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レントよりゆったりと〔随想録〕

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#ポエム

詩にLINEを送れたらいいのに【日記】

詩にLINEを送れたらいいのに【日記】

課題として書かなくてはならない詩を1件抱えている……のだが、とても大事にしたい詩なので時が来るのを待っている。半生かけて大事にしてきた本と今の自分との間に生みだす詩を、適当には書けない。実は締め切りはとうに過ぎているのだが、先方は待ってくれる団体なのでとても助かっている。これまでも何度か謝罪のメールを入れたのだが、「全然大丈夫ですよ〜期日は目安です!」といった軽い返信。同じメールを何度も送らせるの

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【詩】次元キャンバス

【詩】次元キャンバス

 「次元キャンバス」

 わた菓子を連ねたような林だ

 毎朝 差し込まれるわずかな時間

 視界の水平120°に手を広げ

 意識と向き合う 静かな林だ

 わたしはその奥行きを未だ知らず

 ましてや 時の奥行きまで知るすべもなく

 それは遠いキャンバスに描かれた

 小さな樹海の油絵に過ぎないのか

 ふと 林の手前で

 青田に隠れて青鷺のこうべが揺れた

 林を見つめる後ろ姿は 心細そ

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放課後、8組の教室

放課後、8組の教室

カーテンが身じろいだのは
風のせいではなく
T君の怒号が飛んだからだった
瞬時に凍りついた8組の教室は
嫌われていた担任教師と
全くおなじ表情で固まった
他クラスの俺は
居たたまれない気持ちを抑えながら
その動向を注視していた
眉をひそめるクラスメートらに構うことなく
畳みかけられる罵詈雑言
担任教師の元々青黒かった顔が
さらに青ざめていく
容赦がないという尺度において
あれほどのものは見たことが

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5年目の自己紹介と自選作品

5年目の自己紹介と自選作品

あれれ4年目どこいった?笑
えっと、去年書いた「3年目」がウソで、どうやらnoteを始めて4周年、5年目に突入する模様です。いつもお読みくださりありがとうございます!

さて、先日noteでやり取りをさせて頂いていた方がnoteから卒業されることを表明され、一抹の寂しさが胸に滲みました。4年もやっていれば少なからず別れもありますね。

「なんでこんな素敵なクリエーターに反響が集まらないんだろう!?

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note 3年目の自己紹介

note 3年目の自己紹介

いつもお読み下さりありがとうございます。
noteを始めて丸3年が経とうとしています。
詩を書いたり、コラボしたり、140字ストーリーや小説を連載したり……で、少々煩雑になってきましたので、ここいらで整理して紹介させて頂きます(人はこれを宣伝と呼ぶ)
読者のみなさまが興味を持てるコンテンツを見つけてくれることを願います!



現在稼動中のマガジンです。
今ホットなのは『ひねくれ大学生日比野くん

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きょうのおみくじ

きょうのおみくじ

 昨日は初詣へ。その足でアウトレットに行き、本当に欲しいものを1点だけ探して買う、というささやかな楽しみを満喫しました。

 2019年、家人は大厄ということでお祓いもしてきました。悪いものを全て落としきったところで[おみくじ]を引いたところ、なんと家人には大吉が、僕には凶がでました。世間には辛辣な運勢を占うおみくじを提供して、身も心も引き締めてくれる神社仏閣もありますが、参拝したところはそうい

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エッセイ「愛についての講義を終わらせようと思う」#執筆観

エッセイ「愛についての講義を終わらせようと思う」#執筆観



注)この文章にはいくつかの読み方がある。数多ある良文に対峙するように「真剣に読む」の他に、「ハロウィンで獲得したお菓子を片手に、ただスクロールする」や「大人になってから中学時代の文集を見るように大笑いしながら」などである。どちらかと言えば後者をお勧めする。このような注を付するのは、筆者の羞恥心ゆえのことなので、どうかご容赦頂きたい。



 思えば「愛」について20年近く考えてきたようだ。

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詩集『青い風花』(文庫版) 発売しました

詩集『青い風花』(文庫版) 発売しました

 この度、幻冬舎より詩集『青い風花』を刊行いたしました。2015年に単行本として出版した作品ですが、今回は新作「組曲/巡る風花」を加えての増補新装版・文庫化になります。

 詩や文芸について偉そうに語れる身分ではありませんが、あとから見返すと「文章のようで、言葉のようで、意味のようで……」、そんな詩集になったと思います。そして、私の作品のようで、もう私の作品ではない。きっと誰のものでもない花びらと

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新元号「令和」。『万葉集』の序文を読んで、北宋の詩人・蘇軾(蘇東坡)による梅花の詩も思い浮かんだ。他国がどう、日本がどうとかではない。山中の遠い梅花を望み、平和について思いを馳せたり……梅の枝を小瓶に飾り愛で、平和を噛み締めたり……平和への祈念は国や時代を跨ぐ……と僕は信じる。

日光浴

日光浴

 月に二度、木曜の休日を用意した。

 冬の朝には、起きたらすぐにベッドルームのカーテンを全開にする。なかなか拭く暇もなく、土埃でコーティングされた窓。そこに陽が差し込んでも、冬の日差しはほんの少し頼りなくて、様々な人の営みに負けてしまいそうだ。

 今日は曇りだった。雲たちさえ、人の味方をするのだろうか? 僕はベッドの上に陽の当たる場所を見つけて、そこに寝転がった、仰向けに。そして読みかけのアー

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とある塔の頂で

とある塔の頂で

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある塔の話。

 聞こえるか、摩擦で上げる雄々しい叫びが。見えるか、対比が示す猛々しい建造が。そうだ。上へ、上へ、上へと積み上げてきた塔だ。烈しさゆえに、物々しくも濃霧に隠された、輪郭と鋭角の象徴だ。

 こんな伝説がある。塔の最も高いところに剣を突き立てた瞬間のこと。稲妻が龍の如く天へと昇り、分厚い暗雲をつんざく、と。霧が晴

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とある泉のほとりで

とある泉のほとりで

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある泉の話。

 立ち込める霧は視界の全ては遮らない。霧は、泉のまわりにある原生林や山々や、その輪郭と色合いをうまく柔和させている。目の前の光景をむしろ美しく、ただ美しく見せ、旅人らを妖しげに誘っていた。
 霧と凪は仲良くしていた。ここでは晴れやかな陽気よりも、閑寂とした空気の方が似合うみたいだ。快活な太陽が照らせば、すぐさま光が

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