マガジンのカバー画像

北極冒険家が考える「人はなぜ冒険するのか?」

69
運営しているクリエイター

記事一覧

尊重という名の包摂が招く「巧妙な排除」

尊重という名の包摂が招く「巧妙な排除」

来週5月17日(金)に、神保町の東京堂書店であるイベントに登壇する。
こちら↓↓↓↓↓↓↓↓↓

2004年に、32歳の若さで悪性リンパ腫により亡くなった、歴史学者の保苅実。彼が生前に遺した唯一の単著「ラディカル・オーラル・ヒストリー」は、オーストラリアのアボリジニの歴史観をつぶさに検証した名著として知られ、その独特の研究内容は今でも読み継がれている。

保苅実が世を去って20年。彼が高校生から大

もっとみる
子供達との旅を行うために大切にしていること

子供達との旅を行うために大切にしていること

今年の100マイルアドベンチャーのロケハンを終了し、いよいよルートの最終調整に入っている。

今年で13年目となる100マイル。

開催地を毎回日本各地で変えているが、ルートを作るのも大変な作業だ。

ルート作成にはいくつかの段階がある。

①まずは、地図上で大まかにスタートとゴールを決める。
過去の例で言えば、昨年2023年だと「今年は九州に行こうかなぁ」と、まずは漠然と決める。
Googleマ

もっとみる
冒険のスポンサー企業とどのように出会い、どんな姿勢で資金を集めてきたか

冒険のスポンサー企業とどのように出会い、どんな姿勢で資金を集めてきたか

冒険にはお金がかかる。

私が長年行っている極地冒険も、どんな計画を行うかで必要な資金のボリュームもさまざまに変化する。
2000年、22歳から始めた極地冒険であるが、若い頃はなるべくお金がかからないよう、カナダ北極圏やグリーンランドの、イヌイット(エスキモー)の集落を繋いで歩くような冒険を中心に行っていた。

若いころの北極行に必要な費用は、一回の遠征に150万円から200万円ほどだった。

もっとみる
100マイルアドベンチャ−2024始動。募集開始日不告知かつ先着順である理由

100マイルアドベンチャ−2024始動。募集開始日不告知かつ先着順である理由

noteでもこれまで何度も「100マイルアドベンチャー」については書いてきましたが、今年も開催します。

改めて、100マイルアドベンチャーとは、2012年から私が継続して毎年開催している、小学6年生限定の夏休みの冒険旅。

100マイル(160km)を10日ほどかけてキャンプしながら踏破する、冒険の旅です。

毎回、開催ルートを変えながら行っています。これまで過去12年のルートは以下。2018年

もっとみる
冒険ワークショップをやろうかと思っている

冒険ワークショップをやろうかと思っている

冒険研究所書店を2021年5月に初めて、そろそろ丸3年になる。

これまでの経験や知見を社会にも広げていくために、冒険ワークショップのようなことを考えてみようかと思っている。

冒険のステップとしては、まず ①主体的に計画 を行い、次に ②計画の潜在的な危険性を予測 して ③自分の能力が計画に対して対応可能か を判断し、ようやく ④準備 を行い ⑤計画を実行 する。そして最後に、その結果を ⑥何か

もっとみる
感情を磨き、人間になれ

感情を磨き、人間になれ

昨日、小学校6年生たちに北極の講演をした。90分間、北極の自然や動物、冒険の様子をクイズを交え話した。

最後に、時代の変化の激しい今を生きる子供たちに「時代に取り残されないために」どうすべきか伝えたことは「時代を追うのではなく、時代が変化しても変わらないものを大事にしてほしい」と話した。

冒険心や挑戦心、人に対する優しさ、素敵な笑顔、仲間を大切にすること、100年前も100年後も、ずっと変わら

もっとみる
人間40過ぎたら、あとは余生なんですよ

人間40過ぎたら、あとは余生なんですよ

40歳を過ぎてくると、それまで自分の道をひたすら邁進していた人が「若い世代のために」「自分のことよりも社会に」と言い出す人が多い。

もちろん、そうではない人もいる。

私の周囲にも、登山や冒険の界隈の人で、かつては「冒険に社会性なんてない。社会と関わらない方がより美しい行為ができる」と断言していたような人物が、40歳を過ぎてしばらくした頃から「若い奴らのために」という言葉が出るようになり、ずいぶ

