向後善之

エンジニアとして会社員生活を送った後、留学。2000年から心理カウンセラー。現在東京恵…

向後善之

エンジニアとして会社員生活を送った後、留学。2000年から心理カウンセラー。現在東京恵比寿のハートコンシェルジュ( https://heartc.com/ )でカウンセリングを行う。共感・傾聴は言うは易し行うは難し。嘘っぽい(偽りの)共感・傾聴は、したくないと思っています。

マガジン

  • 読書日記 小説 ルポ エッセイ

    僕が読んだ、小説やルポやエッセイについて、紹介していきます。

  • カウンセリングについてのあれこれ

    カウンセリングとは、どんなものか、難しい言葉を極力使わず、お伝えしていきたいと思います。

  • 読書日記 歴史、社会、哲学、科学

    僕にとっての新しい知識や考え方を得ることができた本を紹介します。歴史・社会・経済・哲学・心理学・科学など、ジャンルはなんでもあり。

  • モニョモニョ英語

    ものにするには時間がかかり忘れるのはあっという間。英語ってそういうもんだと身にしみて感じています。2001年に4年半過ごしたアメリカから帰国して、すっかり英語もさびついてしまいました。これじゃぁいかんと勉強し直そうとするのですが、目的がなければ、どうも気合が入らない。 しかし、近年のAIの進歩。こりゃぁ、利用してみるかと思ってやってみたら、とてもいい感じ。 じゃあ・・・ってことで、これまでいい加減に解釈していた英語のロックの詩の意味を調べてみることにしました。

  • 父のこと

    私の父は、高品格という俳優でした。最初から最後まで、映画・テレビで脇役を演じました。没後30年になりましたので、忘れないうちに、ちょっととぼけたユーモアのあった父とのエピソードを紹介します。トップ画像の右が父です。

最近の記事

「でっちあげ」 福田ますみ著 新潮文庫」

怖い本です。 福岡の小学校教諭が、生徒に対する暴力で保護者から糾弾され、学校を辞めることになり、それだけではなく民事裁判で訴えられ、マスコミからバッシングされることになってしまいます。 多くの人たちが被害者の訴えを頭から信じ、学校でも週刊誌でも新聞でもテレビのワイドショーでも、集団リンチのように加害者を徹底的に攻撃するのです。小学校教諭は実名報道され、自宅前にはマスコミが押し寄せるという状態になります。 しかし、その小学校教諭は、非難されるような暴力はふるっていませんし

    • 「1R1分34秒」 町屋良平著 新潮社

      読み終わるのが悔しいと思った小説でした。 主人公の「ぼく」は、C級ボクサーと呼ばれる4ラウンドまでしか戦えない駆け出しのボクサーです。初戦はKO勝ちしたもののその後勝てない。2敗1分。   負けが込むにつれて周りの人がよそよそしくなっていきます。   「ぼく」は、優し過ぎるのです。対戦相手の試合動画を徹底的に研究しているうちにまるで親友になったような気持ちになってしまいます。   そして、考えすぎる。考えているうちに勝てるイメージが浮かばなくなります。この先どうなるのかわか

      • 「桶川ストーカー殺人事件 遺言」 清水潔著 新潮文庫

        1999年に起きた桶川ストーカー事件の犯人を執念で割り出し追い詰めた FOCUSの記者によるノンフィクション。犯人の小松和人のような強いストーカー気質を持った男に、たまたま出会ってしまった猪野詩織さんは、追い詰められ、結局刺殺されることになります。    この殺人は、避けられたはずです。警察がしっかりと動いていれば・・・。    この事件が起きた時、ストーカー規制法はありませんでした。・・・と言うより、この事件がきっかけでストーカー規制法が制定されることになったのです。   

        • 「相手の窓から外を見なさい」

          カウンセリング技法・理論だけでたちどころに回復・・・なんてことはありません。 一つの技法でクライアントが回復するあるいは成長するということはないとは言いませんが、その範囲は限定されています。最近、例えば、「これからは、認知行動療法だ」とおっしゃる先生方がおられますが、僕は賛成できません。 認知行動療法は有効ですが、当然のことながら、限界もあります。それは、それ以外のすべての技法・理論に言えることです。 クライアントに合わないやり方を選択すると、クライアントを混乱させてしま

