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【展覧会レポ】東京都渋谷公園通りギャラリー「⽇常アップデート」

【約3,600文字、写真約50枚】
東京都渋谷公園通りギャラリーに初めて行き「⽇常アップデート」を鑑賞しました。その感想を書きます。

【この投稿で伝えたいこと】
❶目立たないが東京都現代美術館が運営する骨太なギャラリー、❷殺伐とした渋谷に湧く、優しい気持ちになれるアートのオアシス、❸ユ・ソラなど今後に期待がもてるアーティストを堪能、❹渋谷に来た際は、フッラッと寄ることをおすすめします!(無料!)。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:⽇常アップデート
場所:東京都渋谷公園通りギャラリー
会期:2024年6月15日 (土) 〜 2024年9月1日 (日)
休館日:月曜日
開館時間:11:00-19:00
住所:東京都渋谷区神南1丁目19−8 都営神南1丁目アパート
アクセス:渋谷駅から徒歩で約8分
入場料(一般):無料
事前予約:ー
展覧所要時間:30分〜1時間
展覧撮影:全て可能
URL:https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2024/20240615-246.html 


▶︎訪問のきっかけ

看板

東京都渋谷公園通りギャラリー(以下、公園通りギャラリー)で、過去に興味をそそる展覧会があった時、ここの存在を知りました。そこで、今回は、渋谷でちょっとした用事の後に訪問しました。

私は偶然、展覧会の初日に行ったところ、アーティストの方が何名か在廊されていました。

▶︎アクセス

外観

公園通りギャラリーは、渋谷駅から徒歩約5分渋谷パルコの近くにあります。私がこの建物の存在を認識したのは「東京・渋谷の若者向けワクチン接種、抽選方式に変更も希望者殺到」(2018年9月)というニュースの時。

ワクチン接種のために建物に並ぶ人たち(画像引用

無料接種の実施は、ここがほぼ初めだったと記憶しています。まさか、ここはギャラリーだったとは。

住所:東京都渋谷区神南1丁目19−8 都営神南1丁目アパート

▶︎「⽇常アップデート」感想

看板

社会はコロナ禍以前と同じ毎日を取り戻したかのように、人と関わり、集い、再び動くまでにあゆみを進め始めています。しかし一筋の光が見えてきた矢先に新たな災害が起き、私たちの記憶に大きな出来事として刻まれました。(略)大なり小なり、毎日とはその繰り返しなのかもしれません。 本展では、見過ごされるような光景や体験、聞き慣れたことば、どこかの誰かとの共同作業、その日の大切な記憶や事柄の記録、安心できるいつもの風景などさまざまな観点で日常を思わせる6名の作家の作品から繰り返される日々を考えます。

公式サイトより

「日常」にフォーカスを当てた6名から構成された展覧会です。私は、このギャラリー全体を通して「優しい世界が広がっていた」(後述)と感じました。振り返れば「日常」に通じるコンセプトがあったなと再認識しました。

展覧会は3つのエリア「展示室1」「展示室2」「交流スペース」に分かれています。

✔️展示室1

展示室の風景

展示室1では、4名の作品が展示されています。

原田郁はらだ いく《WINDOW》
原田郁《GARDEN 2024 #01》《WINDOW 2024 #001》
一部はゴツゴツした素材で塗られ、いい具合に影感が出ている
土谷紘加の作品群

土谷紘加つちたに ひろかは2015年よりアイロンビーズを使って製作を開始。障害のある子どもを持つ母親たちが主体となって立ち上げられた共同作業所〈アトリエコーナス〉で、毎日約3枚の作品を作り、総数は2,500枚を超えるそう(参考)。

約14×14センチの作品はすべてリストがある
ユ・ソラ《日々を重ね、》
日用品に黒い糸で縁取りが施されています
本の装丁も丁寧に
個人的に充電器が好み

ユ・ソラは、1987年韓国生まれ。日本と韓国を拠点に、災害や事故などで突然失うこともある日常や些細な日々をテーマに、白く柔らかい布に黒い糸で刺繍を施します。日常を記録するような立体・平面作品を通じて、日常とは何かについて問い直すような空間をつくりだしている、とのこと(参考)。

