ丘という土地を観察し、じっと大人しく書店をやってきた。 この4月からは2年目スタートという気持ちで、様々な取り組みを始めようと思っている。 まずは、これまで冒険研究所として続けている旗艦イベント「冒険クロストーク」の他に、毎週小回りのきくイベントを行っていく。映画上映会だったり、読書会だったり、旅の話を聞く会だったり。文化的な楽しみを書店から発信していく。
ミヒャエル・エンデの作品のひとつ「自由の牢獄」は、ある男が無数のドアがあるふしぎな空間に落とされ、どれでもひとつのドアを自由に選ぶことができるが、結局どれを選ぶこともできずに永遠の時間をそこで過ごす、という話。 無限の自由を与えられると人間は不自由になってしまうという、文明批評的な童話だ。 なぜ際限のない自由を与えられると、不自由に陥るのだろうか。その理由の一つは「選んだもの」ではなく「選ばなかったもの」への執着だろう。 例えばメニューの豊富なパスタ屋に入った時に、カル
昨年5月より「冒険研究所書店」を開設し、おかげさまでたくさんの取材などをしていただいた。 取材となると、インタビューを受ける訳だが、まず100%聞かれるのが「なぜ書店を始めようと思ったんですか?」というものだ。冒険家が書店を始めた、というのが皆さん相当に疑問のようだ。 例えば、私がもともと出版社に勤めていて、会社を辞めて書店を始めました、という人物であれば、おそらくここまで「なぜ書店を始めたんですか?」とは聞かれないと思う。きっと、出版社から脱サラして書店を始めたというこ
5月24日に「冒険研究所書店」を開設し、古本と新刊を扱ってきた。 古本を主体とし、新刊は少数でスタートしたが、最近では新刊の数も増えてきた。とはいえ、一般の新刊書店よりはアイテム数は少ないが、現在では500〜600点ほどあるだろうか。 2021年の約7ヶ月で販売した、新刊書籍の売り上げ冊数ランキングを発表します。ベスト15まで。 1 考える脚 荻田泰永 KADOKAWA 2 狩りの思考法 角幡唯介 清水弘文堂書房 3 星に絵本を繋ぐ 井上奈奈 雷鳥社 4 アムン