        「でっちあげ」 福田ますみ著 新潮文庫」

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        • 読書日記 小説 ルポ エッセイ
          17本
        • カウンセリングについてのあれこれ
          6本
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          17本
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          14本
        • 父のこと
          19本

        記事

          「特攻の真実」 大島隆之著 幻冬舎文庫

          1枚の写真が載っています。アメリカ軍によって撮影されたもので、空母フランクリンに一直線に突っ込んでいく一機の零戦が写されています。零戦は高射機銃を受けて火だるまになった櫻森文雄飛長(当時18歳)が操縦する特攻機です。火の玉になって、おそらく前も見えなかったと思われる状態で、そのままの角度でフランクリンの飛行甲板の後部にぶつかっていきます。その写真を見て、僕は言葉を失いました。 敗戦直後、多くの学者文化人と呼ばれる人たちが、特攻隊員に対し「特攻隊員とは軍国主義の片棒を担いだ浅

          「特攻の真実」 大島隆之著 幻冬舎文庫

          「The Person You Mean to Be」 Dolly Chugh 著

          人は、限定倫理的に物事を判断して、限定合理的に行動を決定します。そして「限定」の範囲は非常に狭く、99.999996%の情報が無意識に追いやられているのです。つまり、人は、0.000004%の情報だけを経験的に選択しているのにすぎません。たぶん、これが自我の大きさなのでしょうね。 そんな狭い範囲での判断で、自分が完璧に正しいと考えるのはおこがましいのです。われわれにできることは「(完全に)いい人」になるのではなく、「いい人に向かう人(good-ish people)」になる

          「The Person You Mean to Be」 Dolly Chugh 著

          「ソーシャル物理学」 アレックス・ペントランド著 草思社文庫

          アイデアの流れは速いが、似たアイデアに繰り返し晒されているエコーチェンバー状態にある人は、孤立状態にある人と同じくらい、現実から切り離されていきます。 アイデアの流れが速いということは、新しいアイデアが出ると素早くそれを参照すること。情報は素早く入ってくるのですが、偏りができてしまいます。心理療法にしても、一部の療法が極端に注目されることがよくあります。政治や外交の情報にしてもどうも偏りがある。すぐに「これからは、○○理論だよ」という考え方が横行します。異論反論が起きにくく

          「ソーシャル物理学」 アレックス・ペントランド著 草思社文庫

          「日航123便墜落の新事実」 青山透子 著 河出書房新社

          1985年御巣鷹山に墜落した日航123便の事故原因に迫る調査結果です。膨大な資料をまとめ、目撃証言を集めこの本にまとめあげた著者は、元日航のCAで、123便のクルーとは親しい同僚だったの青山透子さん。 彼女の執念を感じさせます。 この事故には、様々な謎があります。まず、墜落現場がなかなか確定できなかったことが挙げられます。 当時僕は、会社員で、独身寮のロビーにあるテレビを見ていて、まだ見つからないのか・・・となんともいえない気持ちでいたのを覚えています。確か、墜落地点と

          「日航123便墜落の新事実」 青山透子 著 河出書房新社

          Oasisの「Whatever」の英語

          比較的わかりやすい英語です。スラングの意味がわかると、なるほど・・・となります。 Before we get on the bus and cause no fuss 「バスに乗る前に騒ぎを起こさないようにしよう」 ここでの「cause no fuss」は「騒ぎを起こさない」という意味です。 「fuss」という単語は、小さな問題や詳細について過剰に心配したり、不快感を表したりすることを指します。一般的には、必要以上に騒ぐことや、大げさに反応することを意味します。 G

          Oasisの「Whatever」の英語

          「いねむり先生」 伊集院静著 集英社文庫

          夏目雅子と死別して間もない伊集院静と、いねむり先生阿佐田哲也の旅打ちの物語。 先生はナルコレプシーなのでいつでもどこでも、突然眠ってしまう。大きなお腹の上に両手を乗せて眠っているいねむり先生の姿はなんとも愛らしい。 愛らしくユーモラスな先生は、実は激しい幻覚と妄想に悩まされていました。自分の周りに妖怪や幽霊がウロウロしているようなものでしょう。谷中の墓地で野宿をしたことがあるそうで、その時、人魂を見たのだそうです。「人魂が出てきてね。あれはさわると生暖かくてね」、「大空襲

