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コンテンポラリーダンスを楽しむ公演・映像・映画レビュー

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コンテンポラリーダンスを中心とした舞踊の公演レビューです。多様で面白いダンスの世界を紹介します。
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Co.山田うん『ノクターン』世田谷パブリックシアター

Co.山田うん『ノクターン』世田谷パブリックシアター

日本のコンテンポラリーダンスのカンパニーとしてよく知られているCo.山田うんによる新作だが、若手新人振付家の作品のようで、それでいて新鮮味は感じられず、既視感だけが残るような公演だった。以前見た規模の大きい公演とは違う魅力があったのかもしれないが、感じ取れなかった。

日程:023年12月1日(金)~ 12月3日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
上演時間:約1時間20分(休憩なし)
チケット

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アップデイトダンスNo.101「踊るうた3」勅使川原三郎、佐東利穂子(カラス・アパラタス)

アップデイトダンスNo.101「踊るうた3」勅使川原三郎、佐東利穂子(カラス・アパラタス)

勅使川原三郎さんが踊る「踊るうた2」がとてもよかったので、今回も見に行った。「踊るうた」シリーズでは勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんがそれぞれソロで踊るらしい。どの回でどの方が踊るかは(おそらく)公表されておらず、勅使川原さんだといいなあと思いながら行ったのだが、佐東さんが登場。一瞬がっかりしたが、踊り出すと素晴らしくて、佐東さんの回を見られてよかったと思った。

上演後に佐東さんが「歌で踊るとい

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平山素子×笠井 叡『「フーガの技法」を踊る』バッハのピアノ生演奏でダンス

平山素子×笠井 叡『「フーガの技法」を踊る』バッハのピアノ生演奏でダンス

バッハの「フーガ」14曲をピアノ生演奏で2人のダンサーが1時間強踊る公演。

もともとはより少ない楽曲数で公演時間も短い、舞踏・オイリュトミーの笠井叡さんが平山素子さんに振り付けた作品だったという。当初は曲は録音音源を使用していた。その作品を発展させ、笠井さんも踊りに加わって生演奏としたのが本作。笠井さんの本拠地「天使館」や愛知でも上演されている(横浜公演のピアニストは佐藤浩一さん、愛知公演のピア

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康本雅子『全自動煩脳ずいずい図』KAAT 神奈川芸術劇場

康本雅子『全自動煩脳ずいずい図』KAAT 神奈川芸術劇場

再演のダンス公演。

赤ん坊と性愛がクロスしたり?冒頭に赤ん坊の泣き声がセクシー声に変質しかけるみたいな声をダンサーたちが出してスマホに録音していたので、後で使うのだろうなあと思ったら、案の定最後にその録音音声を流していた(舞台の冒頭で録音したものかどうかは実はわからないが)。

出演者は服を脱いで水着のような格好になるのだが、一人脱がない人がいて、黒子的にも働くような立ち位置。

激しい曲に乗っ

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「STOMP ストンプ」イギリス発の音楽パフォーマンス来日公演

「STOMP ストンプ」イギリス発の音楽パフォーマンス来日公演

デッキブラシ、バケツ、ごみ箱、ビニール袋、タイヤチューブ、紙、スーツケースなどを「楽器」として、パフォーマーたちが身体全体を動かしながら演奏を披露する舞台。タップのように足を使った動きも多用。

打楽器のような使い方が多いので、基本的にはリズムが中心になるが、柔らかいゴム状の(?)棒(タイヤチューブを切ったもの??)や鍋のようなもの(ごみ箱の蓋??)は、所々メロディーを奏でているかのようだった。後

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『エアー~不思議な空の旅~』ラルンベ・ダンサ(シアタートラム)

『エアー~不思議な空の旅~』ラルンベ・ダンサ(シアタートラム)

せたがやこどもプロジェクト 2023《ステージ編》。スペインのダンスカンパニーによる、子ども向けのダンス×3D映像シリーズの舞台。

ラルンベ・ダンサは、マドリードを拠点とし、2021年に設立50周年を迎えたダンスカンパニー。社会問題などを取り入れた子どもや若者に向けた作品を発表している。本作は「環境問題三部作」の一つ。

同じマンションに住む顔見知り程度の仲の2人がエレベーターに閉じ込められる。

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ダンス『ランボー詩集 ー地獄の季節からイリュミナシオンへー』勅使川原三郎(東京芸術劇場)

ダンス『ランボー詩集 ー地獄の季節からイリュミナシオンへー』勅使川原三郎(東京芸術劇場)

