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『街とその不確かな壁』読了

この本を読み始めたのはゴールデンウィークのこと。
noteの投稿記事、
『ゴールデンウィークの過ごし方』
にも書いた「小説を読む」で読み始めた本だ。

ゴールデンウィーク中に第2部の途中288ページまで、
それから半年かけて第3部655ページまでを読了。
極めてのんびりペースだが、
決して面白くなかったわけではない。
もったいないので結末をとっておいたと言った感じだ。

最後の第3部は集中して読みたかった。
そこで、月一のジャッキーのトリミング待ちで過ごす桜珈琲でだけ、
読むことにした。
月に一度、2時間。
この時間しかどっぷり集中できないので、
こういうスタイルになってしまった。

桜珈琲の落ち着いた店内で読書📖


村上春樹さんの小説には、
いつも死と隣り合わせのような不安がつきまとう。
死とまではいかないまでも、
ふっと消えいってしまいそうな不確かな存在感。
その代わりに確かな質感があり、
ベルベットのような少し冷たくてしっとりと湿気を含んだような手触りの小説だ。


この本を読みながら、
私はふと金沢の街を旅してみようと思った。
6月に行ったそれである。


子易さんと語り合う図書館地下の四角い部屋。
高い壁に囲われた街の夢読みの部屋。
イエローサブマリンの少年と会話する部屋。
そんな部屋がなぜか金沢の町にあるような気がして。
(小説の中では福島の図書館とあるのだけれど)

終盤、
イエローサブマリンの少年は言う。
「そう心に望みさえすればいいのです
あなたの心は空を飛ぶ鳥と同じです。
高い壁もあなたの心の羽ばたきを妨げることはできません。
あなたの分身が、そのあなたの勇気ある落下を、外の世界でしっかり受け止めてくれることを、心の底から信じればいいのです」
(本文から一部抜粋)


村上春樹さんは現在71歳。
31歳の時に書いた中編小説を
40年経って書き直したのが本作だそうだ。
2020年から2022年にかけて、
コロナ禍だからこそ、
ひっそりと書き上げることができた作品なのではないだろうか。
そしてあの時、
誰もが目に見えない高い壁に囲われているように感じたことはないだろうか。


ほとんど読んだ彼の作品の中で、
一番好きな小説になったかもしれない。

今度はもう一度、
ある程度のスピード感を持って、
一気に読んでみたい。

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