もっとみる
知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

知的情熱を体で表現する。読書と冒険の関わり

岩波書店「図書」2023年1月号に寄稿した文章です。
読書との出会い、冒険との出会い。そこに関わる本の思い出。

知的情熱を体で表現する

まだ私が極地冒険と出会う前のこと。自分には何かできるはずだという根拠のない自信だけを抱えながら、自分がいる場所から一歩も動けずにいた大学生の私は、本の中に未知の世界を求めていた。

思えば、活字を積極的に読むようになったのは中学生の頃。三年生の時の担任で国語を

もっとみる
冒険家になるには

冒険家になるには

一般的に「◯◯家」というのは、誰でも、いつでもなれる。

私は「冒険家」を対外的な肩書きとして使っている。時々「どうやったら冒険家になれますか?」と聞かれることがあるが、そんな時は「名乗ればいいんです」と答えている。

「◯◯家」は、言ってみれば全て「自称」でしかない。なるための試験があるとか、資格が必要とか、そんなものはない。

「◯◯士」もしくは「師」などの、いわゆる「士業」は資格が必要だ。弁

もっとみる
冒険者は城壁の中より逃走し、帰還して語る

冒険者は城壁の中より逃走し、帰還して語る

6年前の今日(1月5日)、無補給単独徒歩で南極点に着いた。

もう6年か、早いものだ。 その翌年2019年には若者たちとの北極行を行い、その後に世界はコロナウイルスに沈んだ。

そんなコロナ真っ最中の、2021年5月には事務所としていた神奈川県大和市の「冒険研究所」を書店として改装。

今日からは今年の書店営業を開始した。

そういえば、しばらく極地に行っていない。書店という新たな形の冒険をしてい

もっとみる
「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!

「北極男 増補版 冒険家はじめました」発売決定!

2013年に出版した、私の最初の著作「北極男」が、増補版として文庫で復刊します!

発売日は12月14日。単行本の時は講談社からでしたが、文庫は山と渓谷社に版元を移し、ヤマケイ文庫での復刊です。
2000年から2013年までの北極行をまとめていますが、各年の北極行を今の視点で振り返る増補を60ページほど書き足し、追加しています。

これまで「北極男」「考える脚」「PIHOTEK 北極を風と歩く」と

もっとみる
街の中での書店の役割。購買と投票の同一性

街の中での書店の役割。購買と投票の同一性

私が書店を始めて2年半になる。

神奈川県大和市に「冒険研究所書店」をオープンさせたのが、2021年5月のことだ。

「冒険家がなぜ書店を?」
とは、この2年半で何度聞かれたか分からない。ので、だったらその回答をまとめておこう、と思って書いたのが「書店と冒険」というZINEである。

全くの書店未経験から、さまざまな要因の糸が絡み合ったその結束点で「書店」というものが私の中に立ち上がってきた。

もっとみる
冒険と読書の同一性。主体性の話し

冒険と読書の同一性。主体性の話し

探検とは何か

 今から100年以上前の1911年12月。ノルウェーの偉大な探検家、ロアルト・アムンセン率いるノルウェー隊が南極点に人類初到達をした。
 しかしこの時、南極点初到達を目指したもう一隊が存在した。それが、イギリスの海軍大佐ロバート・スコットが率いるイギリス隊である。
 スコット率いるイギリス隊が南極点に到達したのは1912年1月。アムンセンたちに遅れること一ヶ月。スコット一行が苦難の

もっとみる
100マイルアドベンチャー2023

100マイルアドベンチャー2023

毎年夏休み、小学6年生たちとの旅を続けている。名付けて「100マイルアドベンチャー」

夏休み、小学6年生を対象に100マイル(160km)を旅する冒険の旅だ。開催地を毎年変えながら、今年で12年目となった。

これまでのルートは

2012年 網走 ー 釧路
2013年 東京駅 ー 富士山頂
2014年 大阪港 ー 福井若狭湾
2015年 厳島神社 ー 出雲大社
2016年 札幌 ー 大雪山旭岳

もっとみる