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2020年12月の記事一覧

うたかたの日々(日々の泡)

うたかたの日々(日々の泡)

「泡沫」。
「うたかた」と読む。
水面に浮かぶ泡。
儚く消えやすいもののたとえ。

ボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」。
肺の中に睡蓮が生長してしまう奇病にかかったクロエと、恋人のお話。

毎年、冬に風邪をひいて咳が胸のあたりから出ると、
「肺に睡蓮の蕾がね・・・。」
曇った空の色に、モネの「睡蓮」の薄紫色が思い浮かんで、
そんな風に冗談を言っていた。

しかし、今年はそんな冗談は言えない。

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モデラート・カンタービレ

モデラート・カンタービレ

人生は儚く、うたかたのよう。
という、フランス人作家、ボリス・ヴィアンの小説。
先日、「うたかたの日々(日々の泡)」について書いたものが、#音楽の記事で、うれしいお知らせをいただきました。

スキを押してくださった皆様、ありがとうございました。

うたかたについて・・・生きている時間について考えてしまいます。
焦る気持ちもありながら、

「時間を得ては時間を失い、時間に逆らって生きる」

という、

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ささやかな日常

ささやかな日常

昨年の今頃は、何をしていただろうか。
ささやかな日常に大きな変化が起きてみると、その大切さに改めて気付かされる。
自分の生活のルーティンが、普通に続くと思っていた日常が、コロナの影響で変わってしまった。

もう、マスクのない日常は、しばらく戻ってこないだろうし、人と簡単に物理的な距離を縮められなくなってしまった。
ハグしようにも憚られるし、握手でさえもできない。

人間同士の結びつき方が変わってい

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菫の砂糖漬け

菫の砂糖漬け

森茉莉「私の美の世界」に菫の砂糖漬けが出てくる。

薔薇、菫、なぞは見ても綺麗、
香り(におい)も素晴らしいし、
色も綺麗で、
漢字で書いても素敵である。
それに薔薇も菫も食べても美味しいのである。

薔薇と菫。
漢字で書くと浪漫を感じる。
森茉莉の世界は甘美で、ヨーロッパの香りがする。

以前、2月にスミレ祭りがあるというフランス南西部トゥールーズのお土産に、菫の砂糖漬けをいただいたことがあった

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『おしゃれの平手打ち』

『おしゃれの平手打ち』

『おしゃれの平手打ち』という本を、20代の頃に何度も読んだ。
引越しの度に本を整理したけれど、ずっと手元に残している。

映画評論、随筆、翻訳でも活躍された秦早穂子さんの本だ。
秦早穂子さんは、1950年代のヌーヴェル・バーグ誕生の瞬間に立ち合い、まだ、撮影中だったゴダールの『勝手にしやがれ』を世界で最初に買い付けた方である。

マレーネ・ディートリッヒ、キャサリン・ヘプバーン、ローレン・バコール

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イザラ・ヴェルト 色遊び

イザラ・ヴェルト 色遊び

イザラ・ヴェルトという、雪割草のリキュールを、初めて知った。

行きつけのシャンゼリゼのカフェで、イザラ・ヴェルトに出会う。アルプスの雪の下に咲く雪割草から作るリキュールで、ヴェルト(緑)と、ジョーヌ(黄色)の二種類あるという。年老いたガルソンの妙になめらかな説明に半信半疑ながらも、雪の下に咲く白い花を空想して、イザラ・ヴェルトを注文。エメラルド・グリーンの液体が、小さくて厚ぼったいリキュール・グ

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「肉眼の思想」

「肉眼の思想」

大岡信の『肉眼の思想』が出てきたので、ページをめくってみた。

最初に読んだのは、高校3年生の時だったと思う。
確か、芸術の評論に関する小論文が美大の受験にあったので、誰かに勧められたのだ。

古すぎて、もう、紙が茶色くなっているこの本を、パラパラとめくってみる。

現代芸術は今大きな過渡期の瀬を渡っている。その瀬の荒い流れ、大小さまざまな波にもまれつつ、自分の位置を確かめ、全体の展望を得ようと努

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はな と ほし

はな と ほし

2冊が一緒に箱に入っている『クリスマスプレゼント』。
1冊目は、はな。
2冊目は、ほし。
母と子のクリスマスのお話。

おとうさんがいないおうちの、おかあさんとむすめ。
クリスマスの1日を、それぞれの視点から描いています。

おかあさんは、かじかんだ手を何度もこすりながら、ケーキを売る仕事していています。
そして、おんなのこは、忙しく働くおかあさんと、パーティーをするのを家でまっています。

おん

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