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ぺんすけの好評記事たち

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「すべて真夜中の恋人たち」(川上未映子 著)

「すべて真夜中の恋人たち」(川上未映子 著)

「夏物語」を読んでから、私のなかでちょっとした川上未映子ブームが起きています。もともとそんなに本を読むほうでもないので、今まで同じ人の作品を立て続けに読んだことがあるのは村上春樹と河合隼雄くらいなのですが、川上未映子さんもその一角に入ってくるかもしれないと思っています。

一回目に読み終わって、これはもう一回読まないといけない気がしました。恋愛小説のようでいて、通奏低音のように別のテーマが進行して

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「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ 著)

「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ 著)

以前から気になっていた本なのですが、文庫本になっているのを見つけたので購入してみました。裏表紙のあらすじには

とあり、孤独な二人が出会って穏やかに愛を温め合うようなストーリーを想像して読み始めました。出だしこそ同世代との出会いがあったりして明るい展開の予感がするのですが、読み進めるごとにその期待は見事に裏切られます。「生きるぼくら」(原田マハ)序盤にあったいじめの描写もきつかったですが、この本で

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「針と糸」(小川糸 著)

「針と糸」(小川糸 著)

この前の「夏物語」でエネルギーを使い果たしてしまったので笑、ちょっとエッセイでも読んでみようかなと思いました。小説を読むのって重要な伏線を読み落とさないようにしないといけないし、話がつながっているのでまあまあ脳内のメモリを消費する知的作業なんですよね。まあそれが楽しいんですけど。それに比べてエッセイは読み終わった部分は忘れてしまっても大丈夫っていう安心感がある。体感的に小説の3分の1くらいのエネル

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「ファミレスを享受せよ」にずっと居たい

「ファミレスを享受せよ」にずっと居たい

ここのところずっと、自分に合ったゲームがないなあと思っていました。最近はスプラ3をやることが多いのですが、まあまあ疲れるし1時間もやるとコンタクトがカピカピになってしまいます。歳のせいもあるんだろうなとか思いつつ、なんかもっと自然に入り込めるようなゲームってないのかなあと。

そんな時に偶然見つけたのが、「ファミレスを享受せよ」という1,500円のゲームです。

説明を読んでも、どんなゲームなのか

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「夏物語」(川上未映子 著)

まず不思議な装丁です。一見して女性の身体であることは分かるんだけど、どの部分なのか判然としない、ふくらみもない。最小限の線で描かれた、それ以外の要素を持たない存在としての女性。

この小説に出てくる女性はみなそれぞれに魅力的です。第一部で哀れな姿をさらしつづける巻子が、最後にとうとう言葉を発した緑子に語りかける場面。

これを読んで、なぜか私は巻子の「生きものとしての力」を感じずにはいられなかった

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ライフイベントの視点から今年を振り返る

ライフイベントの視点から今年を振り返る

今年もあと3週間となりました。まだ暖かい日があったりするせいもあって、もう2023年が終わってしまうのかと驚いてしまいますね。個人的には転職という大きなライフイベントがあり、余計にあっという間に1年が過ぎていったような気がしました。

精神医学の領域では、一定の期間に大きなライフイベントが立て続けにおこると、その後に心身の調子を崩しやすいことが知られています。この「ライフイベント」には親戚の不幸や

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追い風を感じられるひとでありたい

追い風を感じられるひとでありたい

先週まで体調を崩していまして、(在宅で)最低限の仕事をこなしつつ、読書やゲームなどをしながらだらだらと過ごしていました。幸いここ数日は調子も良く、いつものペースで運動をしたりできるようになってきました。

ちょっと風邪を引いているくらいでも、体調が悪いときっていろんなことを先送りにしたくなってしまいますよね。人に会うこと、美味しい店に食べにいくこと、面白そうな映画や展覧会を見にいくこと・・・。不調

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「正欲」(朝井リョウ 著)

「正欲」(朝井リョウ 著)

「自分が想像できる "多様性" だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」ーーー。以前から本屋で目にして読みたいと思っていた本です。今週末に映画が公開されるということで、その前に読んでおくことにしました。

まずこの小説はいろんな警句にあふれていて、読んでいて油断することができません。登場人物たちが抱えている泥のようなものはあまりにも暗く、読者が安易に共感することをはっきりと拒否し

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「やめるときも、すこやかなるときも」(窪美澄 著)

「やめるときも、すこやかなるときも」(窪美澄 著)

在宅ワークがメインになって通勤の頻度が減ったのはありがたいことなんですが、本を読む時間が確保できないのが悩みの種です。この本も、1ヶ月くらいかけてようやく読み終えました。

このレビューを書く段階になって、この小説がドラマ化されていたことを知りました。ていうか小説自体は2017年の作品なんですね。6年ものあいだ全くこの作品を知らずにいて、何かの拍子に出会えるというのも、文庫本の醍醐味かなあと思いま

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秋のにおいを感じるのは何年ぶりだろう

秋のにおいを感じるのは何年ぶりだろう

9月まではけっこう暑い日が続いていたのに、ここのところは昼間の気候がほんとうに過ごしやすくなってきましたね。日差しはやわらかく、風はさわやかで、この季節が一年中続いてくれたらいいのにと思ってしまいます。

私が一番きらいな季節は冬です。寒いと本当に何をする気もなくなってしまいます。冬に比べれば夏のほうがまだマシですが、それにしても最近の夏は暑すぎる。そして私は花粉症があるので、春もそんなに好きでは

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生活が満たされると創作意欲が低下する問題

前回の記事で書いた旅行から帰ってきて1週間が経過しました。ふだんの日常に戻っているのですが、なぜかこの1週間はびっくりするくらい何も書く気にならず。。。今になっても取り立てて書こうということがないので、なんで旅行を境に創作意欲がこんなに低下したかと考えてみたいと思います。笑

今回の旅行では、会社のSNSもメールも全く見ないように過ごしたこともあり、完全に非日常の世界に没頭することができました。瀬

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東京に住んでいることで何を失っているのか考えてみる

東京に住んでいることで何を失っているのか考えてみる

先週は遅めの夏休みをもらって、瀬戸内のほうへ旅行に行っていました。穏やかな海に浮かぶ島々は、ほんとうに訪れる人の心を癒やしますね。

今回の旅行に行く直前にスマホを新しくしたので、せっかくなので新しいスマホには会社のSNSアプリを入れず、メールも見られないようにして旅行に出掛けました。この作戦は大成功で、仕事のことを完全に忘れて非日常の世界に没頭することができました。

倉敷でタクシーに乗ったので

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私が仕事をやめたくなる時

私が仕事をやめたくなる時

いまの職場で働きはじめて半年くらいになりますが、はじめて辞めたくなっていました。まあ仕事をしていれば辞めたくなるなんて日常茶飯事なので、むしろ半年もの間そんな気持ちにならなかったということは、とても良い職場なんだと思います。

今まで私は何度か転職をしています。振り返ってみると、その動機は

これ以上とどまっていても自分が成長できないと思った。

大きな仕事をやり終えて環境を変えたくなった。

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もやもやしたら本屋に行きます

もやもやしたら本屋に行きます

いつも食料品を買うのにしか使わない近所の商業施設があります。
あ、無印良品はたまに日用品を買うのに使うかな。アパレルショップとかは年に数回しか行くことがないです。ていうかむしろ服も無印で買ってしまう。笑

そこには本屋さんも入ってるのですが、やはり普段のスーパーマーケットまでの経路からは外れているので、普段は足を運ぶことはありません。

でもたまに、ぼんやりしながらその商業施設を歩いていると、自然

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