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Pretense

姫は嘯く「わたしは姫だ」と 無骨な戦士は怒りを覚えた 不遜な態度が鼻についた 世間知らずに手を焼いた の、いずれでもなく…… 戦士が隠し持っていたものは 「わたしこそが姫たるにふさわしい」 という信念だった 戦士は姫を抱いた その信念は誰にも知られず ただ欲情の顔をしていたから

note 3年目の自己紹介

花崗岩の中にクリスタルのぼくが埋まっていることを信じてやまなかった僕は水切りに引導を渡された。現世の記憶が泡のようにまとわりつき振りほどきたい振りほどきたくない重みに沈む。そこでもまた輝きを探し始める。それが果てしない上流で僕が拵えたものと知った頃、全ては泡となって蒸発していた。

夜の「おはよう」をおかしいと笑うかい?

ねえ聞いて、パパ、きのうね 空が海のマネっこしてたんだ もしかして、もしかしたらね 海は色んなところにあるの? そうだな……たとえば…… 空も大地も宇宙も海だ 本に広がるのも海だ 人類の歴史は海だ 人の記憶は海だ キミの明日も 海の一部だ この愛も海だね この愛も海だな

夜の色香〔詩〕

日比野は困惑した。地球儀を眺めていた。部屋をお洒落にしたくて買ったものだったが、望んでいたものと違ったのだ。大きさも傾きも回り方も。 彼は地球儀の台を乱暴に掴み、床に投げつけようとした! …が、すんでのところで踏みとどまった。 その両足が立つところにも、1つの大地があったからだ。

散文詩「なぞった指で」

知らぬ恋

結びの花

日比野は頭を抱えた! ネコを飼ったらモテると思っていた。いやそんなことより、飼い出したのは癒されたかったからだ。しかしそうはならなかった。 彼はそもそもネコが好きでなかった。 机に突っ伏した日比野の肩にネコがそっと手を置いた。お礼を言おうと面を上げると、ネコの残像が揺れて消えた。

日比野くんの日記(2019/7/5)

日比野は凝視した。檻の中のチワワを。 コイツを憎めば…コイツさえ嫌いになれれば…もう何者にも心許さず、傷つくこともあるまい。 店員の攻撃「抱っこしますか?」を鼻であしらい、勝った気で家路に着いた。 夢でチワワは腕の中にいて上目遣いにこう言った。 「嫌いになれるかな?」 日比野は…

いつも誰かに叫んでいた。身の内に混ざり合う、色なき色を、音なき音を。口づけをした。いつになっても伝わらないから。心の銀河に融け合いたくて、あらゆる境を失いたくて。流れゆく軌道、星の想いの邪魔をしないで。あらゆる言葉を捨てた日に、刹那に煌めく猫の目の色。叫ばれていたのは私だった。

オトコたちは雑音の渦に消え失せ、誰も脱げよと言わなくなった。もしかして私が悪いのか。ちょうど目尻が皺を刻んだ頃だった。目の前にいる優男。何も言わない情けない。飼いならされた子犬のよう。仕方なく私は2人の間に危険なオトコを飼うことにした。触れる指先が脱げと言ってる。うるさい脱ぐよ。

日比野は両手で机を叩いた! PCの画面の中で、「自分らしく」と謳う人らが徒党を組み、「嫌われろ」と教える人らがまあまあ好かれ、「鈍感力」を自慢する人が実は鋭敏で、「孤独を愛する」と言う人はよく愛されていたからだ。 そして日比野は気付いた。 俺は俺であると同時に俺ではない。

日比野は遊具で遊んだ。童心に帰りたかったのだ。1人で揺らすブランコは…その…よかった。 不審に感じたママが通報して、警官がひとりやって来た。 「キミ、身分証を……あれ、日比野君?」 「田中君!?」 まさか本当に童心に帰れるとは! しかしそれは一瞬のこと。彼の名は田中ではなかった。

暁の下

日比野は壁のポスターを破いた。 天の川の天体図。願いは今年も叶わなかった! 勢い余った彼は、横に掛けた日めくりカレンダーも一枚破いて出て行った。 窓際の小さな笹の下、一枚の短冊が揺れる。 [落ち着きのある人になりたい] 八つ当たりされたカレンダーが、ひと足早く七月七日を告げた夜。

日比野は恨んだ。「タピオカ」を忌み嫌っていた過去の自分を。初めて飲んだそれは…とても…美味しかった。 それから彼は色んなタピオカドリンクを飲み、味を研究し評価をノートにまとめ続けた。しかし最初の味を越えるものには出遭えなかった。 美味しかったのは、好きな女の子と飲んだからだった。

林檎とルビーが喧嘩していた。僕はその横を徐に通り過ぎた。あの日、一瞥して冷笑するにとどめ、そして深い森へと入っていった。しばらくして風の噂で聞いた。彼らはまだ戦っていると。血も流れたらしい。痛みを感じた拳を開くと、掌には赤くて丸い何かが在った。傷一つなく、輝きもなく、うなだれて。

すべて諦めたイチゴの精霊が力なく首を垂れる。こうしてただ1人の舌を悦ばせた。頬を赤らめたのは食べてもらいたかったからだ……なんと都合の良い解釈。本当は頬を撫でて欲しくて、話もしたがっていた。ただ君たちがすごい勢いで大きくなって、すごい速さで摘むものだから、抗う気力もなくしただけ。

花を買って帰ったアナタがあまりに得意顔だったから、玄関に飾ってみたよ。出がけにあなたを感じられるように……とは言ったけれど、本当は、部屋に飾ればいつもアナタを感じてしまうから。花って残酷だね。信じる気持ちも疑う気持ちも、期待も不安も、一緒くたにして咲き誇るなんて。

海の片隅で待っている

もう少し