NDT1 Japan Tour 2024 全5作品鑑賞の感想
オランダのNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)の来日公演。2019年の横浜公演を見て以来のNDT鑑賞だった。5人の振付家による5作品が、3作品ずつ上演されており、5作品を見るには2回公演を見に行く必要がある。
「Solo Echo」クリスタル・パイト振付
カンパニー キッドピボットの振付家。クリスタル・パイトの作品を見るのは「The Statement」「リヴァイザー/検察官」に続いて3作目。
夜空に散らばる満天の星空のような、あるいはきらめく水滴のような(と思ったら作品説明には「降りしきる雪」とあった)背景で、ダンサーたちが追いかけ合ったり折り重なったりする。
しっとりとした中にも優しさと明るさ、前向きさが際立つ。パイトはポジティブな人なのかなと思う。夢見るような美しさにあふれた作品。
「La Ruta」ガブリエラ・カリーソ振付
ピーピング・トムの振付家。2023年の来日公演、ピーピング・トム「マザー」を見ていたので、そのとおりの作風だった。
とはいえ驚かされることの連続。濃密な1時間の演劇を見たような心地になった。
タイトルはスペイン語で「道」の意味。深夜、街角の小さなバス停のある道で繰り広げられるホラー物語のよう。死者、ゾンビ、幽霊(?)が現れては去っていく。人間と異界の者の境目が曖昧になる真夜中の出来事。
照明の使い方がすごい。車や鹿(?)、光を放つ小型冷蔵庫のような箱(?)など、道具の使い方も巧み。
ダンサーたちは(命のない)人形のような身体の動きもしなくてはならないが、もっとダンサーっぽくなく、「物体」のように動けたら、さらによいのだろうな。
キモノやサムライ、刀など、日本的なモチーフも取り入れられていて、日本語のせりふがスピーカーから流れるシーンもある。
「I love you, ghosts」マルコ・ゲッケ振付
マルコ・ゲッケの作品を見るのは2作品目。1作品目は、2019年のNDT来日公演で見た「Woke up Blind」。
「Woke up Blind」も、ベタなラブソングを流しながら、その歌からは予測もできない身体の動きを見せていた記憶がある。本作でも、最初と最後の曲は英語の懐メロ的(しかもかなり古い)な歌(「Try to Remember」と「Danny Boy 」)だった。
途中でダンサーたちは吐くような声を出し仕草をする。そういう気持ち悪さと美しさが一体となって差し出され、戸惑いながらも、吐きそうな動作の場面に爽快感さえ覚える。不気味さとユーモア。醜さと美しさ。
最後のシーンではなぜか思わず少し泣けてしまう。
醜悪さを恐れないところと、小刻みな動きなどが舞踏も思わせる。
「Jakie」シャロン・エイアール& ガイ・ベハール振付
L-E-Vの振付家。
とてもよかったと思うのだが、寝不足による睡魔に襲われ、終始きちんとは見られなかった。あんなに引き込む力を持っている作品なのに…。再見したい。
群舞の力強さにベジャールの作品を連想した。しかし身体たちが一体となって溶け込んで動く様子はまた違う感じ。(今なんとなくキノコを思い浮かべた)
縫向けによって乏しい感想だが、よい作品だったと思う。
「One Flat Thing, reproduced」ウィリアム・フォーサイス振付
2000年初演の、いわゆる「テーブルダンス」の一種らしい。今見てもある程度新鮮に思えるのもすごい。
ルールに従って動いているだろうことは推測できるが、閉鎖的には感じない。常に、次はどうなるのだろう?と先を楽しみにするマインドになり、予測どおりの展開だったり予測を裏切られたりして、目が釘付けになる。
まとめ
2019年の来日公演時はあまり熱狂できなかったのだが、今回のラインナップはかなりよかった。2019年のときは鑑賞したときの私のコンディションがいまいちだったのかもしれない…。
全5作品を見られて本当によかったと思う。NDTはまた機会があれば見に行くだろう。
世界で最高の部類に入る振付家たちの作品をレパートリーとするNDTのパワーを感じる。長年コンテンポラリーダンスの(オーセンティックな、というのだろうか)先頭を走り続けてきているのもすごい。
神奈川(横浜)公演で5~18歳、愛知公演で小中高生の無料招待をしていたのもよい(愛知県芸術劇場ではほかの公演でも無料招待を実施しているらしい)。18歳以下でこういう作品を見られたら、人生が変わる人もいるかもしれない。
▼来日公演公式サイト
▼18歳以下無料招待について
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