マガジンのカバー画像

北極冒険家が考える「人はなぜ冒険するのか?」

67
運営しているクリエイター

#アウトドア

冒険と読書の同一性。主体性の話し

冒険と読書の同一性。主体性の話し

探検とは何か

 今から100年以上前の1911年12月。ノルウェーの偉大な探検家、ロアルト・アムンセン率いるノルウェー隊が南極点に人類初到達をした。
 しかしこの時、南極点初到達を目指したもう一隊が存在した。それが、イギリスの海軍大佐ロバート・スコットが率いるイギリス隊である。
 スコット率いるイギリス隊が南極点に到達したのは1912年1月。アムンセンたちに遅れること一ヶ月。スコット一行が苦難の

もっとみる
100マイルアドベンチャー2023

100マイルアドベンチャー2023

毎年夏休み、小学6年生たちとの旅を続けている。名付けて「100マイルアドベンチャー」

夏休み、小学6年生を対象に100マイル(160km)を旅する冒険の旅だ。開催地を毎年変えながら、今年で12年目となった。

これまでのルートは

2012年 網走 ー 釧路
2013年 東京駅 ー 富士山頂
2014年 大阪港 ー 福井若狭湾
2015年 厳島神社 ー 出雲大社
2016年 札幌 ー 大雪山旭岳

もっとみる
自然は如何に導くか

自然は如何に導くか

3年前にFacebookに書いていたものを、過去の今日書いていた記事として発見した。ハロルド・ギャティ「自然は導く」を読んだ感想。3年前のものに追記して紹介。

GPSはもちろん、六分儀や地図やコンパスに頼らずに、かつての人たちはどのようなナビゲーションを行なって旅をしてきたか。

単純な話だが、五感をフル活用して、周囲の状況を観察し、理論があれば、それを持たない人からすればまるで第六感の超能力で

もっとみる
「冒険家」って仕事なんですか?

「冒険家」って仕事なんですか?

私は名刺に自分の肩書きとして「北極冒険家」と書いている。

初見で出会った人の9割は「冒険家って名刺始めてもらいました」とか「すごーい」とか驚いてくれる。

肩書きは、基本的には「他人のため」にあるものだと思っているので、自分のために名乗っているわけではない。自分一人で無人島にひっそり生きていたら、肩書きなんて必要ないだろう。だって名乗る相手がいないんだから。

名乗る相手がいるからこそ、肩書きが

もっとみる
共感を得ることとは何か

共感を得ることとは何か

北極を歩き出してもう20年になる。

2000年から始めた極地冒険は、2012年まではアルバイトをしながら貯めた資金で行なっていた。その頃の冒険費用は一回あたり100〜200万円ほどであり、日本にいる間の半年ほどで貯めていた。

2012年から北極点や南極点などの遠征を行うようになると、資金の規模も大きくなり、一回あたりが1000〜2000万円と、一桁上がることになった。

そもそもなぜ、それほど

もっとみる
人間の土地へ

人間の土地へ

9月25日に発売になった小松由佳さんの新刊「人間の土地へ」を読んだ。

日本人女性初の高峰K2(8611m)の登頂者であり、第11回植村直己冒険賞受賞者であり、フォトグラファーであり、シリア人の夫を持つ2児の母でもある小松由佳さん。

彼女のことは前々からは知っていたけど、直接顔を合わせるようになったのは最近のこと。

K2以降、どんな人生を歩んできたのかが余すことなく綴られている。

日本人女性

もっとみる
極地冒険とゴルフ

極地冒険とゴルフ

氷の海を行く。

歩いている間はあれだけ来たことを後悔して「もう絶対に二度とこんなことやらない!」と思うくせに、北極から帰ってきて体も気力も充実してくると、あのジリジリとしたエッジを歩くような毎日が恋しくなってきてしまう。

昨年2019年に若者たちとの北極行以来、一年以上経ってしまうと、どうにも心が北へ向き出してウズウズする。今はコロナの問題でなかなか出かけることもハードルが高くなっているが、気

もっとみる
100マイルアドベンチャー募集終了!