「芸劇dance」シリーズとして上演。

最初から最後まで吸い込まれ、終盤泣きそうになる。

舞台中央に置かれた、開いて縦置きした巨大な本のセット。そこをダンサーが出入りしたり、本が最後はページを繰られ閉じられて神殿や扉のように見えたり。

音楽の急激な変化や照明の切り替えなど、一部の隙もなく観客を引き付ける演出。聖なる調べの歌声から激しい電子的な音へ。舞台セット・美術が変化したくらいのインパクト

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「バラ色ダンス 純粋性愛批判」川口隆夫(シアターX)

「バラ色ダンス 純粋性愛批判」川口隆夫(シアターX)

チラシのヴィジュアルと紹介文を見て意味がわからないけど見に行こうと思ったのだが、見た後にチラシを見返したら、ヴィジュアルと紹介文どおりの公演だった。

1960年代の舞踏の文脈を知らずに見たのだが、妙な明るさを感じる舞台。暗さや気持ち悪さも明るさに昇華している。現代のお利口さんの風潮とは違っていて、心なしか、すかっとする。

開演前に舞台上に横たわる全裸の男性、その上で繰り広げられるバトミントン、

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『Rain』鈴木竜 × 大巻伸嗣 × evala、米沢唯主演のダンス(新国立劇場)

『Rain』鈴木竜 × 大巻伸嗣 × evala、米沢唯主演のダンス(新国立劇場)

サマセット・モームの短編小説『雨』を原作とし、「舞踊・美術・音楽の三位一体」をうたうダンス公演。2021年夏頃からリサーチを開始して小説を読み込み、ディスカッションを経て制作を進めたという。

原作小説は1921年にイギリスで発表された。感染症まん延のため南の島で足止めされた医師夫妻と牧師夫妻、そして売春をする女性らを巡る物語。牧師は毎晩、売春をやめるよう諭しに女性の部屋を訪れるがーー。

ダンス

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創作舞『雨ニモマケズ』

「伝統と創造シリーズ vol.13」

舞う人、歌う人、奏でる人がいて、みんな声も出す。

一人一人は才を持っているのかもしれないが、それらが見事に不協和音となり台無しになってしまっている。その中でも、津村禮次郎さんの動きと声は魅力を放ち、存在感が際立っていた。

森山開次さんと大前光市さんの踊りやせりふには感銘を受けず、笑いを取るつもりらしい場面もファン向けの内輪受けという感じでまったく面白くな

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見に行ったダンス・バレエ・演劇・伝統芸能・オペラ・ミュージカル(劇場、コンサートホール)

東京楽所 第16回雅楽定期公演 「新春の雅楽」春鶯囀一具 六人舞
サントリーホール、2023年1月

「Echoes of Calling―rainbow after―」北村明子、東京芸術劇場、2023年3月

新国立劇場バレエ団「コッペリア」2023年2月

「特別講演 ダンス ヴィデオ トーク 春が来たよ~」勅使河原三郎、佐東利穂子、宮田ケイ、2023年3月、カラス・アパラタス

国立能楽堂シ

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「ル・グラン・ガラ 2023/Aプロ」パリ・オペラ座バレエ(東京文化会館)

「ル・グラン・ガラ 2023/Aプロ」パリ・オペラ座バレエ(東京文化会館)

パリ・オペラ座バレエのダンサーたちによるガラ。まずはAプロを鑑賞した。すべての演目が男女ダンサー2人の組み合わせだった。

クラシックバレエガラで上演されるクラシックバレエは、いわばハイライト版。全幕上演と異なり、全体の流れの中ではなく単独でパ・ド・ドゥなどを見せるため、ドラマ総集編、コンクール、サーカスなどに近い印象になる。舞台セットも、今回の場合は、演目によって、ほぼ無いか、簡素に家具などの大

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Baobab 第15回本公演 Re:born project vol.7+8「ボレロ -或いは、熱狂。」シアタートラム

Baobab 第15回本公演 Re:born project vol.7+8「ボレロ -或いは、熱狂。」シアタートラム

冒頭、Perfumeの曲「ポリリズム」に乗って、Baobab主宰の北尾亘さんとダンサーたちが舞台(台にはなっておらず、床が舞台としてのスペースで、正面席と後方席=特設席が階段状に設置されている)から観客に声をかける。マイクも使っていた。若干滑っている大道芸のような趣。

観客と一緒にダンスを作り上げたいと述べ、どのダンサーの踊りが見たいか、体のどのパーツを使って踊ってほしいか、などの意見を観客から

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Noism0/Noism1「領域 Field」めぐろパーシモンホール 大ホール

Noism0/Noism1「領域 Field」めぐろパーシモンホール 大ホール

Noism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ)のダブルビル。20分間の休憩を含めて80分程度。

金森穣さん振付、金森さんと井関佐和子さん出演の『Silentium』は、天井から砂のような粒が舞台上に降り注ぎいくつか小さな山を作っている中で踊られる。以前、Noismの別の作品でもそういう演出があった。

衣装は金色のひらひらした感じの宇宙っぽいデザイン。もう少し体にフ

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