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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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#別れ

紺碧のサファイア (140文字小説)

紺碧のサファイア (140文字小説)

 これをください。

 泉の胸元で映えそうなブルーサファイア。

 誕生日に喜んでくれるだろうか。

 改札を出ると、泉から着信があった。

 僕は踵を返し、いまはつり革に釣られている。

 目的がない旅の終点は海だった。

 ─好きな人ができたの。

 残響する泉の声。

 紺碧の海に僕はサファイアを投げた。

さよならの約束 (140文字小説)

さよならの約束 (140文字小説)

 このキスが終わると、おしまい。

 別れる時は、キスをして別れよう。

 それがつきあう時の約束だった。

 どうして、そんな約束をしたのだろう。

 貴方の唇は、もう私のものじゃないのに。

 私の唇も、もう貴方のものじゃないのに。

 彼に罪悪感を覚える。

 これで本当に終わり。

 さよなら、兄さん。

交際の鉄則 (140文字小説)

交際の鉄則 (140文字小説)

 俺は一人の女では満足できない。

 女は常に二股だ。

 だが、ルールはある。

 同じ名前の女と付き合うのだ。

 寝言で別の女の名前など、修羅場をまねく。

 だが、本気で好きな女ができた。

 俺は二人と別れ、その女に告白した。

「ごめんね!彼氏と名前が違う人とは付き合わないようにしてるんだ」

その笑顔は、あの頃のまま (140文字小説)

その笑顔は、あの頃のまま (140文字小説)

 別れた女だ。

 男と子供と歩いている。

 笑う声が聞こえる。

 彼女は所謂尽くす女だった。

 色々と手を焼いてくれた。

 でも俺は重い女と罵った。

 仕事の失敗を八つ当たりした、くそったれだ。

 幸せそうな顔だ。

 柄にもなく、嬉しくなる。

 ふいに視線が重なる。

 その笑顔は、あの頃のままだった。

一声惚れと一目惚れ (下) (140文字小説)

一声惚れと一目惚れ (下) (140文字小説)

 今年もチクチクしてる。

 痛みが私の心を物語る。

 桜の季節は、もういない彼を思い出す。

 幸せになれ、と言った桜井さん。

 ふわふわ舞う桜のシャワーを浴びていると、ふいに名前を呼ばれた。

 桜と。

 私は踵を返し「はい」と応えた。

 男性がいた。

 直感した。

 この人は私の特別になる、と。

一声惚れと一目惚れ (上) (140文字小説)

一声惚れと一目惚れ (上) (140文字小説)

 心が痛む季節が、また来た。

 街が桃色に染まるたび、桜が脳裏に浮かぶ。

 もう、いない桜。

 桜は言った。

 しあわせになって、と。

 舞う花びらを一枚にぎり、桜、と呟く。

「はい」

 はす向かいの桜の下にいた女性が振り向く。

 その声に心臓が掴まれた。

 彼女の声に一声惚れをしてしまった。

キミにはイキテ欲しい (140文字小説)

キミにはイキテ欲しい (140文字小説)

 今日、カノジョと別れる。

 30年一緒だった。
 記憶装置が壊れ、カノジョは入院している。
 カノジョの装置は既に生産中止だ。
 新たな装置と交換すると別のヒトになる。
 忘れてもイキテ欲しい。
 僕は装置を替える決断を下した。

 目が開き、カノジョは言った。
「ハジメマシテ」
 2225年、僕は号泣した。

彼女の嫌いなもの (Twitter140文字小説)

彼女の嫌いなもの (Twitter140文字小説)

「私、死に別れ物って大嫌い」

「僕は当人達の絆で感動するけど」

「泣かせる前提だし、残される人が可哀想」

「そういう物語だし」

 半年後、彼女は僕に別れを告げた。

 その半年後、病は彼女を世界から抹消した。

 程無く字が滲んだ手紙が届く。

「やっぱり死に別れ物は嫌い」

 僕も嫌いだ。

明け透けな彼女 (Twitter140文字小説)

明け透けな彼女 (Twitter140文字小説)

「ごめん。オナラが出た」

「付き合ってるのに謝らないでよ。そういうの我慢しないで」

 俺の初めての彼女はそう言った。

 付き合うって明け透けでいいと俺は学んだ。
 
 けれど彼女は俺以上に明け透けだった。

「わたし元カレと住んでるんだ」

 それ二股だよね。

 サヨナラに時間はいらなかった。

あとがき

過去の実体験の恥部を晒します……

アイデアが浮かばない日で、不名誉ながら晒すこと

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枯れ葉の音 (Twitter140文字小説)

枯れ葉の音 (Twitter140文字小説)

「ケンケンパッ」と彼女が並木道の枯れ葉の上ではしゃいでいる。

 童心に返るその様を見て、心の鐘が激しかったプロポーズの日を思い起こし口元が緩む。

 君は相変わらずだね。

 僕らは潤わなかったね。

 踏めばすぐ砕ける枯れ葉だった。

 いま君の傍らは名前も知らないその人が潤わせているんだね。

あとがき

散歩中に枯れ葉を踏んでパッとインスピレーションが降りてきた作品です。

決して、作者の

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