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#詩

【詞】夜行

【詞】夜行

夜は今にはじまってゆく
曇る窓 雨をすべらせ
思うことすべての魔法が
ほどける 旅する人へ

夜は今しか見えない
もので溢れかえる
考えうる道のりに
凝らす目 夜行の流れ

夜は深く 通り沿いを
過ぎる雨 壁をすべり
向かいの 傘の上を
オノマトペのように落ちる

茂みに 糸がなびく
水の楕円を振り返り
考えうる姿を練る
冷える風 たぐる右手

川べりの香の中で
気持ちは駆け抜けていく

ひとりの

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詩  人生

詩 人生

人生が映画なら、と君は言うけど
私はやっぱり言葉を選ぶよ。
あの日の強くて優しい風を
花と一緒に揺れていた心のことを
昨日見上げた月の大きさを
それを君に教えたかったことを
朝になれば忘れるような
静かな静かな夜の音を
私だけが知っている君の横顔を
忘れてしまっても思い出せるように
どれだけ過去が増えていっても
何ひとつ取りこぼさないように
全部を言葉にしてしまいたい。
走馬灯にもならない
小さな

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詩|心

詩|心

簡単に変わってしまうものだったり

ずっと変わらないものだったり

不思議で素敵なもの

詩│鈍雨

雨が好きなんじゃない
森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
葉っぱの先へ
ごくごくごく
指の先まで
潤ってさ
あとは
もう
ぼ─

街の雨は疲れるね
ドレスコードはぺかぺかの服
たらい回しの光が眩しい
傘で乱反射してもうわけがわからないよ

やっぱり

森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
枯れ葉の音と
木の葉の音と
指の先まで
喜んでさ
あとは
もう
ぼ──

[詩]朝ぼらけ

[詩]朝ぼらけ

朝起きたら
目を開けるよりも先に「君が好き」って思うんだ

ぼんやりと広がるいつもの風景
何度も頭に教え込ませた
「君が嫌い」の言葉がじんわり広がる

二度寝しようとするけれど
絶望に固まって閉じない瞼

外から聞こえる子供の泣き声
大切にしていたぬいぐるみを奪われたのかな
公園へ連れて行ってもらえなかったのかな

"自分をもがれた痛み"
"悲痛な叫びに変わる"
走り書くノートの隅

ゴトン
マグ

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【詩】違う空

【詩】違う空

澄んだ空気が一段と
青空を高くする
小さな薄い雲だけが
そっと傍で浮いている

あなたの場所からも
見えますか

いつからか
見える空が異なって
いつからか
違う陽を浴びていた

それでもこんな晴れた日は
あなたと目が合いそうで
そっと見上げて探している

あなたの空も
晴れですか

あなたの空も
元気ですか

【詞】暁闇

【詞】暁闇

扉を閉めたら街は静謐
書く手から踊るよ
文字がとけるよ
何ごとも長く続いた方がいい
望郷。
星は空の水滴のよう

暁闇の通りを
今日も歩くけれど
まだ、あの日の答えを
分からないまま、立ち竦む
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくる
その手から込めるよ
夜の轍を

車の抜けるトンネルで
空気はゆれるけれど
まだ、この夜の空白を
どこか置いたまま眺めている
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくると

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詩133/   詩の繭

詩133/ 詩の繭

何も見えない
漆黒の夜道を

何も見えない
光の海の中を

前が見えない
土砂降りの中を

目を開けていられない
激しい嵐の中を

彼は
感覚だけを
道しるべにして
生きている

一番
敏感な粘膜を

闇に晒し

光に晒し

雨に晒し

風に晒し

体の奥深くで
激しい拒絶反応を起こしながら

絹の糸を
口から吐き出し

躰の周りに
純白の繭を張る

それは
自分を司り
自分の心を護るための

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【詩】美し

【詩】美し

きれいに手入れされた
白い手とネイルより

土にまみれた
岩のように黒く焼けた手

美しい

新しく煌びやかに磨かれた革靴
踵が擦れ形は崩れている
それでも靴墨で手入れされ
大切に使っている靴

ブランドの文字が大きく目立ち
来年は着ないかもしれないセーター
何十年もの間手を加えながら
ほつれは繕い毛玉はきれいに取り
愛されているセーター

高級な流行デザインは奇抜
今の空気にはピッタリ
胸に輝く

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詩 「ルルヴェ」

詩 「ルルヴェ」

°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

砂埃の舞う荒廃した街並みに
初老の男が訪れる。

( この街もずいぶんさびれたな。)

もうかれこれ60年が経つ
まだ少年だった頃の
かつての学舎は
廃校となっていた

古びた校舎の片隅にある
相合傘の落書きを
そっと指先でなぞってみる

深く眼を閉じて
瞼の裏側に浮かぶ
遠い少年だった頃が蘇る__






un, deux, tro

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