          「いねむり先生」 伊集院静著 集英社文庫

          父のこと13 日活現代劇について

          先日、1966年の日活現代劇の第1回の公演について書いたところ、多くの方が読んでくださり、たくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。 今回は、当時のパンフレットの中から、日活の役員さんや俳優さんや原作者さんからの応援メッセージをいくつかをご紹介しようと思います。 パンフレットを読んでみると、当時の皆さんの思いが伝わってきます。 当時、俳優やスタッフの皆さんが、演技研究所を作り、毎日の撮影の合間に芝居の稽古をしていたようです。その様子が、江守清樹郎専務(当時

          父のこと13 日活現代劇について

          Pink Floydの「Time」の英語

          高校時代、この曲を聴いた時、すごい!って思いました。レコードが擦り切れるまで聴きました。 当時は、ただ、かっこいいと思っていましたが、よくよく歌詞を聴いてみると、深い。1973年に発売されたアルバム「狂気」に収録された曲。デイヴ・ギルモア27歳、ロジャー・ウォーターズ29歳の時の曲。その若さで、この世界観を持っているなんて・・・。 Ticking away the moments that make up a dull day 「退屈な日を構成する瞬間を刻みながら」 F

          Pink Floydの「Time」の英語

          Karla Bonoffの「The water is wide」の英語

          訳すのは、難しくないですが、それが何を暗示しているのかが、なかなか分かりにくい歌詞です。 The water is wide, I can't cross over And neither do I have wings to fly 以下の2行の歌詞を和訳すると次のようになります。 「海は広く、私は渡れない。そして、私には飛ぶための翼もない」 「water」は、海と考えました。 「neither」は前の文「I can't cross over」に関連して使われています

          Karla Bonoffの「The water is wide」の英語

          父のこと12 演劇と父

          高品格と言えば、「ボクサー上がりのコワモテの悪役」というイメージの映画俳優でした。 でも・・・、母は常々言っていました。 「お父さんは、本当は、演劇の人なのよ。もっと、映画とかテレビではなく、演劇をやればいいのに」 幼少期、僕にはその意味がわかりませんでした。演劇など小学校の学芸会以外見たことがありませんでしたので・・・。 僕は、映画やテレビドラマで悪役を演じる父しか知らなかったのですが、役者人生のスタートは劇団員でした。三好十郎主催の劇団(戯曲座という名前だったと思い

          父のこと12 演劇と父

          「ポイズンドーター・ホーリーマザー」 湊かなえ著 光文社文庫

          正しさと弱さは、親が子供を苦しめるもっとも効果的なツールです。正しさの名の下に子を支配・コントロールし、その支配・コントロールの理不尽さに気づき反逆して来た子どもには、「あなたのためを思ってやって来たのに、そんなことを言われて悲しい」と泣き崩れればいいのです。子供は、「ごめんなさい」と言うしかありません。 こうした親は、最近では、好きな言葉ではないのですが、「毒親」と呼ばれるようになりました。毒親は、やがて子供から激しく糾弾されるようになるでしょう。「私が苦しいのはあなたの

          「ポイズンドーター・ホーリーマザー」 湊かなえ著 光文社文庫

          「南京事件を調査せよ」 清水潔著 文春文庫

          目立たず地道だけど、とても大切な仕事をする人がいるものです。例えば、南京攻略戦に参加した兵士たちの日記を集めた小野賢二さんです。小野さんは、歴史の専門家でもない「化学労働者」です。小野さんは、会津若松で編成された「歩兵第65連隊」、「山砲兵第19連隊」の兵士たちの日記を集めました。その数31冊、うち26冊分はコピーで5冊は現物であり、立派な一次資料です。 これらの日記には、複数の人たちが、1937年12月16日、5000人前後の捕虜が殺害されたことを記述しています。銃殺する

          「南京事件を調査せよ」 清水潔著 文春文庫