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ケンヨウの階層

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自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。
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#思い出

[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

 noteで詩を書く人の作品を読んでいると、7〜8割くらいの作品が「恋」や「愛」について書かれている、もしくはそれらを想起させる言葉が散りばめられている。男女問わず、いかに「恋」や「愛」が人の心をトリコにしているかがわかる。
 それらを読んでいると、時にはくすっとしてしまったり、時にはなんだか心をくすぐられたり、時には、自分とは正反対の方法におどろいたりと、人の恋というものは奇想天外で、自分とは違

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[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

 今年はいつもよりあたたかな12月で、つい先日まで本当に寒いと思える日はいつも以上に少なかったが、ここ1週間くらいは底冷えで、あ、いつもの冬がやってきたな感が出てきた。そのせいで、いつもより遅くなったが、クローゼットの奥からヒートテックのタイツを引っ張り出して、これでようやく冬の準備が完了したような気がした。そして、気がつけば今年も終わりつつある。
 この季節は寒さと相まって、いろいろと昔のことを

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[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

 先日、久しぶりに食事をしながら眠ってしまった。とは言っても、一瞬意識を失った程度のもので、ガクンと目の前が上下する現象に見舞われてことなきを得た。しかし、食事をしながら寝落ちとは、学生時代の2徹明けの吉野家以来だった。
 とにかく、最近眠い。酒を飲もうことなら、すぐに酔い、横になった瞬間に寝られる自信がある。この週末も朝に起きられず昼まで寝て、起きてまたボーッとしていたら、夕方になっていた。天井

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[ちょっとしたエッセイ]香水のつけかた

[ちょっとしたエッセイ]香水のつけかた

 友人と、ある焼き鳥屋に入って、カウンターで近況を話していた。目の前の焼き台からもくもくと煙が出るのを見ながら、肉の焼ける音と香りに腹が減ってきた。レモンサワーをチビチビと飲みながら、鳥の焼ける匂いに、ほんのり酔っていた。すると、ややけたたましい声が入口の方から聞こえてきた。女性3人組が僕らの横に陣取る。
「まじ、部長ありえな〜い」
 なんていうありがちなOLの仕事帰りの会話が耳に入った。鳥の焼け

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[ちょっとしたエッセイ]鬼はおおげさに、福はしめやかに

[ちょっとしたエッセイ]鬼はおおげさに、福はしめやかに

豆まきの時期がくると、小さな子どものいるわが家は保育園やら学校やらで豆まきが催されるので、嫌が応にも節分モードになる。
3歳の長男は、トラ柄のパンツを穿き鬼に扮して自由奔放。9歳の長女はそれを見て失笑しつつも豆を持って長男へ攻撃するのが楽しい模様。父親は、まぁ仕事の都合上遅めの帰宅なので、玄関で豆の歓迎を受け、そのあとひとりさみしく掃除をするのである。

いつの頃からか、節分など季節柄の催事なんて

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[ちょっとしたエッセイ]恩師という存在について

[ちょっとしたエッセイ]恩師という存在について

 先日1通のメールが届いた。この春に、僕が中高時代にお世話になった先生が定年退職されるというものだった。『お世話になった』という言葉を使ってみたものの、自分としては違和感がある。文章の便宜上、使用したと思っていただきたい。

 自分の学生時代、つまり今から25〜30年前ということだから、その先生は、当時、今の僕より若かったわけだ。
 写真も添えられていて、確かに白髪が増えているし、心なしか背中も曲

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[ちょっとしたエッセイ]上段の左から3番目の青いやつ

[ちょっとしたエッセイ]上段の左から3番目の青いやつ

 駆け足でコンビニに入ると、そのままレジに並んだ。夕方のコンビニは、様々な様相の人であふれあふれている。上着のないスーツの兄ちゃん。数人で笑いながら並ぶ学生らしきかたまり。明らかに人の多さに辟易するおばあさん。なぜ今なのかと、弁当を大事そうに持つ女性。とにかく忙しい雰囲気で満たされている。
 僕は、その入り組んだ列から、レジの奥を何度か伺っていた。そこにあるのはタバコの陳列棚だ。必要なタバコの番号

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[ちょっとしたエッセイ]ボクらは小さな羊飼い

[ちょっとしたエッセイ]ボクらは小さな羊飼い

 先日、クリスマスで賑わう街中を歩いていたら、ある雑貨店の店頭で馬小屋の置き物を見つけた。すると、幼い頃い通っていた教会のことを思い出した。
 わが家は母がクリスチャンで、毎日曜は母に連れられて僕たち兄弟は、教会へ通った。とはいえ、僕自身、宗教的なものへの関心は当時からあまりなく、教会の後に立ち寄る喫茶店でのモーニングセットが目当てだった気もする。
 それでもこの季節は、アドベントためミサの後はお

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[ちょっとしたエッセイ]手のひらに隠された1000円札

[ちょっとしたエッセイ]手のひらに隠された1000円札

 少し前のこと。街を歩いていると、小学校高学年くらいの子どもと、たぶん祖母にあたるくらいの高齢とまではいかない女性がなにやら真剣な面持ちで話している姿を見た。すれ違う際に、

「なんていうところのが欲しいの?」
「う〜ん、わかんない」

 そんな会話が聞こえた。子どもの方は、耳にイヤホンをしていて、この状況にやや辟易しているように見えたが、もう一人の女性の方は、スマホを真剣に眺めながら、画面を操作

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[ワレ想う故の90年代]vol.01

[ワレ想う故の90年代]vol.01

今から遡ること20〜30年前のこと。
僕は90年代という時の流れの中にいた。
制服のポケットから垂れるチェーン。
呼び出しベルに一喜一憂。
紙のメディアを買い漁り、足で自分のアイデンティティを得る。
クルクル回る円盤が僕らの世界の中心だった。
音楽が途切れないように、やさしく足を運び必死で衝撃を和らげた。
いつでも心底信じられるのは、耳から得る旋律とその目で見た活字だけだった。まさに僕のミームのコ

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[ワレ想う故の90年代]vol.02

[ワレ想う故の90年代]vol.02

1994――恋の訪れとドーナッツ
澄み切った空を見ると、外へ出かけたくなった。
左利きの偉大なミュージシャンが死んだことを新聞で知った。
涙は出なかったけれど、僕の心が軋むような圧力を感じた。

ある土曜日、寄宿舎から駅の方へ向かう道すがら。
あの頃は、スマホがない時代だったから、歩く時は決まってポケットに手を突っ込んでいた。もちろん目線は鼻から上が当たり前で、いろいろな景色を見ているような見てい

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