100マイルアドベンチャー募集終了!

今日、夏休みの100マイルアドベンチャーの募集を行い、8名の参加者が決定した。

100マイルアドベンチャーとは、2012年から開催している小学6年生たちとの夏休みの冒険旅。日本全国各地で毎年ルートを変えながら、100マイル(160km)を10日ほどの日程で踏破する。

これまで、東京駅〜富士山頂、厳島神社〜出雲大社、別府〜熊本城など、全国各地で開催してきた。

9年目となる今年は、小田原城をスタ

もっとみる
捨てることと得るもの。軽量化の深層

捨てることと得るもの。軽量化の深層

北極での徒歩冒険は、荷物の重量との闘いでもある。

最近では、2ヶ月分ほどの食料や装備一式をソリに積み込み、1000km程度の距離を歩く冒険を行うことが多い。

途中での物資再補給を受けたり、デポ(事前にルート上に物資を設置しておくこと)を設けたりもしないので、スタート時に全ての荷物を持ち、物資が切れる前にゴールをする。

2ヶ月分の食料などを積み込んだソリは、言うまでもなく重くなる。2017年末

もっとみる
100マイルアドベンチャー2020

100マイルアドベンチャー2020

今年で9年目となる、夏休みの小学6年生との冒険旅「100マイルアドベンチャー」を今年も行うことになった。

これは、日本全国各地で毎回ルートを変えながら、100マイル(160km)をキャンプしながら踏破するという歩き旅。

対象は小学6年生限定となり、日本各地から参加してくる。

これまでのルートの歴史はこんな感じだ。

2012年 網走 〜 釧路
2013年 東京駅 〜 富士山頂
2014年 大

もっとみる
一人の寂しさとは

一人の寂しさとは

6月になって社会も少しずつ再稼働を始め、人の動きも増えてきたようだ。しばらく自宅などに籠もりきりだった人も、久しぶりに友人や同僚に会えているのではないだろうか。

やはり、人間は人との直接的な触れ合いは何物にも変えられない感覚があるものだ。相手の目を見る、会話の間合いから感じる、手足の挙動に出る心理、やはりオンラインでは伝わらないものがあるのだろう。

私もこの3ヶ月ほどは、自宅と冒険研究所の往来

もっとみる
能動的受動がもたらさない変化と、アフターコロナの変化

能動的受動がもたらさない変化と、アフターコロナの変化

昨年の若者たちとの北極冒険に参加した、最年少の大学生ミホが、一年経って彼女の視線から冒険を振り返っている。

スタート前からぜひ読み返してもらいたい。素直な気持ちが飾られずに語られていて、そうか、こんなこと考えながら歩いていたのかと、私自身も気付かされる思いがする。

彼女は、600kmの冒険を終えて「超期待外れ!」だったと書いている笑

この気持ちは、もの凄くよく分かる。なんなら、こう思ってもら

もっとみる
説明可能性と、捉える実感

説明可能性と、捉える実感

昨年出版した拙書「考える脚」が、第9回 梅棹忠夫 山と探検文学賞に選ばれて受賞することが決まった。授賞式は6月の予定。

読んでない方は、是非読んでくださいねー!北極点無補給単独徒歩、カナダ〜グリーンランド単独行、南極点無補給単独徒歩、3つの遠征を収録しています。

今日、その受賞の絡みで雑誌の取材があった。これまでもたくさんインタビューは受けてきたが、人から質問を受けるというのは、普段自分の頭で

もっとみる
非常時と身体性の回復

非常時と身体性の回復

震災の記憶9年前の今日、私はカナダの北極圏にいた。友人と二人で、1600kmにわたる北極の徒歩冒険行を控え、現地の村でトレーニングをしている最中だった。

数日の海氷上での訓練を終え、村に戻った我々はネット経由で一つのニュースを見た。それは「宮城県沖で地震」という速報だった。

宮城県沖の地震なんてしょっちゅう起きるものなので、最初はあまり意識をしていなかった。しかし、直後から飛び込んでくる続報の

もっとみる