この作品群は、展覧会のテーマにも一致しており、最もインパクトがあって人気もありそうでした。

ユ・ソラ《本木の家》

私は、洋服においてプリントではなく刺繍が好きです。1縫、1縫、人の手が加わることで、どことなく親しみが湧いてきます。プリントとは違った趣があります。

また、縁取りがある点も面白く、身近な漫画的な世界にいるような気になります。このように「刺繍 x 縁取り」からは"日常感"が強く感じ取れます。

さらに、ユ・ソラの作風からは、Joshua Videsジョシュア・ヴィーダスのような印象も受けました。

Joshua x BAPEのスニーカー(2024年3月購入)
ユ・ソラ《あの時の》
Gショックを白い糸で表現
飯川雄大《デコレータークラブ Pulling Time》

✔️展示室2

展示の様子

展示室2(というより廊下と出口、階段との間のスペース)では、3名の作品が展示。一部に触れる作品も置いてありました。

ユ・ソラ《積み重なる日々》
ユ・ソラ《壁時計》
こちらの作品群は触ることができます
土谷紘加《COLORNY》シリーズ
ユ・ソラ《ティッシュ》

来場者は、常に1〜2組いるような印象。なかには、中学生二人組や子連れ親子の姿もあったため、発展する渋谷の街にどこか取り残されたような公民館地域といったほんわかした雰囲気がありました。

建物の存在感が薄いものの、しっかりとそこに存在しています。このギャラリーでは、いつもの渋谷とは違う空気を感じることができました。

いざ、次のスペースへ

✔️交流スペース

「交流スペース」の入り口

このスペースでは、宮田篤と関口忠司ただし2名の作品が展示されています。宮田篤の作品は、実際に触ったり、制作に参加することもできます。主に、宮田篤の《微分帖びぶんちょう》がメインで展示されています。

ニシワキタダシ的なゆるい世界観

「微分帖は、《おとなもこどももあそべるぶんがく》ということにしています」とのことです。知らない人がどんどんページを差し込んで一つの本を作る取り組みです。仕組みは以下を見ていただくと分かりやすいです。

微分帖の仕組み(画像引用

今まで作られた微分帖がサンプルとしてたくさん展示されています。これらは実際に手に取って読むことができます。

手に取って読むことができる

数冊を手に取った中で、私は『おひめさまになりたい』が気に入りました。このプロジェクトは学校の工作で取り入れても楽しそうですね。

1本毛がキュートな女の子
右のページは左のページとは違う人が差し込んでいます
「ひめ」の一本毛も上手に再現している点がにくい
うまくお話がつながっていました。優しい心のリレーが見れたようでほんわかします

大都会・渋谷のこんなところに公民館があって、優しい世界が広がっているとは知りませんでした。

奥にいる方は宮田篤ご本人

会場に紙の作品リストはありました。しかし、HPには作品リストがなかったため、紙をスキャンしたpdfでもいいので、掲載した方がいいと思いました。

▶︎東京都渋谷公園通りギャラリーとは?

ロゴは「人」と「!」を表現

「東京都渋谷公園通りギャラリー」は、2020年2月8日にオープン。アートを通してダイバーシティの理解促進や包容力のある共生社会の実現に寄与するために、アール・ブリュット等をはじめとするさまざまな作品の展示等により、一人ひとりの多様な創造性や新たな価値観に人々が触れる機会を創出します」とのこと(分かったようで分からないお役所的な文章)。

アール・ブリュットとは、フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェによって提唱。広く、専門的な美術教育を受けていない人による、独自の発想や表現方法が注目されるアートです。いい言葉ですネ。

運営は「公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 文化共生課」です。館内やHPで東京都現代美術館MOTがフィーチャーされている理由はコレでした。私の好きな美術館であるMOTが運営していると聞くと、俄然、今後も注目する気持ちが湧いてきました😀

館内は普通の公民館(正くは渋谷区立勤労福祉会館)

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?地味であまり目立たないギャラリーですが、東京都現代美術館が運営する骨太なギャラリーでした。殺伐とした渋谷の街中で、優しいアートのオアシスが湧いていると言っても過言ではありありません。中でも、ユ・ソラ宮田篤は今後も注目したいと思いました。渋谷に来た際はフラッと寄ることをおすすめします!

▶︎今日の美術館飯

★3.3/Cafe Miyama 渋谷東口駅前店 (東京都/渋谷駅) - モーニングサービス 国産蒸し鶏のヘルシーチキンサンド (¥170)、ウインナーコーヒー (¥720)

▶︎おまけスナップ

渋谷はスナップをするには楽しい街ですね!特に、人混みは白黒写真と相性が良いため、ついシャッターを押したくなります。

Thank you for your support!