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東原そら
2021年9月5日 17:37
これをください。 泉の胸元で映えそうなブルーサファイア。 誕生日に喜んでくれるだろうか。 改札を出ると、泉から着信があった。 僕は踵を返し、いまはつり革に釣られている。 目的がない旅の終点は海だった。 ─好きな人ができたの。 残響する泉の声。 紺碧の海に僕はサファイアを投げた。
2021年7月6日 11:20
このキスが終わると、おしまい。 別れる時は、キスをして別れよう。 それがつきあう時の約束だった。 どうして、そんな約束をしたのだろう。 貴方の唇は、もう私のものじゃないのに。 私の唇も、もう貴方のものじゃないのに。 彼に罪悪感を覚える。 これで本当に終わり。 さよなら、兄さん。
2021年6月30日 20:32
俺は一人の女では満足できない。 女は常に二股だ。 だが、ルールはある。 同じ名前の女と付き合うのだ。 寝言で別の女の名前など、修羅場をまねく。 だが、本気で好きな女ができた。 俺は二人と別れ、その女に告白した。「ごめんね!彼氏と名前が違う人とは付き合わないようにしてるんだ」
2021年3月28日 21:17
別れた女だ。 男と子供と歩いている。 笑う声が聞こえる。 彼女は所謂尽くす女だった。 色々と手を焼いてくれた。 でも俺は重い女と罵った。 仕事の失敗を八つ当たりした、くそったれだ。 幸せそうな顔だ。 柄にもなく、嬉しくなる。 ふいに視線が重なる。 その笑顔は、あの頃のままだった。
2021年3月12日 20:18
今年もチクチクしてる。 痛みが私の心を物語る。 桜の季節は、もういない彼を思い出す。 幸せになれ、と言った桜井さん。 ふわふわ舞う桜のシャワーを浴びていると、ふいに名前を呼ばれた。 桜と。 私は踵を返し「はい」と応えた。 男性がいた。 直感した。 この人は私の特別になる、と。
2021年3月11日 20:59
心が痛む季節が、また来た。 街が桃色に染まるたび、桜が脳裏に浮かぶ。 もう、いない桜。 桜は言った。 しあわせになって、と。 舞う花びらを一枚にぎり、桜、と呟く。「はい」 はす向かいの桜の下にいた女性が振り向く。 その声に心臓が掴まれた。 彼女の声に一声惚れをしてしまった。
2021年3月7日 21:01
今日、カノジョと別れる。 30年一緒だった。 記憶装置が壊れ、カノジョは入院している。 カノジョの装置は既に生産中止だ。 新たな装置と交換すると別のヒトになる。 忘れてもイキテ欲しい。 僕は装置を替える決断を下した。 目が開き、カノジョは言った。「ハジメマシテ」 2225年、僕は号泣した。
2021年1月21日 11:20
「私、死に別れ物って大嫌い」「僕は当人達の絆で感動するけど」「泣かせる前提だし、残される人が可哀想」「そういう物語だし」 半年後、彼女は僕に別れを告げた。 その半年後、病は彼女を世界から抹消した。 程無く字が滲んだ手紙が届く。「やっぱり死に別れ物は嫌い」 僕も嫌いだ。
2020年11月19日 20:58
「ごめん。オナラが出た」「付き合ってるのに謝らないでよ。そういうの我慢しないで」 俺の初めての彼女はそう言った。 付き合うって明け透けでいいと俺は学んだ。 けれど彼女は俺以上に明け透けだった。「わたし元カレと住んでるんだ」 それ二股だよね。 サヨナラに時間はいらなかった。あとがき過去の実体験の恥部を晒します……アイデアが浮かばない日で、不名誉ながら晒すこと
2020年11月17日 20:32
「ケンケンパッ」と彼女が並木道の枯れ葉の上ではしゃいでいる。 童心に返るその様を見て、心の鐘が激しかったプロポーズの日を思い起こし口元が緩む。 君は相変わらずだね。 僕らは潤わなかったね。 踏めばすぐ砕ける枯れ葉だった。 いま君の傍らは名前も知らないその人が潤わせているんだね。あとがき散歩中に枯れ葉を踏んでパッとインスピレーションが降りてきた作品です。決して、作者の