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私の夢読みの技術には向上らしきものは見られない。私は間違った場所で間違ったことをさせられているのではないか? 「心配しないで」と君はテーブルの向かい側から、私の目をのぞき込むようにして言う。 夢読みの合間に、君のこしらえてくれた濃い緑茶の薬草茶を飲む。10-63

2週間前

村上春樹の乗り上げた暗礁から「降りる」にはーー自己ではなく世界を愛すること、そして「老い」の問題

3か月前

私は官舎地区と呼ばれる区域に、小さな住居を与えられている。 住居には生活に最低限必要な、簡単な家具と什器が備られている。 台所では簡単な料理ができるようになっている。 窓には木製の鎧戸がついている。 昼間はそれを閉ざして、陽光を遮ることができるように。10-61

1か月前

「街とその不確かな壁」を読んで(2024.02.05)

2か月前

一日の仕事を終え、…君を「職工地区」の共同住宅まで送る。それが日々の習慣になる。 私と君は肩を並べて…ただ黙っているだけだ。 雨が降ると…黄色いレインコートを着て…緑色の帽子をかぶる。 …君は立ち止まり、…私の顔をしばしの間のぞき込む。 「また明日」と私は言う。10-64

私は昼前に目覚め、支給された食材で簡単な食事を作って食べる。 …、自分という体の檻から意識を解き放ち、想念の広い草原を好きなだけ走り回らせる…。 …、門衛がそろそろ角笛を吹き鳴らそうかという時刻に、私は意識を今一度身体に呼び戻し、家を出て徒歩で図書館に向かう。10-62

3週間前

長編に挑戦

「どうしてみんなは影を棄てないの?」と君は尋ねる。 「人々は影の存在に慣れていたから。現実に役に立つ立たないとは関わりなく」 「私達は物心がつく前に影を引き剥がされる。そして切り取られた影たちは壁の外に出される」 「影たちは外の世界で、自分だけで生きていくんだね?」9-58

2か月前

「君の影はどうなったのだろう?」 「さあ、それはわかりません。…死んでいるはずよ」 「…どこか遠いよそにやられて、やがては命を失っていきます」と君は言う。 「影が死ねば…、あとに静寂が訪れるの」 「壁が…護ってくれるんだね?」 「その為に…やって来たのでしょう」9-59

2か月前

君は白い大きな布きれで、…私の前の机の上に置く。 彼らの語る声は…、聞き取る事ができない。 「いかがですか?お仕事はうまく捗っていますか?」 「少しずつは、でもやり方がどこか間違っているのかもしれない」 「急ぐ必要はありません。時間ならここにはいくらでもあります」7-40

2か月前

わたしは一日中眠いのに

3か月前

『街とその不確かな壁』読了

5か月前

「職工地区」は旧橋の北東に広がるさびれた地域だ。 …で君は急に歩みを止め、振り返って私に言う。 「送ってくれてどうもありがとう。家までの帰り道はわかりますか?」 「たぶんわかると思う。…」 君は…、私に向かって短く肯く。 私は…、ゆっくり歩いてうちに帰る。9-60

2か月前

きみはぼくのユーモアをいつも喜んでくれた。 「ビタミンなんとかみたいに?」 「そう。ビタミンなんとかみたいに」 ぼくはきみに夢中になっていた…。 …、実際的で具体的なものごと…書こうと心を決めていた。 きみの手紙には、…内面的な思い…多く書き記されていた。6-34

2か月前

例のエッセイ・コンクールみたいなのがあって、表彰式の会場であなたに出会ったのです。 あなたはわたしの夢の話に興味を持って、とても熱心に聞いてくれました。 わたしはときどき同じ言葉をひんぱんに使ってしまうことがあります。 そうそう、わたしが見た夢の話ですね。8-50

2か月前

ぼくらは二週間に一度位長文の手紙をやりとりをした。 どんな事を自分が手紙にかいたのか、具体的な内容はよく思い出せない。 日々の生活や身のまわりで起こった小さな出来事について書き記した。 彼女が相手だと、何によらず自然に文章を書く事ができた。 生まれて初めての事だ。6-33

2か月前

「もしこの世界に完全なものが存在するとすれば、それはこの壁だ。…誰にもこの壁を壊すことはできない」、門衛はそう断言した。 「煉瓦と煉瓦の間が、髪の毛一本入る隙間もないくらいかみ合っているはずだ」 「このナイフで煉瓦を引っ掻いてみな、傷ひとつつきはしないはずだ」7-37

2か月前

きみの夢の中にぼくが登場することがあった。 きみは自分の見た夢をすべて正直に語っているのだろうか? ぼくは、この世界に心に秘密を抱かないものはいないと思う。 人がこの世界を生き延びていくためには必要なことなのだ。 そうじゃないのだろうか?6-36

2か月前

この実際の世界で……行き来は自由だ。 ぼくは…郊外住宅地に住み…きみは…都市の中心部に住んでいる。 その夏、ぼくは高校三年生、きみは二年生だ。 ぼくがきみの街を訪ねる時、…..それとも公共の植物園に行く。……二人だけのひっそりとした会話に耽ることができる。2-14

3か月前

「私の影はこれからどうなるんですか?」 「こちらでお客として大事に預かっておくよ。…。まあ、たまに仕事も手伝ってもらうが」 「どんな仕事ですか?」 「ちょっとした雑用さ。…。…季節によって少しずつ違う」 「もし私が影を返してもらいたいと思ったときは?」9-56

2か月前